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439話:自己紹介

 5月20日水曜日、部活が終わった後、何故か俺は長距離1年生の部員とともに、ファミレスにやってきている。


「なんで俺はここにいるんだろう……」


「あんたがすぐに人の名前忘れるからでしょ、このバカ」


「バカというなバカと。バカって言った方がバカなんだぞ」


「……あんたの脳みそって小学生レベル?」


 ひでえ!? そこまで俺はレベル低くないよ! こう言うと、ユッチなら顔を真っ赤にして『ボクはバカじゃない!』とか言ってくれるのに。ユッチみたいにノッテくれるのは貴重だ。


「で、結局この集まりってなんなんだ?」


 アヤに連れられて無理やりファミレスまで来たけれど、一体何の用事なんだろう。


「新入生歓迎会ですよ。ヤス先輩」


 ……新入生歓迎会なら、4月のうちにもうやったじゃんか。なんでまた今更。


「1年生で相談しました。少しくらい、名前覚えてもらおうと。親睦深めれば少しは名前覚えてもらえるかなと思いまして」


 それで新入生歓迎会という名目をつけて、長距離部員で親睦会に来ているわけか。


「ヤスお兄ちゃん、今日中に絶対みんなの顔と名前一致させてよ。大丈夫、ヤスお兄ちゃんならできるって信じてるから」


 アヤ、それすごいプレッシャーだよ。俺名前覚えるの苦手なんだよ。


「今日中に私とエリの見分けぐらいついてもらうからね、このバカ」


 ええと、俺、一応先輩ですよね。なんでタメ口で言われてるんでしょうか。バカバカ言われまくって、ちょっとへこみ気味です。


「私がシイコ。漢字は岡の上に生えた椎茸の子供と書いて、岡椎子」


「ああ、だから岡椎子の頭ってキノコのようにしたくておかっ――いってえ!? シイコ、なにすんだ!?」


「フルネームで呼んだ奴は必ず殴ることにしてる」


 すぐに殴るな! しかもグーで殴るな! めちゃくちゃ痛いだろうが!


「で、エリと私は双子。私の方が一応姉ってことになってる。中学の時はあんたも知ってる通り、ソフトテニス部所属。高校入ってからもテニス部でもいいかなって思ってたけど、サツキに誘われてこっちにきた。趣味はスポーツ全般」


 なんだか、向かい側に女子が座って、俺が座ってる方に男子が座って、自己紹介をして……なんとなくお見合いをしたらこんな感じなんだろうかと思ってきた。


「私がエリっす。双子の妹っす。私とシイコ姉、似てるようだけどそんなに似てないっす。特に目が結構違ってて、ちょっと吊り上ってるのがシイコ姉、垂れてるのが私っす」


 ……全然わからん。というかシイコもエリも、どう見てもつり目でもたれ目でもない気がする。あえて言うなら……ひら目?


「口を開けば分かるぞ。口が悪いのがシイコ。口調が変なのがエリ」


 この前も思ったけど、双子は髪型くらい変えてほしいなと思ったり。そうしないとわかんねえよ。理解しろという方がつらいよ。


「……シイコ姉、ヤス先輩殴ってもいいと思うっすけど、いいっすよね」


「ダメ。このバカは私が殴るから」


 ちょ、エリもかよ。怖いからすぐ殴ろうとするなよお前ら。握り拳作ってるんじゃねえよ。

 次にアヤが自己紹介をして、次は男子の番。


「俺は桜井カケルです。これといった特徴はないですが、よろしくお願いします」


 ものすごい簡単な自己紹介だな……。


「カケル、そんな普通な自己紹介じゃ面白くないじゃないか。もっと何かボケを入れてかないとだめだろ」


「いや、ヤス先輩。別に自分、これと言って特徴あるわけじゃないんですが。それに、面白くある必要ないような気がするんですけど」


 面白くない自己紹介なんて自己紹介とは言えないじゃないか! 面白く自己紹介してこそ自己紹介だ。

 お前、クラス替えとかあるときに面白くない自己紹介を40人続けられてみろ。それだけでうんざりしちゃうじゃんか。

 初めの方にした人の自己紹介なんて全く覚えてない。だから、絶対に面白い自己紹介をすることを心がけなきゃいけないんだって。


「ったく、しょうがないな。ここは俺、近藤康明が見本となるような自己紹介をしてやろうではないか」


「ヤス先輩のは別にいいっす」


 ……なんでだよ。ものすごいやる気に満ち満ちてたのに。そんなバッサリと切るんじゃないよエリ。


「今日はヤス先輩に私たち1年生の名前を覚えてもらう会なんだから、ヤス先輩が自己紹介したってしょうがないっす。というか、ヤス先輩の事はなんとなくみんなわかってるっす」


 正論な気もするが……。


「そんなに俺のこと知ってるわけじゃあるまいし。どんなこと知ってるってんだ?」


「バカ」


 シイコ。それ知ってるって言わない。というかもっと褒めてくれ。


「結構小心者ですよね。試合前になると緊張でがくがくぶるぶる震えてましたし」


 カケル、その通りかもだけど、そんなところばっか見なくていいから。


「いい言い方すると素直っす。悪い言い方をすると騙されやすそうっす」


「疑心暗鬼になるよりも、人を信じて信じて……それで騙されるならおれは本望だ」


「だからバカなのよ」


 ……シイコ。お前、絶対俺の事嫌いだろ。


「ま、まあ俺の事はどうでもいいんだって。それよりカケルの自己紹介はもっとなんかないの?」


「俺、ヤス先輩みたいにいろいろ」


「いやいや、あるだろ。唯一の彼女持ち。短距離のユッコさんと付き合ってるって言う。うらやましいぞこんちくしょう!」


 そう言って俺はカケルの肩をバンバンとたたく。


「ちょ、やめてくださいよ」


「恥ずかしがっちゃってー。ヒューヒュー」


 ついでに口笛も吹いてはやし立てる。いやあ、こうやっていじれる後輩がいるって楽しい。


「……最低ね、あのバカ」


「ああいう先輩たちにはなりたくないっす」


 なんだか全員から白い目で見られている。普段ならいつも俺の味方をしてくれるアヤも、何故だか冷ややかな目だ。

 ……あれ? 今、もしかして、自分の評価落とした?

 なんとなく気まずい思いをしながら、こそっと俺はトイレに立った。

 ……ううん、後輩と上手くスキンシップを取るって難しいものだ。

自分自身、1年生の名前を忘れかけていたので、リハビリを兼ねて。

1年生からもいじられてしまうのは、ヤスの宿命です(^^;

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カカの天下
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