6話:回想〜変な空気〜
中学生編はまだ続きます。
長くなりすぎたなと感じてます。
「ケン、今なんて言った?」
「だからさ、今日なんでミーティングさぼったのかを聞いてるんだけど」
「…………えっと、今日ってミーティング中止になったんじゃないの?」
「何言ってんの!? 中止になる訳ないじゃん!! 監督カンカンだったよ、『最後の最後に無断でさぼったりするなんて、あいつは結局大会が終われば部活なんてどうでもいいんだって思ってんだな』って」
……ちょっと待て、俺はちゃんと今日は中止だって聞いたぞ。だから俺はミーティングに行かずに家に帰ったんだ。
「俺は、クラスの野球部のやつから今日は中止だって聞いたぞ」
「……」
「そいつに聞けば分かる、そいつに聞いてみてくれ」
「……あのさ」
「何?」
「……今日、ヤスのクラスの野球部のメンバー、ミーティングにヤス以外全員参加してた」
「……?」
「……でさ、今日ヤスが休んだ理由、聞いてるやついるかー? って監督が聞いてたけど、誰も聞いてないって言ってたぞ?」
「……」
「……本当にさぼってないよな?」
「……さぼってないよ、俺は中止って聞いたんだ」
「……そか、それならいいや。あー、悪かったな、怒鳴ったりして。なんか野球部の中でお前が完全に悪者扱いになってたもんだから、気が立っちまってた」
「……ま、仕方がないよ。あのときのエラーは本当に最悪だったし。あーあ、あの後すぐに謝ったときは、許してくれたと思ったんだけどな」
「時間が立てば自然に許してくれるって。夏休みが終わったらいつも通りになってるさ」
「……そうだな、この事は気にしないでおくよ」
「ああ、じゃあな」
「ケン、ありがとな。おやすみ」
電話を切り、深いため息をつく。よくわからない、あいつは何のためにそんな事したのか。
いや、理由は簡単だ。あの大会でのエラーが許せないんだろう。
それに、新人戦まではあいつがライトのポジションを守っていたから俺がポジションを奪ったという事になる。
理由なんて他にも思いつくが……他のやつらもあいつに同調したって事は、俺に対してまだいらだちがくすぶっているってことだよな。
しょうがない。イライラがおさまるまではあまり刺激しないようにするか……。
出校日の後は始業式まで学校に行く予定はなく、ずっと夏休みだ。
中学3年で高校受験が待っているので、宿題を済ませた後も午前中は勉強にあてていた。
午後はケンと遊び、夕方からはサツキとゲームをして遊んでいた。最近はチェスにはまっていて、2人そろって盤面をにらめっこしている。
夏休みの間、ケンと妹のサツキとしか遊んでない。
ケン以外の野球部の仲間と顔を合わせにくいから、会う相手なんてどうしても限定されてしまう。
野球部以外のメンバーには夏休みにまで会おうって友達はいないし、こればっかりはしょうがない。
野球部に顔を出そうかとも思ったが、まだ怒っている気がして何となく後回しにしていた。
そして中学3年の夏休みも終わり、2学期が始まった。
始業式の朝、今日もサツキと一緒に登校だ。
……相変わらず寝坊しやがって! 今日なんて朝飯食べ損ねたじゃんか! せっかく作ったのに!
「ほらほら、ヤス兄。もっと急がないと遅刻しちゃうよ!」
「黙れ! この野郎! お前がもっと早く起きればいいだけの話だろうが!」
「あー! レディーに向かって『野郎』はないでしょ、『野郎』は。そんなんじゃモテないよ」
「うっさい! お前に言われたくはない!」
「私は今年の夏休みにちゃんとデートしたもん」
「部活の男女で集団で遊びにいっただけだろうが、そんなんはデートなんて言わん!」
誰がどういおうとそれはデートじゃないやい!
「ちゃんと3対3だったよーだ! トリプルデートって言うんだよ。ところで、ヤス兄はなんで私の日程知ってるの!? まさかストーカーしてたの!? ヘンタイー」
「お前が夕食の時にずっとしゃべってたんだろうが! なにが悲しくて休みに妹の尾行をせにゃならんのさ!?」
いや、実はしようとは思ってたんだけどさすがにそれはまずいだろ?
「まあまあ、私に彼氏ができても彼氏をいじめちゃだめだよ」
「……なに、そのときのメンバーに本命でもいんの?」
「さあ? 秘密だよー。ん? ヤス兄、気になるの?」
「別に、こんなんと付き合ってくれるいいヤツなんているかなーって思っただけだ」
「うわ、ひどいー! あ、そっかそっか、ヤス兄ったら、私が他の男のものになるかもしれないってヤキモチ焼いてるんでしょ」
「そんな訳ないだろ! どれだけポジティブなんだよお前!」
「ムキになる所が怪しいー! ヤス兄はほんとにシスコンなんだからー」
「……はぁ……」
いや、その確信はどこから生まれてくるんだろ? ……俺の日頃の行動からだな。
といつも通りの会話をしながら学校へ急ぐ。
今日は予鈴の寸前に教室に入る事ができた。
チャイムが鳴る前に入れたはずだったのだが、既に先生が教壇の上に立っていて全員の生徒が着席していた。
……あれ?間に合わなかったか?
「ほら、さっさと席に着け! お前が全員を待たせているんだぞ!」
「……あれ、でもまだチャイムなってませんよね? 何でみんな既に席に着いてるんですか?」
「ぐだぐだ言い訳するな!! ったくお前ってやつはやっぱりいい加減なやつだな!」
「……すいません」
「もういい! じゃ、ホームルーム始めるぞ!」
……なんだかよく分からないまま、ホームルームが始まってしまった。クラスの雰囲気もおかしいし。
ホームルームが終わると始業式だ。
「なあ、今日なんかあったのか?」
「いや、別に何もないよ……それじゃ」
隣の席のやつに話しかけてもなんだか微妙な反応を示す。
他のやつも同様だ。いままでとても仲が良かったという訳でもないけど、こんなよそよそしいという空気はなかった。
「まったく、何なんだよ……」
よくわからないまま、時間だけが過ぎていった。
こんにちは、ルーバランです。
全然タスキと関係ない話が続いていて、小説タイトル変えようかなあと思ってしまいます。
今後ともよろしくお願いします。