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441話:試験勉強

 5月23日土曜日。部活が終わった後に、自宅にケン、アオちゃん、ユッチがやってきて試験勉強対策を開始した。サツキとアヤも居間で一緒になって勉強している。

 本当なら、試験3日前なんて部活禁止期間なんだけど、大会があと1週間と差し迫っている状態なので、関係なしに部活している。

 カリカリと鉛筆を走らせる音が響くが、アヤとケンとユッチの3人の顔が悲壮感たっぷりで、見ているのがつらくなってくる。

 アヤは日本に来たばっかりだからなあ。頑張れとしか言いようがないけれど。


「ヤス。中間テストって何点以下だと赤点なんだっけ?」


「平均点の半分以下だろ? それ以上は知らない」


「平均点の半分以下ねえ……誰かが解答欄ずらして書いたりとかしたら、一気に平均点下がるんだけどなあ。誰かやってくんねえかなあ」


 ケン、そんな他力本願とか、危険なことを考えてるなよ。


「ヤスヤスう……ボクもお駄目だあ……頭がパンクしそお」


「俺に聞くなよ。もっと勉強ができるアオちゃんに聞けアオちゃんに」


 昼飯のんびり食べるくらいの余裕はあっても、人に教えるほどには余裕はないんだ。


「私とケン君は文系です。ヤス君とユッチは理系です。残念ながら勉強する科目が違うので、私ではもうユッチに教えられることは少ないです。ここはヤス君ががんばってユッチに勉強を教えてあげてください」


 うわ、アオちゃん、ユッチの事投げやがった。別に文系だろうが理系だろうが教えられるだろうに。


「……ヤスう」


 ……そんな捨てられた子犬のような目で見てくるなよ。こっちだって余裕はないってのに。

 仕方ない、ちゃっちゃと教えてすぐに自分の勉強に戻ろう。


「ああもうっ、何が分かんないんだよ」


「全部!」


「ふざけんなっ!」


 びしっと頭にデコピンを食らわせた。


「いったいなあ! 何するんだあ!」


「全部とか言うな! ちゃんと勉強してんのか!」


「してるよお! でも、分からないんだからしょうがないだろお!」


 そんな訳ないだろうが。


「はいユッチ、1日目のテスト科目は?」


「え? ええと、ええとお。数学B、化学だったかなあ」


「2日目は?」


「えっと、英語ライティング、物理、現国。だったよね?」


「3日目は?」


「日本史、数学II」


「4日目は?」


「古文、英語リーディング」


「ほら、分かってるじゃんか。余裕余裕」


 そう言って俺は自分の勉強に戻る。化学の計算式が全然覚えられなくて、困ってんだよ。化学覚えること多すぎる。


「どこが余裕なんだよお!? 全然余裕じゃないよお!」


 それだけわかってたら、どれを勉強しなきゃいけないかくらいは何となくわかるじゃんか。

 黙々とやっているアヤとサツキから、ギロリと睨まれた。うるさいから静かにしてくれって事なんだろう……うるさくしてるのユッチな気がするんだけど。俺が悪いわけじゃないと思うんだけどな。

 ケンからもアオちゃんからも冷ややかな目で見られてる。ええ、ユッチを静かにさせろって事なんですよね。

 はぁあ……みんな揃って、めんどくさい事、押し付けて。


「ユッチ、部屋変えよう。俺の部屋になんか参考書あったはずだからそっちで勉強しよう」


「はあい」


 そう言って俺とユッチとで、部屋を移動する。2人でトタトタと階段をのぼり、俺の部屋に入る。

 これで、とりあえず他の人には迷惑はかからないだろう。

 隅に置いてあった丸机を部屋のど真ん中において、体面に座る。


「ユッチ、大丈夫そうな科目は?」


「そんなのあるわけないじゃんかあ!」


 そんな自慢げに言うな。


「県大会もあるし、ユッチの場合は22時には寝ないとだめだよな。風呂入ったりご飯食べたりする時間考えたら……残りの勉強時間は5時間くらいか」


「えええ? あと5時間も勉強するのお?」


 お前のためだろ。そこは頑張れよ。


「現国は何となく解けるし、古文も適当に書けば何とかなるな。ライティングも適当に書きまくって乗り切ろう」


「適当で乗り切れるわけないじゃんかあ!」


 そんなこと言われても、残り2日で何とかしようと思ったらそうせざるを得ないというか。

 ううん、もう少し具体的に何か対策を考えないとだめか。


「英語リーディング、うちの先生は単語問題を2割出すからそこをきちんと答えさえすれば、20点は確保できる。単語は4月から5月の間に習った箇所で、80個くらいか。3日目が終わったらひたすら単語を覚える。そうすれば赤点は免れるはずだぞ」


「80個お? 1日じゃ無理だよお!」


 そこは気合で乗り切れ。


「英語ライティングなんて適当でどうにかなるもんだって。例えば英作文で、『私が昨夜観たDVDは、ハリウッドで作られた映画だ。』とかあるじゃん」


「ふむふむ」


「うちの高校、英語のライティングのレベル低いから、意味さえ通じたらなんとなく丸がもらえる」


「どういうことお?」


「文を短く切って簡単な文にしちゃうんだよ。『私が昨夜見たDVDは、ハリウッドで作られた映画だ。』だったら、『私は昨夜DVDを見た。このDVDはハリウッドの映画だ』とか。そうすれば、I watched DVD yesterday night. This DVD is the Hollywood movie. でOK」


 先生によるけど。ちゃんと書かないと丸くれない先生もたくさんいるし。けど、うちの先生ならこれで丸がもらえる。


「おおおお」


「大学入試の問題でも同じようにやれば適当だけど書ける!」


「それはむりでしょお」


「そんな事ないって。何とかなるなる。これでユッチも大学合格間違いナシだ!」


 適当なことをユッチに向かってほら吹いていたら、突然後頭部を殴られた。

 痛いなあっ、誰だよ。と思って振り返ったら、アオちゃんが仁王立ちで立っている。


「ヤス君、適当なこと言ってないできちんと教えてあげてください」


 ユッチに教えるの放棄したのアオちゃんのくせに。


「あと、2人とも声をもう少し小さくしてやってください。1階まで聞こえてきて、集中できません」


 ……すみません。

 謝った後で気づいたのだけど、ここって俺の家だよな。なんでお客のアオちゃんに命令されたんだろう……。

 なんとなく納得がいかないところがありながらも、それからは静かに勉強を始めた俺とユッチだった。

英語のくだりはTOEIC300点台なので、信じないでください


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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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