66話:円陣戦隊オウエンジャー
『円陣戦隊オウエンジャー?』
サツキとケンが声を揃える。
「そう、円陣戦隊オウエンジャー!戦隊ヒーロー物は万人受けするだろ?小説読んだ時に、わははと笑ってくれたら、それで反省文も免除されそうじゃん」
「ヤス兄、コメディ小説風反省文とか言っといて、前々反省文じゃないんじゃん」
「う……ま、まあいいじゃん!でさ、読者層としては特にちっちゃな子がいる30代中頃のお父さんとか相手ならよさげじゃん?」
反省文を提出する学年主任はちょうどそれぐらいの年だ。
子供時代にはまってたらなおさら受けるかもしれない。
「で、ヤス、何で円陣戦隊オウエンジャー?」
「いやー、今さ、日曜日の朝、7時半から『炎神戦隊ゴーオンジャー』ってやってるじゃん?」
「一応知ってるけど。ってかわざわざ日曜の朝早起きしてそんなの見てんの?」
「ああ、何か毎日の習慣で日曜にも6時に目が覚めるんだよな。で、サツキも父さんも母さんも9時頃までは起きてこないから、その間暇じゃん?朝ご飯も作ったり、洗濯してんだけど、7時半頃には終わっちゃうんだよね」
「相変わらず主夫してるな、立派な婿をもらえよ」
「うるさい!俺は男だ!……で、家族が起きてくるまで、『炎神戦隊ゴーオンジャー』、『仮面ライダーキバ』、『YES! プリキュア5 GoGo!』と見てるんだけど」
「プリキュアは女の子向けだろ」
「いいだろ!暇なんだよ!……その中の炎神戦隊が俺にはどうしても円陣戦隊にしか聞こえないんだ」
「重症だな、ヤス」
ほっとけ!ケンも聞いてみろ!ずっと聞いてると円陣戦隊に聞こえるから!
「…………それで円陣と言ったら応援だろ!と言う事でオウエンジャーに決定した。エール戦隊オウエンジャーというのも考えたんだけど、炎神戦隊を参考にした事がわかりやすいように円陣戦隊にした。響きもいいしな」
「……まあ、生い立ちは分かったけど、そのオウエンジャーは何と戦うんだ?戦隊ものは基本的に戦わなきゃいけないぞ」
「誰とも戦わない。応援するだけだ!」
「…………それは、戦隊なのか?」
「戦隊ものが戦わなきゃいけないなんて誰が決めたんだ?時には斬新なアイディアが受けるだろ?」
「でもヤス兄、戦隊って『戦う部隊』って書くよね?」
「あ…………」
「…………」
「…………」
「…………」
『…………』
び、微妙な空気を作ってしまったな……。
「え、円陣センタイは、『戦う部隊』じゃなくて『選ばれた部隊』なんだよ!だから、円陣戦隊は本当は円陣選隊なんだ!ただ、戦隊って言った方がかっこいいから円陣戦隊って言ってるんだ!」
「苦し紛れだが、何とか言い逃れたな、ヤス」
「もっといじりたかったのにね、ケンちゃん」
2人していじろうとするな!
「それでは!円陣戦隊オウエンジャーの人員を紹介していく!まずは跳んで跳ねて回って!大道芸なら何でも来い!でも最後にはミスをしちゃうよ!イエローモンキー!」
「最後はしまらないんだ。微妙なキャラクターだね?お笑い担当?」
「まあ、初代からイエローって言うのは3枚めキャラと言う位置づけが定番だもんな」
「そうなの?」
「そうそう、初代『ゴレンジャー』の時なんて、技は相撲の技で、カレー好きと言う、笑いを狙っているとしか思えないキャラだぞ」
「ケンちゃん、相撲の技ってどんなふうに敵をやっつけるの?」
「『どすこいどすこい』いいながら、敵を張り手でやっつけんの。やっつけられた方も空しいよな。……まあ、ゴレンジャー以降ではイエローでそこまで狙ったキャラはいなかったかな?そこまでは知らん」
ってかほんとに何でそんな事まで知ってる?ケン。
「お次は、旗をぶんぶん振ってみんなを応援!でも振ってるんじゃなくて振り回されてるよ!元気なちびっ子女の子!フラッグリーン!」
「……ヤス兄、それってユッチ先輩がモデルでしょ?」
「お、よく分かったな。ユッチはやっぱりどんな所にも使えるよなー、おいしい性格してるよ」
5人の中で1番最初に思いついたのもこのグリーンだ。ユッチをモデルにすると書き易くていいな。
「サツキちゃん、ヤスがいじれるのって学校でもユッチぐらいしかいないんだよね。だからユッチの事すごいお気に入りでさ」
「ユッチ先輩、可哀想に……」
そこ!俺に内緒でこそこそ話し合うな。
「3人目は応援の花形!ブラスバンドの1人だ!最後まで最高音量で吹き荒らすぜ!俺の曲を聴いてくれ!でもめっちゃ音痴だ!お前が吹くと耳が腐る!ブラックラリネット!」
「……それってモデル俺じゃないよな?」
「何言ってんだ!音痴と言ったらケンしかいないじゃん。このキャラのモデルはケンに決まってるだろ。さあ!クラリネットをオパキャマラドと吹き荒らすんだ!」
「耳が腐るとまで言うな!ヤス、今度カラオケ行くときは覚えてろよ!俺の変貌っぷりを見せてやるからな!」
事実を行って何が悪い。お前の音痴はなおらんさ。
「4人目、どんどんいくぞ!女の子の応援と言ったらチアガールだ!立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花!でも、胸が小さいのが悩みなの、チアピンク!」
「ヤス兄、それって私?」
「もちろん、ヒロイン役のピンクはサツキにぴったりだろ!ユッチの次に決まったキャラだな」
「胸が小さくて悪かったね!ヤス兄、一言余計!」
「大丈夫だって、サツキ」
俺はそんなサツキが好きだぞ。
「ヤス兄の趣味なんて聞いてないから、ヤス兄に好かれててもどうでもいいし」
「うっ……」
サツキが明らかに怒ってる。どうでもいいとか言われると傷つく……。
「じゃ、じゃあ5人目。ラストだな。オウエンジャーのリーダー!学ラン姿が似合ってる!どんな時でも頼りになるぜ!かっこよくて、みんなの中心、チアピンクの兄貴、レッドン!」
「そのモデルってヤス兄?」
「おう!チアピンクとは、とっても仲が良くてな。周りからは恋人じゃないの?って言われるくらいの仲の良さなんだ」
「うわっ!……頼りになるとか、馬鹿じゃない?ヤス兄なら、みんなの中心じゃなくて、みんなのいじられ役って言葉がぴったりじゃん」
「サツキちゃん、言っちゃ駄目だって。自分の願望が混じってるだけなんだから」
ケンもサツキもひどいよ……小説の中でぐらい、いい思いをしたっていいじゃんか!
「5人の紹介が長くなったが、そんな5人が主人公を応援する訳だな、こっからOP曲が流れるんだ!」
「ヤス兄、説明聞くより、本文読んだ方が早いから、書いた原稿用紙ちょうだい」
「あ、ああ。わかったよ……はい」
そう言って、俺は今回の原稿用紙を渡した。
20分後、2人とも読み終えた。感想を言って欲しいんだが……。
「ヤス兄、オウエンジャーの設定はそこそこ笑えるんだけど、中身がしょぼい」
「そうそう。こう、落ち込んでる主人公のその理由がばかばかしいせいで、オウエンジャー達が応援しているのがアホらしく見えるんだよな」
「そうだよね、ケンちゃん分かってる!ヤス兄、もう少し笑えるものにしようよ」
な、なかなか酷評してくれるなあ。
「しょ、しょうがないじゃん!今回は俺が落ち込んでる役にするしかないんだから!ってかお前ら、変質者に間違えられるのって、馬鹿馬鹿しい理由になるのか!?」
「普通の人なら激しく落ち込むのかもしれないけど、ヤス兄なら平気かなって思っちゃうんだよね。あ、だからこの小説も浅く感じるのかな」
サツキ!俺だってへこむんだ!特にお前に言われるのは誰に言われるより傷つくんだぞ!
「サツキちゃんの言う通り、本文も、ついでにOP曲も微妙だったけど、ED曲はどうなんだろう?俺の評価だけじゃよくわからんしなあ……理不尽な世の中だけど頑張れって言うメッセージか……」
「ED曲か……んじゃ、明日提出して、評価もらってみよかな」
「ん?ヤス、明日これ提出すんの?」
「もちろんそのつもりだけど」
「……まあ、がんばってな」
何か微妙な言い方されたな。
まあ、明日になれば分かるさ!
こんにちは、ルーバランです。
友人に見てもらって、とりあえずGOサインも出た、円陣戦隊オウエンジャーの歌詞、載せようと思います。
小説家になろうでも『詩』として投稿してよかったと思うので、気が向いたら見てやってください。
今後ともよろしくお願いします。