76話:学校周りの距離の計測
さて、部活の時間になった訳だが、一度既に顔に落書きをして練習に来た事があったので、みんなそれほど驚いていなかった。
またか、くらいの感想のようだった。
ユッチはすっごい笑いをこらえてる顔をしてた。
ほんとはいじりたくてたまらないのに、笑いがこみ上げてきて話しかけられない、とジェスチャーで教えてくれた。
……お前のそのジェスチャーも中々面白いのだが……俺が言っても説得力ねえなあ。
今日の集合が終わり、短距離と長距離にわかれる。
「ヤス、体を張っているな。中々笑えるぞ」
「ポンポコさん……、勘弁してにゃあ」
お、ポンポコさん、俺が買ったブレスレットをしてくれている。中々嬉しいものがあるな。
「ふむ、そんな声を出されると、どんどんいじめたくなるぞ」
ポンポコさん!あなたSですか!?
「まあ冗談は置いといて、まずは学校周りの距離を測定しようか。ヤスは距離の測定方法は知っているか?」
「いや、知らないにゃあ」
「……仕方ないな、最初は私も一緒に測ろう。距離も分からずにただ走るだけではな……」
「わかったにゃ、ありがとうにゃ」
一緒に計ってくれるならありがたい。
しかし、どうやって測るんだろうな?
「ポンポコさん?どうやって測るのにゃ? まさか小学校の時見たいに、歩幅を測定して、歩数×歩幅で距離を測るとかするのかにゃ?」
「それでは、ちゃんとした距離が測れんではないか。そんな方法一体どこで使うんだ?」
えと、どこだろう?
確かに、正確な距離が分かんなきゃ地図作成するときも使えないし、あの方法って一体なんで勉強したんだろ?
「まあいい、さっさと学校周りを測ろう。2年生の長距離組は今日は無視してしまえ、一兄が言っていたが、あんな練習はずっと続けててもそんなに効果はないぞ」
「了解にゃあ、一応先輩に了解を得てくるにゃあ」
確かに、あの練習には辟易してたからな。
うー、今日に限って言えば、真面目な話をしてるはずなんだが、『にゃあ』のせいと、このネコミミ&猫のシッポのせいでふざけているようにしか見えん。
「……えと、せ、先輩……」
先輩と話すのは、まだ慣れんなあ。
「ん?なんだ?」
「……えと、今日ずっとこの格好なので……」
「ふんふん」
「……邪魔になると思うので……別に練習……」
「何でその格好でいないといけないんだ?ネコミミと猫のシッポを外して顔洗ってくればいいだろ?」
う……実に正論を言う人だ。
先輩たちとと練習がしたくないってはっきり言いたいんだが……。
「ウララ先生の命令で……」
「ウララ先生の命令か……じゃあ仕方ないな……わかった。別に練習してろよ」
ウララ先生ごめんなさい、あなたの名前を借りました。
それにしてもこんなに簡単に納得するなんて、ウララ先生の名前の力は偉大ですね。
「ポンポコさん、OKもらってきたにゃあ。」
「うむ、では行くぞ」
「でも、どうやって測るのにゃ?」
「ロードカウンターと言うものがある。これだ」
ポンポコさんが出してくれたのは、1本の長い棒だ。先端に1個だけ車輪がついていて、それの横にメーターがついている。
「これを車輪を地面につけ、転がすだけで簡単に距離測定が可能だ。これでまずは学校周りの距離を測るぞ」
コロコロと転がしながら、距離を測る。
こんな簡単に測れるのに、何で今まで測らなかったんだろうなあ?
「これって学校にあったものかにゃ?」
「ん?ああ、そうだ。多分大体の高校にあると思うぞ。なくても6000円程度で買えるから、なかったら部費で買おうと思っていたんだ」
「へー、そうなんだにゃあ」
ぶっちゃけ『にゃあ』をつけるのはめんどくさいのだが、そろそろ終わらせてくれないかなあ。
……無理だよなあ。
2人とも無言で距離を測る。途中、先輩たちの集団が隣を走っていったが、無視して測り続けた。
先輩たちの集団の中に既に1年生達の姿はなく、ノンキとマルちゃんは既に遅れてて、ヤマピョンはそれよりも先に走っていた。
「ふぅ、長距離の1年生は本当にやる気がないな……特にノンキとマルは最悪だ……」
ほんとその通りです。
「ヤスもこんな環境では今後やる気になったとしても、モチベーションを保つのが大変だと思う。その時にヤスが取る方向は2つだな。1つは、自分だけ全く別に練習する方法、もう1つはあのやる気のない1、2年生を何とかやる気にさせて、ともに練習する方法。」
うーん、後者はめんどくさすぎるな。
「最低限、ヤマピョンだけはやる気にさせる事は可能だと思う」
「ヤマピョンは結構やる気なんじゃないかにゃあ?いつもちゃんと走ってるし」
「いや、あいつはただ単に自分の好きなように走っているだけだ。もし、ヤツのギリギリの能力できつい練習を思い切りさせようとすると、今の気持ちの持ちようではやめてしまうだろうな」
よくみてるな、ポンポコさんは。
自分が感心した目で見てると、ポンポコさんはたいしたことでもないと首を振った。
「ただ単に私とヤマピョンと私は同じクラスだからな。ほんの少しは話もしたから分かるだけだ。」
「あのヤマピョンと話が出来たの!?すごいねポンポコさん!!」
「ん?語尾にちゃんと『にゃあ』をつけてくれ。約束は守るべきだぞ」
「……ご、ごめんにゃあ」
あまりにびっくりしてつい口調が元に戻ってしまってたが……もうそろそろほんとに『にゃあ』は嫌です!1週間もやりたくないっす!
それにしてもヤマピョンときちんと会話するなんてすごいな。俺には無理だ。
「あいつに関しては、うなずく事と首を振る事は一応するからな。イエスノーで答えられる質問をしただけだ。……っと測り終わったな。ん?1キロメートルくらいあるって言っていたが、820メートルしかないぞ。サバを読み過ぎだなこれは」
えーと、つまり……今まで9周走っていて、9キロメートルだと思っていた距離は、820×9で7380メートル。
うわ、1.5キロ以上短いじゃん!
「最近は練習の質が大事だと言われているが、長距離の練習は、どんなに質が大事と言っても、ある程度の距離を走らないときついと思うぞ。10000メートルに出場するのに、練習で8キロメートルまでした経験していなかったら、絶対残り2キロメートルはばてると思うぞ」
確かに、本番で120%の力を出せ!とか訳の分からん小説やドラマがあるけど、基本的には練習でやった事しか出せないもんだよな。
「わかったにゃ。ありがとうにゃ……ところでどんな練習をすればいいのにゃ?」
「……私は知らないな。ヤスこそ、今まで練習していたんだから知らないのか?」
「知らないにゃ。しょうがないにゃ、指導者もいないし、先輩もやる気もないし、場所もないのにゃ」
「三重苦みたいな言い方をするな、ヘレンケラーでもあるまいし」
ふむ、よく知ってるなあ。
……どうでもいいが、「にゃあ」って付けてしゃべり方を変えると別人みたいだな……。今後はゲームする時、挑発されても罰ゲームなんてもう乗らねーぞ。
「それじゃ、私は短距離の練習に戻るが、こんな環境でもくじけず頑張れよ」
「わかったにゃ、ありがとうにゃ」
「『にゃあ』をいい損ねたら、1日ずつ増やしてもらうからな」
ぽんぽこさん、ひどい!
これ以上俺に生き恥をさらさせないで!