61話:授業参観、サツキ 前編
土日はケンが家に遊びにきて、サツキとケンとで1日中モノポリーをやりまくった。
3人だと、他の人に土地を独占されてしまうような事はなく、運より実力で勝負が決まる感じだ。
日曜日は両親も交えてやった。
2人とも初めてのクセに、やけに強かった。
特に母さんが強かった。母さんの無言の圧力の前には誰もかなわない。何故か交渉の時、ついつい土地を安く売ってしまう。
と、モノポリーに始まりモノポリーに終わる週末だったな。
ポンポコさんとの再戦が楽しみだ!
今日は6月9日月曜日、サツキの学校の授業参観の日だ。
中学校の5時間目が授業参観の時間である。今、大山高校の4時間目が終わった。
「ケン!今、俺は猛烈に腹が痛くなったから早退する!部活頃にはまた腹が治ってるだろうからよろしく頼む!」
「任されろ!ちゃんと説明しといてやる!」
「さすがケンだ!ありがと!」
そう言い残して俺は鞄を持って学校を出てった。さて、電車に乗って中学校へレッツゴーだ。
今から俺はサツキの授業参観に行くのだ。俺の両親は今日もどうしても仕事が外せなかったので、代わりに俺がいく事にした。
サツキはその事を知らないけど、まあ大丈夫だろう。
……あ、そういえば野球部の監督とかまだ中学校にいるんだったな……あんまり会いたくないなあ……。
中学校に到着した。サツキのクラスは3年4組だったな。
あの監督に見つからないようにこっそりとはいる。他の先生達にもあんまり会いたくないんだよなあ。
サツキのクラス以外の人には会わないように気をつけよ。
「さて、この時の智の心情というのは……」
お、このクラスだな、やってる教科は国語か。よかった、俺の見た事ない先生だ。中学校の知ってる先生には会いたくなかったから、よかった。
裏のドアから侵入する。中学校だけど、結構親の人が来てるな。15〜16人くらいか。
題材はと……
「卒業ホームラン 重松清作」。
ああ、俺も去年やったな。
掲示板に保護者達にも今日来て内容がすぐ分かるようにあらすじが書かれてる。
……小学校6年生の智の父は、智の所属する野球チームの監督で、智は上手ではないことから、今まで一度も試合に出たことがない。
智は6年間練習して努力してきたが、彼には才能がなかった。フライも捕れないし、素振りしても妙にアッパースイングになる。
今までは補欠でベンチに座っていた智だが、試合に出たことはない。
父は、最後の試合、補欠として我が子を登録するかどうか迷ったが、相手チームは強く、連勝もかかっていて、智より上手い下級生がいるので、6年生の部員の中でただ一人外した。
試合は完全な負け試合。最後の試合だったので、補欠の選手も出してやることにした中、智はメンバー登録されてなかったので最後まで出場は叶わなかった。
試合が終わって、
「中学校に入ったら、部活はどうするんだ?」と聞く父に、「野球部、入るよ。」と答える智。「三年生になっても球拾いかもしれないぞ。そんなのでいいのか?」と確認する父に、智は「いいよ。だって、僕、野球好きだもん。」ときっぱり答える。
そんな智を見て、「頑張れば報われる」とはいえないけど、今なら何事にもやる気のない長女の典子に、何か言ってあげたいと思う父親。
その他、やる気の無く、
「がんばったってしょうがないじゃん」と言う中2の典子や、最後の試合なんだから智を試合に出させてあげて、なんで自分の息子なのに出させてあげないのと言う母親など、家族を中心に物語は進んでいく。
掲示板に載ってるのはこんな感じの話だ。
実際は他の子供の親が
「私の子供を試合に出せ!」
という口出しとかもあったけど、そっちは話題にしないんだな。
「じゃあ、この物語の人物の中の智について、グループに分かれて議論してください。保護者の方は色々移動してみてくださって結構ですよ、授業の最後にグループごとに出た内容について発表するので、グループ内でまとめておいてください」
わお、ありがたい!俺はサツキの席の近くに移動する。
俺には気付かないみたいだけど、こっそりと話を聞いてみる。サツキの班は6人か。
男子生徒A
「やっぱり、このひたむきさに惚れるよなあ、がんばっても報われないけど、それでも好きだからがんばる。かっこいい!」
ふーん……。そう言う考えもあるんだね。
女子生徒B
「自分は出れなかったけど、試合に出れる人を精一杯応援するその気持ちがいいよね。」
気持ちは分からなくもないが……。
男子生徒E
「アッパースイングって言うのはこんな風になってるんだ。中々修正って難しいんだよね、中学入っても頑張って欲しいなあ」
野球部の後輩だ……。会いたくなかったんだけどな。ってか全く違う話をしてる。ただの感想になってるよ。
女子生徒D
「うん、うん、うん、うん」
うんだけ?あなた、何か言いましょう!
男子生徒C
「球拾いでもいいから好きだから野球したいって言うその気持ちが大事だよね」
球拾いでも好きだからしたいだなんて、なんてけなげな子なんだろうね。理解できません。
サツキ
「ん?なんかこの智君ってすごいの?全然分からなかった」
おい、妹よ、空気読め!
今回の題材の「卒業ホームラン」は実際に中学3年生の教科書で使用されております。(東京書籍だったかな?)
また、「日曜日の夕刊」と言う重松清作短編集の1つです。
「日曜日の夕刊」で図書館などで調べてみれば読む事が出来ます。
また後々ブログに書こうと思います。今後ともよろしくお願いします。