68話:ポンポコ&ヤスの誕生日、訪問
6月21日土曜日、今日はポンポコさんの誕生日だ。
そして明日が俺の誕生日なので、今日はポンポコさんの家に泊まって、2日連続で誕生日会を実行するという計画だ。
ってか昨日はひどかった……。昨日は部活の後、3年生の『ウララちゃん主催3年生のみんなお疲れさま後は俺たち私たちに任しとけじゃあなバイバイキン会』略して追い出しコンパ、というものが開催された。サツキにもう帰るの遅くならないって約束してたので、遠慮して帰ろうとしたのだが、ウララ先生に捕まった。事情を話したら、
「じゃあ妹さんも呼んじゃいましょう!」
とか言いだしたのだ。
確かに間違ってはないけど、サツキとケンがそろうと、確実に俺の暴露話が始まるんだよ。
やっぱり1つ小学校の時の話が暴露されたし……。
ユッチ、アオちゃんは大喜びだったなあ。特にユッチなんか普段俺にいじられてるもんだから、
ここぞとばかりに色々言ってきた。
まったくなあ……。勘弁してくれ。
で、土曜日。今日はサツキしか一緒に行かないけど、明日は父さん母さんもポンポコさんの家にやってくる。
既にポンポコさんから地図をもらって、両親にも渡してあるから完璧だ。
今日の夜中にはポンポコさんの両親も帰ってくるらしい。1週間連続の休暇を取ったと言っていた。
むこうの家族と俺の家族をあわせると計12人にもなる。
……ポンポコさんの家、そんなに入れんのかな?
これ以上多くなるのはまずいと言う事で、ケンは今回は呼ばなかった。
ポンポコさんのシスコン兄弟に会うのが今から楽しみだ。
今は17時。今日は短距離女子は午前中練習があったので、午後から行く事になっていた。
実は、短距離女子は今日は岐阜へ行くかという話もあった。今日は東海大会が岐阜で行われているのだが、誰も出場しない上、岐阜と言う遠い所で行うので、結局観に行ってない。
そんな事があったので、もしかすると誕生日会は中止になるかもと思ってたが杞憂に終わった。
本来は15時頃からお邪魔する予定だったのだが、サツキが16時まで目を覚まさなかったので、こんな時間からのお邪魔になっている。
えと……本堂、本堂と……あ、ここだ!
ちなみに本堂<ホンドウ>と言うのはポンポコさんの名字だ。
忘れてくれても構わない気がするが。
ここがポンポコさんの家か、2階建てなんだな。4LDKって言ってたけど、部屋割りどうなってんだろうな。
とりあえずインターフォンを押して、ポンポコさんを呼ぶ。
「おっす、ポンポコさん」
「こんにちは、ポンポコ先輩」
「ヤス、サツキ、待っていたぞ、入ってきてくれ」
『おじゃましまーす』
ポンポコさんに居間に連れて行かれたのだが……。
男が5人居る。これがポンポコさんのシスコン兄弟か。
「お、この人がヤスか……って男がいる!?おい!お前、女の所に泊まりにいったって言ってたじゃん!」
「ちゃんと女も居るだろう?嘘は言っていないぞ」
あー、確かに嘘は言ってないね。
「……ポンポコ、泊まりにいった時にこの男に何もされてないな!?」
「ふむ、私は何かされたか?」
「……いや、何もしてないよ」
「お前!こんな可愛い妹が泊まりに行ってて、何もしないとはどういう事だ!?それでも人間か?」
「一兄は私が何かされてた方がよかったのか?」
「そんな訳無いだろう!もしそんな事をしたやつが居たら、地獄の果てまで追いつめて殺してやる!」
俺は一体どうすればよかったんだろう?
一兄さん、怖いです。あなためちゃくちゃ怖いです……。
「ポンポコ先輩のお兄さんって、反応がヤス兄にそっくりだね……同じ境遇の人がいるって素晴らしいです……」
「私もサツキにあった時は奇跡に出会えたかと思ってしまったぞ」
サツキもポンポコさんも結構言いたい放題言うね。俺たちが聞いてるってのに。
「そう言えばお前、ポンポコとはどういう関係なんだ?」
「一兄さん、俺とポンポコさんは」
「お前なんぞが一兄と呼ぶな!!そう呼んでいいのはポンポコだけだ!」
えええ?じゃあどうやって呼べばいいんですか?むしろ他の兄弟達はなんて呼んでんですか?
「ヤス、他の兄弟達は一兄の事は一と呼んでいる。他の兄弟達も二、三、四、五でいいぞ」
「ポンポコさん、それじゃただの番号じゃん!」
「名前に数が入っているから大丈夫だ。そもそも一兄と二兄は本当に一、二、だしな」
「それはひどくないっすか?ポンポコさんの両親」
「書くとひどいようにみえるが、名前は普通だぞ、一<ハジメ>、二<ジン>、三太<サンタ>、四狼<シロウ>、五王<ゴオウ>だ」
んと、五王は普通なのか?かっこいいけど。四狼ってのもなんかかっこいいな。
「始めはちゃんと呼んでいたのだが、私がだんだんと面倒になっていってな、私が一兄<いちにい>、二兄<ににい>と呼ぶようになったら、兄弟全員がそれに合わせて一二三四五と呼ぶようになった」
ほんとかよ!それでいいのかお前ら?
「私の兄弟の呼び方は一二三四五だ。わかりやすくていいだろう?」
……そうなんだけど……いいんかなあ?
……ん?あれ?
「ポンポコさんって前に兄が3人、弟が2人って行ってなかった?」
「ん、そうだが?」
「三さんの後、四なら、ポンポコさんは?」
「ああ、私と四は双子だからな。どっちにも四が入ってる」
「あ、そうなんだ」
ってか未だにポンポコさんの名前知らないってどうなんだろう?
「じゃあ四も同じ大山高校通ってんの?」
「うるさい!落ちたんだよ!」
「え?え?」
俺がそう聞いた途端、
「この野郎!ポンポコと同じ高校に通っているからっていい気になるなよ!」
「い、いや、別になってないけど」
「そもそも何で俺が落ちなきゃ行けないんだ!?筆記試験もばっちり決めて、内申点も悪くなかったのに!」
いや、俺にそんな事言われても……。
「それは四の面接があまりにひどかったからだろう?私も隣で受けていて、ものすごく恥ずかしかったぞ」
ポンポコさんに言われて、がっくりと口を閉ざした四。な、なんか可哀想だ。
あのおどおどしたヤマピョンがちゃんと面接して受かってんのに、面接で落っこちた四って、どんな面接したんだろうな?気になる。
「まあ、四の事は置いとけ。俺の事は一でいい。よろしく」
一さんが手を差し出してきたので、俺も手を差し出して握手する。
「ヤスです。よろし……く……!!!」
痛い痛い痛い痛い!!!そんな締め付けるように握らないで!!!ギリギリ言ってます!!!
「今までは家族だけで過ごしてたのに……この家は家族だけの聖域だったんだ。今年は友達が、しかも誕生日に来るってだけでも悔しかったのに、それがまさか男だと?この野郎……!!」
ほんと痛いんです!勘弁してください!
他の四兄弟ももっとやれって目で俺と一さん見てるし……!痛いー!!
「そういえば、私が友人を家に呼んだのは初めてだな。一兄、そろそろ勘弁してやってくれ。こんなやつでも一応は友達なのだ」
ほほう、初めてのお客さんですか俺は。
それより、こんなやつですか俺は……しかも一応なんですね……
「仕方ない……今はこのくらいですましてやるが……今夜は眠れると思うなよ……!」
うわっ、めちゃこええ……。
シスコン兄弟を侮っていたなあ……俺、明日五体満足で家に帰れるだろうか?