433話:インターハイ地区予選、3日目終了
インターハイ地区予選、3日目が終了した。
俺の正式なタイムは16分44秒89。最終的な順位は1組目3位、総合で26位という結果に終わった。残念ながら県大会出場はならなかった。
1組目に出場して、自分より実力が上の選手についていくことができれば、もう少しタイムも上がり順位も上がっただろうけど、きっと県大会出場はならなかったろう。まだまだ実力不足って事はよくわかった。
1600mリレーは男子が3分24秒55で3位、女子も4分03秒22で3位と、ともに入賞を果たし県大会出場を決めた。
最終的に県大会に出場を決めた種目は、男子110mハードル、女子100mハードル、女子400m、男子400m、女子400mリレー、男子400mリレー、女子100m、女子400mハードル、男子400mハードル、女子1600mリレー、男子1600mリレーの11種目。
去年のインターハイ地区予選ではたった2種目、新人戦でも6種目しか県大会に出場できていなかったことを考えると大躍進だ。
けど、この中に一つとして長距離種目が入っていないことがとても悔しい。
そう言えば、このインターハイ地区予選が終わり、短距離の先輩たちは全員県大会に出場出来たから、まだ引退は先だけど、長距離種目の先輩たちはもうこれで引退なんだよなー。
先輩たちがいなくなってさびしいとか本来は思うはずなんだけど……特に思い出がないなあ……むしろ短距離の先輩たちにはお世話になった思い出がたくさんあるけど……東海大会まで行くことができれば、もう少し先輩たちと一緒に練習できるんだよな、出来ることなら行ってほしいなあ。
……何はともあれ、とても疲れた。ダウンを終わらせ、ウララ先生の話を聞いて、色々な反省はまた明日、ということで今日は解散という流れになった。
5000mを走り終わってから、もう眠くて眠くて仕方ない。今日は家に帰ってすぐに眠りたい。
「ヤス兄、帰ろー?」
「ヤスお兄ちゃん、帰ろ帰ろっ」
「おう、帰るかあ」
サツキとアヤから声を掛けられ、帰り道を歩き出す。
「ヤスお兄ちゃん、お疲れ様っ。ラスト惜しかったね。サツキもお疲れー」
「ありがと。けど、私が1人抜かれちゃったんだよね。やっぱりまだまだ、戦力だって言い切れないなあ」
「いやいや、十分戦力だろ。3位に入賞してる時点で十分な戦力だと思うんだが」
チーム全体で4分2秒のタイムを出している1員が、戦力じゃないなんて言ったら、他の学校が怒ってくんぞ。
「ううん、でも、1600mリレーの個々のタイム、あ、ポンポコ先輩が応援席で測ってるだけだから正式タイムっていう訳じゃないんだけどね。その個々のタイムを見たら私のタイムが、一番遅いんだよね。チーム全体のタイムを上にあげるには、私ががんばらないとどうにもならないなあって」
1年生の時点でそこまで考えるか。
「去年の東海大会出場の最低タイムは4分2秒30だったんだよね。今年のが去年よりレベルが高いって言ってたし、どうにかして、あと3週間でもう少し実力を上げなきゃ」
サツキ、東海大会に出場する気満々なんだな。俺もこのサツキの向上心は見習わないと。
「サツキはいいなあ。1年生で県大会出場だもんね」
うっ……そうだよな。妹が県大会出場で、兄の自分が県大会出場できてないってかっこわる。
そんな他愛もない会話をしながら、そのままのんびりと電車に乗り、自宅の最寄の駅で降り、自宅についた。
もうすっかり日も暮れて、辺りも暗くなっている。
ひとまず着替えをしようとそれぞれの部屋に戻り、今日の夕飯は何にしようかなあと考えながら、ジャージを脱いで私服に着替えていたら、隣のサツキの部屋からアヤとサツキの話してる声が聞こえてきた。
「……ところでサツキ、つかぬ事を聞きたいんだけど……」
なかなか聞きにくい声だなー……というか俺、盗み聞きしてどうする。
「ん? なになにー? 突然小声になっちゃって」
「サツキって生理の時、練習とか試合とかどうしてるの?」
……聞くんじゃなかった。聞いちゃいけないことな気がするし。なんか聞いてるだけで気恥ずかしくなってくる。
「あんなに激しい運動なんて生理の時ってなかなかできないでしょ?」
……聞かない方がいいなと思いながら、ついつい聞き耳を立ててる自分が嫌。
「ユッチ先輩に聞いたけど、顔真っ赤にして逃げて、何も教えてくれなかったし」
……ってアヤってそんなこと1人1人に聞いて回ってるのか?
「インターネットで調べたら、薬飲んで生理時期をずらすとか不安なこと書いてあるし。生理来たの私つい最近だし、そういうこと全然知らないくって、どうすればいいのかなーって思ってるんだけど」
まじか? 薬なんて飲んだりすんのか? 怖いなあ。生理って。
というか、アヤって15歳だよな。生理来たの最近なのかアヤって……中学校の保健体育の時に、12歳とか13歳くらい、速い人は10歳には初潮になるとか聞いてたから、結構遅い方なのか。
確かサツキは12歳の時に来てたなー。突然、サツキが駆け込んできて、なんも分からず慌てふためいたことだけは覚えてる。母さんが結局何とかしてたけど。
駄目だ……これ以上聞いちゃいけないとか思いながら、ずっと壁に耳を当てて聞いている自分がいる。
「特にそんなことしないよー? 薬飲むの怖いし。普段はタンポン使ってるー。私、生理の時もそんなに体調変わらないし。アヤボーは結構生理の時体調悪くなるの?」
サツキの声が聞こえた。あ、やっぱり薬は使わないのね。
タンポン……タンポン……タンポンとは何ぞや?
さらにちゃんと声が聞こえないかとぐっと身を乗り出そうとした瞬間、バランスを崩して壁にドシンとぶつかってしまった。
「ううん、ちょっとだけ――サツキ、今の音なに?」
……やばい、ばれた。
「気にしちゃダメだよー。でも、今日1日はヤス兄と話しちゃだめだねー」
「ああ、そっかそっかあ……ヤスお兄ちゃんの変態!」
……ごめんなさい。その日1日、サツキとアヤはほんとに全く会話してくれませんでした。盗み聞きは気を付けよう。