85話:サツキの中総体、地区予選開始
昨日までで期末テストも終わった。
ユッチのへこみっぷりが面白かったなあ。
……よっぽどやばかったんかな? 大丈夫かな……ユッチ。
ケンも話を聞く限りはヤバかったはずなんだが、全く気にしたそぶりがない。
その辺りはさすがケンと言う感じだったな。
今日は7月12日土曜日。快晴だ。
今日明日に渡って、ソフトテニス大会中総体地区予選が行われる。
初日が団体戦、2日目が個人戦だ。
中学ソフトテニス団体戦はダブルス1、ダブルス2、ダブルス3とあり、2回先に勝った方の勝ちだ。
もうすぐ1回戦が始まる。
既にアップも終了し、もうあと少しでダブルス1、サツキとクロちゃんのペアの出番だ。
……クロちゃん、今年に入って初めて会ったな。懐かしい。
「サツキ、頑張れよ!」
「……ヤス兄、はずかしくない?」
はずかしいさ! 何で男子と女子の会場がそんなに離れてるんだ!
この辺にいる男、俺しかいないんだけど……。
しかも、ここにいるのは中学の部活の人ばっかりで、みんなTシャツにハーフパンツの格好だ。
私服で歩いてるの、俺だけなんだが……せめて俺もスポーツする時の格好でいればよかったな。
めっちゃ浮いてるっすよ。……お願い、せめてもう1人くらい男をこの場に連れて来てくれ!
「あ、私そろそろ試合だから行くね。……クロちゃん! いこ!」
「うん、ヤス先輩、応援よろしくお願いします」
「はいよ、クロちゃんも頑張ってな!」
「はい!」
クロちゃん、いい子だ……。久々に普通な人と話をした気がする。
さて、サービスかレシーブかのトスをおこなって、ついでに軽くラリーをしてウォーミングアップして、試合開始だ!
「7ゲームマッチ、ダブルス1。サツキ&クロダ vs マナベ&カスガ」
ん? 何でサツキだけ名前?
ああ、7ゲームマッチって言ってるけど、7ゲームとった方が勝ちじゃなくって、4ゲームで勝ちだぞ。
最高7ゲームまでやりますよって意味だからな。
「よろしくお願いします!」
うん、頑張れ。サツキ!
……まずはサツキのサービスからだな。
「せいっ!」
そこそこのスピードで相手のコートにつっこんでいく。
よしっ、いいコースだ。ナイスサーブ。
「ふっ!」
相手も返したか。中々やる。
「やっ!」
おお! 前衛にいたクロちゃん、ナイススマッシュだ! 返球を読んでいたとは、さすがクロちゃん!
……決まったか。まずは1ポイント先取だな。
パチパチパチ。
決めたクロちゃんに拍手を送る。
テニスの応援は静かに、だぞ。
大事なのはコンセントとレンコン? だっけ? まあいいや、集中だ、集中。
選手の集中をかき乱しちゃ駄目だ。
「ワン・ゼロ」
……ソフトテニスと硬球のテニスとじゃ数え方が違うんだよな、混乱する。
さあ、サツキ。サービスエースを決めるんだ!
「せいっ!」
さっきと似たようなコースに決まる。
よしっ、今度こそ。
「むんっ!」
くそっ、また返されたかあ。
サツキのサービスはそんなに速くないってのは知ってるけど、コースはきっちり決めるのに……相手もやるなあ。
「やっ!」
おっ? またクロちゃん、スマッシュ決めたな。クロちゃん、すげえ。
「ツー・ゼロ」
さて、サービス交代か。ソフトテニスでは、2回ごとにサービスが変わるんだってさ。
クロちゃんのサービス。
「やっ!」
おー、豪速球。あれはとれんだろ。
「フォールト」
ああ、惜しい。
ちょっと、ラインをオーバーしてたなあ。
さあ、セカンドサービスだ。
「やっ!」
さっきより少し遅めの球が打たれた。
「ふっ!」
ああ、やっぱり返されるか。
……くっ、サツキの方にはいかないか。
「やっ!」
クロちゃんが返した。うん、いい感じだ。
「ふっ!」
相手も返す、……これは長いラリーになるか?
「てやっ!」
……えと、クロちゃんはなんで既に前衛にいるんでしょう? ……ロブ(ふわっとした返球で、相手の奥のコートに落とすヤツの事だな)打たれたらどうするつもりだったんだろ?
そしてスマッシュを決めるクロちゃん。
さっきからクロちゃんばっかり決めてるが……クロちゃん、最近見て無かったけど、めちゃくちゃ上手くなってないっすか?
「スリー・ゼロ」
よし、後1ポイントでこのゲームはキープできるぞ。
「てやっ!」
クロちゃんのサーブ、相変わらず豪速球だ。
「くっ!」
相手も何とか当てたけど、返球する事は出来ない……。
おしっ! まずは1ゲームキープだ! この調子で頑張れ! サツキ、クロちゃん!
うん、圧巻だったな。
その後、相手のサービスのときはブレイクして、自分達のサービスはきっちりキープ。
結局、4−0でゼロゲームで勝ってしまった。
その内のほとんどをクロちゃんが決めてたからなあ。
すげえ、クロちゃん。
「ありがとうございました!」
相手と握手を交わしてベンチに戻ってくる。
「ナイスゲーム、サツキ、クロちゃん」
「ありがと、ヤス兄。でも、まだダブルス2とダブルス3があるから、ちゃんと応援してよね」
「わかってるよ」
母校が嫌いな訳じゃないからな。是非勝って欲しいさ。
「おしっ! ナイスゲーム!」
ダブルス2のメンバーも大勝した。こっちは4−1だ。
相手側のサービスの時に、1ゲーム落としたな。まあ、サービス側が有利なものだからな。しゃあない。
ダブルス2が勝った時点でサツキ達の中学の勝ちだ。
「まずは一回戦突破だな、サツキ」
「そうだね。キリもマイマイも頑張ってたね」
「そうだな。よっぽど練習したんだな。あのキリとマイマイがあんなに上手くなってるとは……」
キリとマイマイのプレイを去年見た事があったけど、お世辞にも上手いもんじゃなかったからな。
ちなみにずっと前に話してたサキちゃんという子はダブルス3での登場だ。
1回戦、2回戦は勝負が決まってしまっても、ダブルス3まで対戦する。
……そうしないと、試合が出来ないまま引退、なんて悲惨な子が出て来ちゃうもんな。
サキちゃんと組んでるのは、えと、ミキミキだな。
「サキちゃん、ミキミキ、頑張ってね!」
サツキのエールがとぶ。
「サキちゃん、ミキミキ、ファイトだ!」
俺も声をかける。
「ヤス先輩。私たち見て興奮して鼻血出さないでくださいよ」
サキちゃん、どんな返事だそれは!
「俺はエロイけどこんな所で興奮するほどはエロく無い!」
馬鹿にすんない!
「……いえ、応援でテンション上がって鼻血出すなって意味で、別にヤス先輩がエロイかどうかは言ってませんが……」
サキちゃん、分かりにくい!
……恥ずかしい。他の人がめっちゃ白い目で見てますよ。
「ヤス兄、ドンマイ」
……ありがと、サツキ。味方はサツキだけだよ。
おし!ダブルス3のサキちゃん&ミキミキコンビも順調に勝ったな。
しかし……4−0のゼロゲームで勝ってしまうとは……。
かなりの成長っぷりを見せてるな、サキちゃん、ミキミキ。
「この調子で頑張れよ。サツキ」
「うん、今年こそみんなで全国大会出たいもんね」
えーと、去年は先輩が個人戦で県大会出場が最高だったかな。
なかなかこころざしが高いじゃないか。
うん、頑張れサツキ!
こんにちは、ルーバランです。
毎回心配になるスポーツのシーン。
間違ってないかな、ちゃんと伝わるのかなと。
ソフトテニス中、普通全員が全員叫びながらプレイはしませんが、分かり易さの為に全員に叫ばせてます。(余計分かりにくくなっていましたらすみません)
サービス:テニスの最初の打ち始め
キープ:サービス権を持ってる時にゲームをとる事
ブレイク:相手側にサービス権がある時にゲームをとる事
ゼロゲーム:どちらかが1ゲームもとらせないままゲームが終わる事、硬式テニスでは「ラブゲーム」と言います。
一応下調べはしましたが、間違ってたらご指摘してくださると助かります。
ちなみにヤス君の「コンセントとレンコン」は本当は「コンセントレーション」です。
それではまた。これからもよろしくお願いします。