43話:インターハイ地区予選、サポート
女子の100mハードルも終了し、次の時間まで少し間がある。
その間に、昼食を買ってない人は、近くのコンビニに行って買い物したりする。
俺もケンとヤマピョンの3人で、今日の昼を買いにいこうと、コンビニへの道を歩いてた。
マルちゃんとノンキは2人で先に行ってしまったみたいで、短距離の残り2人(名前、何だったかなあ?)と女子組は弁当を持ってきてた。
長距離の中で、俺とヤマピョン、マルちゃんとノンキって完全に分かれたな。
時々、選手の人たちがウォーミングアップの為に走ってたり、ストレッチをしていたりする。
うちの高校の先輩も、偶然ストレッチをしているのを見かけた。
女子400m準決勝に進出したゴーヤ先輩だ。
「ゴーヤ先輩、決勝進出に向けて、頑張ってください!!」
ケンがエールを送る。
「うん、頑張るから応援しててね」
うわ、なんか普通の反応だ。
1年女子って、ポンポコさんを筆頭に、アオちゃん、ユッチと変な人がそろってるから、なんか新鮮だ。
ストレッチを終え、流し(80パーセントの速さで気持ちよく走る事)に入ろうとしてた。
俺たちも昼食を買いに行こうと思ってたんだが、
「いたたたたたた…………」
ゴーヤ先輩が流しをした瞬間、突然うずくまって、足を押さえてうめきだしたのだ。
何が起きたのか、どうすればいいかさっぱり分からなかったが、緊急事態だ!
「ケン、えと、あと、んと、どどどどどどど」
「どどん波?」
「そう、どどん波ー!悟空やっつけてやる!って桃白白かよ!んな訳あるか!?」
「ドドリア?」
「フリーザ様ぁ!お助けをって、ベジータに殺されちゃうよ!?」
「ドド……思いつかん、何かあったか?」
「そうじゃないだろ?どどど、どうすればいいんだ!?」
「落ち着け、ヤス。こう言う時は専門家を呼んでくるんだ。ウララセンセが望ましいな……よし!俺が行ってくる!ヤスはウララセンセが来れない時を考えて、救急セットとユッチを持ってくるんだ!」
「りょりょりょ、りょ、りょーかい!持って来ればいいんだな!」
「そうだ、必ず持ってこいよ!ヤマピョン、ゴーヤ先輩に付いて、色々してあげて!ゴーヤ先輩が何か頼み事するかもしれないから」
そう言って、俺とケンはは走り出した。
大山高校の集合場所に行ったら、ユッチとアオちゃんがしゃべりながら昼食を食べていた。
とりあえず、俺は荷物の中から救急箱を取り出して、それを左手に持った。
そして、ユッチを脇に抱え、持っていく事にする。
「んぎゃあああああ!!!なに?なんなのさあ!?」
「アオちゃん!ユッチ持ってくから!」
「ほえ?あ、はい、どうぞ」
「ボクは猫じゃないい!!!!」
「いってらっしゃいー」
パタパタと手を振るアオちゃんを置いてユッチを抱えて走る。
「放せええええ!!!!」
「ジタバタするな!わめくな!」
「この変態やろお!!」
叫ぶユッチをほかって、ひた走る。
ゴーヤ先輩とヤマピョンがいる所についたとき、まだケンはウララ先生を連れてきてなかった。
「ユッチ、ゴーヤ先輩が怪我したいみたいなんだ。俺らは全く分からんから診てやってくれない」
「いいからおろせえ!!!」
あ、持ったままだった。
ユッチをおろして、ゴーヤ先輩の様子を診てもらう。
ゴーヤ先輩はまだ痛いみたいだけど、さっきよりは落ち着いたみたいだ。
「ゴーヤ先輩、痛い部分はどこですか?」
「……太ももの裏が……こうしてれば体育座りしてればそんなでもないんだけど、歩くと結構痛い……」
「足伸ばすとどうですか?」
「足伸ばすのは痛い……」
「……ゴーヤ先輩、今までもこの部分痛くありませんでしたか?」
「……ちょっとだけ、でも痛くない時もあったし、何とか走れたから大丈夫だと思ったんだけど……」
「ずっと痛かったって事は、足をつったのとは違うかな……」
ほんの少し考えて、こっちを向いた、
「ヤス、氷もらってきて。競技場の救護室に行けばもらえるから」
「ああ、分かった。それだけでいいのか?」
「うん、ここに救急箱もあるしね」
「了解」
そう言い残して、競技場に氷をもらいにいく。
行ったら、結構簡単に氷をもらう事が出来た、いろいろ面倒な手続きが必要かとも思ったけど、そんな事も無いんだな。
戻ったら、ケンとウララ先生も来てた。
「多分、肉離れね。今までも軽度の肉離れの状態だったんだと思うけど、今日の試合で、症状が悪化したみたい」
ウララ先生が症状について説明していた。
「今までの疲れが溜まったのね。残念だけど、今日の準決勝は棄権しましょう。とてもじゃないけど走れない。残りの試合も全部棄権しましょう」
「でも、出たいです……」
「ゴーヤさんはまだ2年だから、来年もある。だから、怪我はしっかり治す事。特に肉離れは、今無理すると、動かす事も出来なくなるよ」
ゴーヤ先輩はがっくりとうなだれていた。怪我とはいえ、後一歩で県大会に出場できるかもしれないのに、棄権しなければいけないと言うのは確かに悔しいだろう……。
「それと、今は祝日で病院がやってないけど、平日になったらすぐに病院に行って。安静にしてたら痛みもひくかもしれないけど、肉離れって実は完治してないものだから」
ゴーヤ先輩はうつむきながらもうなずいた。……こう言う空気は苦手だ!
「あ、ヤス、お疲れ。ゴーヤ先輩、その氷患部にあてて、アイシングしましょう」
やっとユッチが俺に気付いて、俺は氷をユッチに渡した。
ユッチは氷をゴーヤ先輩の太ももの裏の部分にあてている。
「ケン君、ヤス君、ヤマピョン君。応急処置の時はRICEと言うのを覚えておいて」
『RICE?』
ウララ先生の言葉に、俺とケンの声がはもる。
「Rはレストといって安静にする事、Iはアイシング、氷とかで痛い所を冷やすのね。Cはコンプレッション、包帯をきつく巻くなどして圧迫させる事。、Eはエレベーション、心臓より高い所に患部をもってくこと。」
ごめん、英語苦手。英語で語呂合わせしても覚えられん。やる事だけ覚えとこう。
「肉離れの応急処置する時には、これらをする事。出来る限り速く治療した方が症状が軽く済むから、ちゃんと覚えておいてね」
そう言って、まだ審判の仕事が残っているからとウララ先生は戻っていった。
忙しいんだなウララ先生。
その後、俺とユッチはその場に居残り、20分ほどアイシングを行い、ゴーヤ先輩は安静にしてもらっていた。
もう何とか歩けるからと、大山高校の集合場所まで連れて行き、その場休んでてもらった。
「ところで、ヤス。何でボクを抱えてったの?」
あれ?なんかユッチ怒ってる?
「いや、だってケンから救急箱とユッチを持ってこいって言われてて……」
「だからってほんとに持ち運ぶやつがいるかあ!!この変態!!痴漢!!セクハラ親父!!」
「も、もしかして変なとこ触ったか?そうだったら、ごめん」
「もう二度とボクに触れるなよ!もし触れたら絶交なんだからあ!」
「ん?俺とお前友達になれたんだ。嬉しいなあ」
「っ、うるさいうるさい!!さっきのこと絶対なにもしゃべるなよ!」
さ、さすがにこの剣幕は怖い。何か話題転換しないと……!!
「そ、そういやユッチ軽かったなあ……何キロあるんだ?」
「っっっっ!!女の子に体重を聞くなあ!このセクハラやろお!!!」
ガン!と言ういい音が頭からした、救急箱で俺の頭を殴ったらしい…………。
めちゃくちゃ痛い……。
ユッチが殴って去っていった。
……ふぅ、やっと一段落ついたな。すぐに男子の400m準決勝が始まるから、応援に行かないと。
あ、昼飯食い損ねたなあ…………
ちなみに、ケンとヤマピョンはちゃっかり買いにいってしっかり食べてた。
あいつら、ずるいぞ!