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46話:3年生の引退

今日は5月7日水曜日だ。

昨日まではインターハイ地区予選で、応援に行ってた。応援ってだけでもいるだけでなんか疲れたな。


「……重い……」


覚えている人はいるんだろうか……。

ジャンケンに勝ったのに、何故か俺が組立型テントを運ばされてる事なんて。

しかも今日は雨。大会中に降らなかったのはよかったけど、運びにくくてしょうがない。

高校の最寄り駅のホームに着いたら、ケンがいた。同じ電車に乗ってたんだな。気付かなかった。


「おっす、ヤス!疲れた顔してんな!」


「ケン、お前のせいだ!なんで結局全部俺がテント運ぶはめになってんだよ!じゃんけんに負けたケンとヤマピョンが運ぶべきだろ、せめてこっからはケンが運べ!」


「ヤス、400メートルの賭けの事を忘れたのか?『様』をつけろ『様』を」


「うっ」


嫌だ、こんなヤツに『様』をつけるなんて……。


「早く言え!言うんだ!」


「ケン……様……」


屈辱だ……。


「ふむ、それでよろし。それで、君は我が輩に何を押し付けようと言うのだね?」


「テント、ケン様がじゃんけんで負けたのだから、ケン様が運ぶべきです」


「やだ」


「何で!」


「それヤスのだから」


「これ俺のじゃないし!学校のだし!」


「ヤスが馬鹿だから」


「お前に言われたくない!お前のが馬鹿だろ!」


「いじられっ子だから」


「いじるのはお前が筆頭だろうが、もっと自重しやがれ!」


「ヤスの修行?」


「修行ってなんだよ!重りをつけての修行なんて今時はやらんよ!」


「面白いから」


「ケン様を喜ばせる為だけに俺はこれを運んでんのか?俺どんだけお前に尽くしてんだよ!?」


「運ぶのが好きだから?」


「好きなわけないだろ!?誰がこんな重いの運んで喜ぶんだよ!俺はマゾじゃない!」


「俺がサドだから」


「ケン様ってサドなのか?ウララ先生にあんなに放置されても喜んでるからむしろマゾのほうかと……」


そんな事を言ってたら、


「ヤス、もう学校着いたぞ」


「へ?あれ?ほんとだ」


「ふ、お前の為を思って、意識を会話に集中させてやったのだ。そうすれば重いのも気にならなくなるだろう?」


「確かに……いつの間にか学校に着いてたもんな」


「お前の事を思っての行動だ。楽が出来てよかったじゃないか。それじゃ俺は先に教室に行くから、それ返してこいよ」


「ああ、心配してくれてありがとよ!」


「気にするな!」


うん、おかげで楽に学校に来れた。ケンもたまにはいい事するよなあ。















教室に戻って、アオちゃんにその事を話してたら、


「ケン君はただ単に、運びたくなかっただけですよ。馬鹿ですね、ヤス君は」


はぅ……俺ってやっぱり馬鹿なんだろうか……。そう考えると俺が馬鹿にできるユッチって貴重な存在だ。
















放課後になって、陸上部員が集合した。今日は雨だから、教室を借りて集合だ。

ウララ先生が前に立って、最初の挨拶をする。


「さて、今日は反省会とともに、3年生の引退ですね。3年生のみなさんは、引退の言葉を1人ずつ話してください。湿っぽいのが好きな人は面白く、面白いのが好きな人は湿っぽく話しましょう」


なんでわざわざ逆にする必要あるの!?湿っぽいのが好きな人は湿っぽく話そうよ!


「それじゃ2年生の人からまず順に大会の反省をしてってくださいね」


大会の反省については、ふざける人もおらず、別に普通だった。

ここがまずかった、あの時のスパートが速すぎたなど、普通の反省会だ。

いろいろ思う所はあるが、つっこむのは野暮だろう。


30分くらい聞いていて、これから3年生の引退の言葉が始まる。

2年以上も頑張ってきた訳だから、思う所はあるだろう。


ん、長いのでダイジェストにするか。


男子短距離、サボ先輩

「俺、1年の頃はさぼってばっかだった。でも、2年になってウララ先生に会ったおかげで、ちょっとは頑張ろうって思った瞬間に怪我して、結局まともに練習したのは半年だったんだ。みんな、絶対怪我しないようにな!あと学校はサボるなよ!」

サボ先輩のあだ名の由来はサボリだったのか。ってか部活じゃなくて学校をサボってたのね。


女子短距離、サン先輩

「私、大会に出たのは2年生からなんですよ。県大会には1度も出られなくて残念なんですけど、初めて太陽の下で大会を走れました!最高の思い出です!」

……そっか、去年は全部雨って言ってたもんな……。ただ晴れた日に走れただけで嬉しいって言うのは……今までが不憫すぎる……。


男子長距離、ラッキ先輩、ノンキの兄貴

「一言、『頑張〜れ〜、負け〜るな〜』」

タオルズか〜。

いい歌なんだけど、何でその部分しか歌わないんだろ……そこしか知らないんじゃね?


女子短距離、チキ先輩

「み、み、み、み、み、みんな、頑張って……」

すぐ逃げた。チキって言うのはチキンの事か?人前に立つのが苦手だったのかな?

陸上のスタートの瞬間とかは平気そうだったけど……。話すとなると何か違うんだな。

男子長距離、ドン先輩、5000mを17分09秒で走り、この高校では1番だった人。

「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根をのばせ。やがて大きな花が咲く。……よく使われているが、俺も大好きな言葉だ。特に、ゴーヤは今は怪我できついかもしれないが、くさらずに頑張れば来年きっと大きな花が咲くさ」

……なんかゴーヤ先輩といい雰囲気作ってる。ふたりの世界に入らないでください!他の人たちがすごく困ってます!早く次の人にいきたいのに誰も声がかけられない!


…………5分後、やっと次の人になった。先輩たち、さすがにちょっとうざかったです。


男子長距離、ハニ先輩

「僕からは、残った君たちにこれを送ろう!」


……そう言って、1人1人に花を渡してくれた。白いちっさな花だ、何の花これ?


「この花の名前は『タネツケバナ』だ!」

げ、そんな名前の花を贈らないでください!!俺たちに何を求めてるんですか!?


「この花の花言葉は『勝利』『不屈の心』『情熱』『熱意』『燃える思い』だ、これからの部活

でも、情熱、熱意を持って取り組み、自分への勝利をつかんでくれ!」

…………うわ、恥ずかし!

先輩はちゃんとまともな事考えてたのにめちゃ邪推してしまった。

俺ってやっぱかなりエロイよなあ……。


女子短距離、ユミ先輩

「今までありがと、それじゃね!」

おい!走って出てっちゃったよ!最後だろ!帰っていいの!?






……………あ、戻ってきた。

あー、泣いてたんだな、でも泣いてるの人に見られたくなくて……すみません。けなしたりして。


女子短距離、オーちゃん先輩。400mハードルにて県大会に行く人

「私は、まだ残るけど、これからの練習もハードルの練習も取り込むから、あまり一緒には練習しないかもしれない。今までもそうだったから、1年生の中には知らない人もいるかもね……でも、気持ちはいつでも一緒だから!」

かっこいい……ここで男子の先輩が言ったらクサいセリフ言ってんじゃねえ!とか言いそうだけど、この先輩が言うとなんか決まってるな。


男子長距離、ぐるぐる先輩

「……ごめん、何も思いつかん」

……もう9人目だからな。前の人と話すにしてもネタするにしてもかぶるもんな。

でも、後少しなんだ!もうちょい頑張れよ!


男子短距離の先輩、部長

「俺がトリか……これからは、新体制になる、1年生も2年生もお互いに仲良く楽しくやっていってくれ。そこで、今から新部長を発表する……ゴーヤ!君しかいない!」


「……分かりました、部長」


「俺はもう部長ではない……ゴーヤ、君だ」


「……!そうですね。分かりました、元部長!」


「…………くぅ………俺からは以上だ…………」


がっかりしてるなあ。そういや、この人だけ部長って呼ばれてて、あだ名が無かったな。

…………覚えてもらえなかったか、可哀想に。


こうして、3年生は引退し、1、2年生の新チームが始動した。

今日は雨だし、この反省会兼3年生引退宣言会で、時間が潰れたので、練習は明日からだ。


ふむ、3年がぬけて何か変わるかな?


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カカの天下
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