75話:誕生日会が終わり、月曜日
今日は6月23日月曜日……この日は来て欲しくなかったな。
今日からポンポコさんとの罰ゲームで、1週間顔の落書き&ネコミミ&猫のシッポ&語尾に『にゃあ』をつけると言う屈辱的な事をしなければならない。
誕生日会でUNOが終わった後、サツキはポンポコさんの部屋に、俺は一二三四五兄弟の二さんと三さんの部屋に泊まったのだが、お互いの妹自慢ですごく盛り上がった。
いや、昨日はあんなにポンポコさんの事でツンツンしてたなんて考えられないくらい、寝るのも忘れてずっと話し込んでたね。
妹自慢エピソードを話してたら気付いたら昼の16時、朝の6時頃から話してたから、10時間は話してた事になる。
うん、やっぱりこのポンポコさんのシスコン兄弟は最高だ!
16時半頃、うちの両親が食材を持って夕方頃に来て(それまでずっと寝てたらしい)、夕食は俺の家族でポンポコ家にごちそうした。
お互いの両親も意気投合したみたいで、延々と盛り上がってた。
サツキとポンポコさんもうちに来た時以上に仲が良くなったみたい。
サツキは既に
「ポンポコ先輩のいる大山高校へ絶対に行きます!」
なんて言ってたし、よっぽど意気投合したみたいだ。
後で聞いたらサツキとポンポコさんも全く寝ないで、家族、特に兄弟達についてずっと話してたという。
やっぱやる事は一緒だよな!
で、サツキが途中でポンポコさんに二つ名の軍師の由来を聞いて、
「ヤス、この誕生日会でまだ三国志について語りあっていない。今から語り明かそう」
と言い始めた。
サツキ!こうなるとポンポコさんノンストップなんですよ!
二さん、三さんに聞いたのだが、一二三四五兄弟も実はこの状態のポンポコさんは苦手らしい。今はもう避難してる。
一さん、苦手なら三国志のゲームなんて買わないでくださいよ!
「ヤス、正史はもう呼んだか?」
「あ、うん、一応」
「さすがだ、ヤス。私の親友なだけはある」
いつの間にか親友にランクアップされました。
……親友と言ってくれるのはありがたいのだが、三国志の話を続けるのは……俺もそこそこの知識は蓄えたので、結構受け答えが出来て楽しくなり始めてたのだが……。
途中、
「三国志を知らない人に、魅力を話したりはしないの?」
とつっこんだら、
「趣味の押しつけというものはやたらと鬱陶しくないか?確かに魅力を知らない人に好きになってもらいたいという気持ちはあるが、一度友人にそれをしたら、『今度やったら縁を切る!』とまで言われるほど鬱陶しかったらしくてな。それ以来、むこうから三国志について話しかけてこない限りはしないようにしてるのだ。……それについて話しかけてくれたのはヤスが初めてだったがな。ところで……」
と言う事らしい。
その友人も結構ひどいことを言うな……。
好きな事について語るのってすごく楽しいのに……。
まあ俺も結局、めんどいと思う事もなくなり、逆にすごく楽しくなり、結局終電まで延々と語り合い続けた。
ポンポコさんが一方的に語り続けたのではなくお互いに語り合ったと言うのが進歩だ。
ポンポコさんも
「今まで兄弟達と話してきたが、今日が一番楽しかったぞ。ありがとうな」
と言ってくれたし、すごく気分がいい誕生日会だったな。
と言う訳で月曜日になった訳だが……、土曜日は完全な徹夜で、日曜日も普段ほど寝てないせいで、かなり眠い。
あの気分の良さとはすごく対照的な状態だ。
その上現在の格好は猫っ子か……。ポンポコさんの兄弟は何でこんなん持ってたんだろう?
駅のホームにいてもすごい注目っぷりだな。穴があったら入りたい気分だ。
「おっす、ヤス!何か久しぶりだな!」
「ケン、おはようにゃあ。確かに、普段は土日もあってるからにゃあ。3日振りでも久しぶりな気がするにゃあ」
徹夜のせいもあり、ずっと会ってなかった気分だ。
「ぶっ……!やめて!ぶふぅ……!その格好でその口調は笑えすぎる!サツキちゃんから聞いて、心構えはしてきたんだけど……無理!もう駄目!くくっく……」
この野郎……!俺がどれだけ恥ずかしい思いをしていると思ってるんだ。
「うるさいにゃあ!そう思うんにゃら、話しかけるにゃあ!」
「や、やめて……!は、はなれてくれ……!お、俺の腹が壊れる……!!」
携帯買ったときも似たような反応したよなあ。
うん、何かむかつく。
今日はもう話しかけてやんねえ!
登校中も朝の会の前の教室内にいる間もほんとに恥ずかしい。
あの後、ケンの事は無視して学校に行ったのだが、ぶっちゃけケンと一緒の方がよかった気がした。
延々と注目を集められ続けると言うのがこんなにきついもんだとは知らなかった。
ケンが入ればケンとの会話に集中できたかも……今日は無理か、会話が成り立たんもんなあ。
ウララ先生にもすごくびっくりされてしまった。
……そろそろ機転をきかさないと俺の神経が持たない。
「あのですにゃあ、ウララ先生!これは、来週行われる文化祭の宣伝のためなんだにゃあ!」
「そ、そうなの?え、えと?猫娘に関係ある事私たちのクラス何かやったっけ?」
「このクラスは、『何でも揃った占いの館』じゃないかにゃあ。その中の1つに生年月日で12種類にわける動物占いがありましたにゃあ!だから猫娘になったんだにゃあ」
「え?でも、動物占いの結果に猫っていないよ」
あれ?そうだっけ?
サル、チータ、クロヒョウ、ライオン、トラ、タヌキ、コアラ、ゾウ、ヒツジ、ペガサス、オオカミ、コジカ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ふにゃーーーー!ウララ先生なんて嫌いだにゃあ!せっかく体はって頑張ってたんだにゃあ!!台無しだけど、これからもにゃあにゃあ言い続けるんだにゃあ!!」
「ああ、猫娘ごめんね。そんなに笑って欲しかったのね。今から思いっきり笑ってあげるから……ぷぷぷっ……あははははははははははははははははははははっ」
「ウララ先生、笑うにゃあ!!」
『あははははははははははははははははははははっ!!!』
「クラスのみんな、みんな敵だにゃあ!!」
『あははははははははははははははははははははっ!!!!!!』
ううう、このクラス、嫌いだ。
ケンがきちんと罰ゲームをしているか見張りをしてるので、律儀にルールを守っているのだが、ウララ先生以外の頭の固い先生にはちょっと参った。
この格好は文化祭の時に使うもので、今の内から羞恥心に慣れておかないと、成功できそうにないと言うシナリオを考えて、何とか場を流していった。
そして、長かった授業も終わり、今日の部活が始まる。
サツキとポンポコからもらったこの時計を初めて使うのだ。
ちょっと楽しみだな。