59話:インターハイ県大会、3日目
6月1日日曜日、今日は家族みんなで小笠山総合運動公園に来ている。
今日は県大会3日目だ。200m、4×400mリレー、競歩、5000m等がある。
大山高校は今日は誰も出場しないので、今日は別に大会には来なくてもいいとウララ先生が言ってた。
けど俺は、せっかくなので、他の競技も見てみたかったのだ。
日曜日で休みたいだろうに父さん母さんに、無理言ってついてきてもらった。
ケンも来るかと思ったけど、今日は兄貴のアパートに遊びにいくと言ってた。
競技場には、ユッチとポンポコさんもいた。離れてるけど、女子の先輩、ゴーヤ先輩と誰だったかな?、も2人とも来てるみたい。女子で来てないのはアオちゃんだけみたいだ。
男子はと……誰も来てないな。
この差はなんだろう?
ユッチとポンポコさんの座ってる所に近づいてった。
ユッチは俺を見ると逃げていきそうな気もするけど……。
「あ!ユッチ先輩にポンポコ先輩!おはようございます!」
「え?あれ?何でサツキちゃんがここに?ってサツキちゃんがいるって事はあの馬鹿も?」
「ユッチおはよう、馬鹿と言われたヤスです」
「な、な、な、何でお前がここにいるんだよう!?今日は会わないですむと思ってたのに」
「ヤス兄、ユッチ先輩になんかしたの?」
「いや?俺は何も?したと言うなら、サツキとポンポコさんとケンとしたって言えばいいのか?」
「もうその話は忘れろお!!話題に出すなあ!ヤス、いい!?そうしないとこれからも逃げるからね!」
「それはそれで面白いし、もう少しからかいたかったんだけど……了解」
「からかおうとするなあ!ほんとにわかってるの?ヤスは」
「おはよう、ポンポコさん」
「ああ、ヤスおはよう」
「ボクを無視するなあ!」
叫んでいるちびっ子ユッチはほっといて、ポンポコさんに話しかける。
サツキが慰めてるな。どっちが年上か分からん。
「ユッチはいるかもとか思ってたけど、ポンポコさんも来てるとは思わなかったな」
「ふむ、マネージャーとして他の高校のレベルを知っておくというのは大事かと思ってな。一応見ておこうと思ったのだ」
「おー、偉い。それにしても、女子の出席率は高いねえ。来てないのはアオちゃんだけか?」
「はい、私ですか?呼びました?」
「うわ!?アオちゃんも来てたんか?今まで気付かなかった」
「今、ちょうどジュースを買いにいってましたから。おはようございます、ヤス君」
「おはよう……ってかこれで女子は出席率100パーセントか。熱心だな」
「ユッチがリレーで東海大会出場を目指してますからね。今、女子の選手は4人しかいませんから。ユッチが練習でもすごい鼓舞してるんですよ」
「へえ、やる気だな。ユッチが出たいのって4×100メートルリレーの方?それとも4×400メートルリレー?」
「4継でほんとは出たいみたいなんですが、マイルのが可能性が高いって言ってましたね」
「えと、4継とかマイルって?」
「4×100メートルリレーの事は4継って言います、そして4×400メートルリレーの事をマイルって言うんですよ?地区大会の時から言ってましたが、聞いてませんでしたか?」
「……ええと」
「4×100メートルリレーは4人で400メートルをつなぐことから4継と呼ばれます。4×400メートルリレーは全部で1600メートル走る事からマイルって呼ばれます。1マイルは約1600メートルの事ですからね」
「知りませんでした……」
「陸上部内では、何とかメートルリレーと言わず、4継とか、マイルと言うので、覚えておいてくださいね」
「……はい」
俺の勉強不足、コミュニケーション不足がこんな所で明かされてしまいました。
「で、なんでマイルのが可能性が高いの?」
「ゴーヤ先輩がいるからだそうですね。今はまだ県大会ぎりぎり出場レベルですけど、来年にはもっと記録伸ばせるってウララ先生が言ってました。それに、私も100mより400mの方が向いてるらしくて」
「へえ?ウララ先生が言ったの?」
「ええ、私、加速するのが遅いみたいで、100mだと短すぎるみたいなんです。練習すれば100mでもそこそこ走れるかもしれないけど、400mの方が上の大会を目指せるんじゃないって言われました」
「ああ、400mに向いてる選手が2人いるから、マイルの方が可能性が高いってわけか」
「3人ですね。100mハードルで県大会に出場した先輩、覚えてますか?今日も来てますが」
「ああ、あだ名は覚えてないけど」
「キビ先輩です。ヤス君はそんなに接点ありませんから、また忘れるかもしれませんが……一応何となく覚えていてください。キビ先輩は本当は400mハードルの方が主だったんですけど、400mハードルは地区予選で隣のレーンに入って失格になっちゃいましたからね。ハードルがない場合でも400mの方が得意ですよ」
「そっか、じゃあマイルのが東海行ける確率高そうだね」
「ええ、そんな感じらしいです。選手は4人だけなので同じメンバーでマイルも4継も走りますけど」
うわ、大変だ。
予選決勝とか会わせたら、一体何本走る事になるんだろ?
「じゃあ、1回の大会に個人種目とリレー種目とあるから、3、4種目出場するんだ」
「そうなりますね、200mと400m、それにリレー種目、全てが決勝に残ったら……11本走る事になりますね」
無理!俺にはそんなに無理!
「話してばっかいないで、ちゃんと大会見ようよ、もう競技やってるんだよ」
サツキが俺に言ってくるんだが……
「この競技ってやってる人見るときつそうなんだけど、ずっと見てるのはあんま面白くないから仕方ない」
「まあ、それは分かるけど、選手だって頑張ってるんだからちゃんと見てあげようよ」
「そうだな……そうするか」
俺は改めて競技をしっかり見始めた。しかし……やっぱりあまり面白くない。
力の差ははっきりしていて、競技者の距離は開いてるし、最初真剣に見ていなかったから、どこが先頭かも分からん。
……今やっているのは女子3000mウォーク決勝。速い人は15分切るくらいで歩くけど、遅い人は20分かかると言う競技だ。
さっきからずっと歩き続けて、今先頭の人がゴールした。
……何とも盛り上がりに欠ける競技だったな。
もっと上の大会に行くと競歩も面白いらしいのだが。
その後、200m決勝、5000m決勝、マイル(4×400メートルリレー)などを見た。
5000mは浜松体育高校という所が14分57秒77という記録で優勝していた。
その他、藤枝明星高校が4位と5位で入賞と、今年は自分たちの地区ではない所の方が強いのだと言う事が分かった。
自分たちのいる東部地区からは勝島学園の選手が6位入賞を果たし、なんとか1人出場したのみで終わった。
しかも、1位から6位のうち、5人が2年生。来年もいるって事だ。
……まあ、出場すらしていなくて実力差が歴然としてる俺やうちの高校には全く関係ない話だな。
ユッチとアオちゃんは女子のマイル決勝を真剣に見てた。
優勝したチームは3分53秒41というタイム。
他のチームとは4秒以上も離しての大差の勝利だった。
東海、インターハイとまだ期間があるから、さらにタイムを伸ばしてきそうだ。
6位のチームは4分02秒33。東海大会出場の為にはこれを上回らないとならない。
今年の東部地区大会では、大山高校は4分25秒55だった。
ゴーヤ先輩が出てなかったと言っても、とても勝負にならない。
これからほんとに頑張らないと東海は厳しいぞ、ユッチ。
見終わった後、ユッチ、ポンポコさん、アオちゃんとうちの家族で、フリスビーを持ってきてたので、遊んで帰った。
いや、フリスビーって意外と楽しいな。