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420話:試合前日

今日は5月7日、インターハイ地区予選前日。部活もほどほどに、疲れを残さないために軽く練習して帰宅した。

今は夕飯中、明日勝てるように、げんかつぎも兼ねて、トンカツがメインディッシュ。後はご飯と味噌汁と、煮物としてサトイモの煮っ転がし、ついでにほうれん草のおひたし。


「ねえねえ、ヤスってトンカツは何派? ソース? 味噌? ケチャップ? マヨネーズ?」


「ちょいまてユッチ、マヨネーズはないだろ!」


「何言ってるんだよお。トンカツにマヨネーズってとっても合うんだぞお! エビフライにマヨネーズつけて食べたりするだろお? それと一緒だあ!」


絶対違う! そんな邪道な食べ方は俺は出来ない。


「ちなみに俺としては味噌が好きだなー。味噌カツほど上手いものはない。ソースやケチャップも味噌味の前にはかすんでしまう」


「うわ、ヤス兄ってば食通ぶっちゃってー」


……なんでやねん。今の言い方ってそんなに食通っぽかったか?


「ボクはケチャップソースで食べるのが好きなんだあ」


そういいながら、ソースとケチャップを混ぜて、トンカツにかけ、パクッと肉片をほおばるユッチ。ユッチの食べ方ってホントいいな。すごくおいしそうに食べるし。

食事の時はおいしそうに食べてくれる人が一番だ。


「おいしいねえ、ヤスう。ボク、トンカツ食べてるだけでなんだかとっても勝てる気がして来るんだあ」


「そりゃよかった、俺、ユッチには絶対に勝ってほしいから、そういってもらえるとすっげえ嬉しい」


「またまたあ、ヤスってば、ほんと口が上手いんだからあ」


嘘なんか言ってないぞ、本気でユッチには県大会行ってほしいもん。


「ねえ、明日ってお兄ちゃんもサツキも学校来ないんだよね?」


「そだぞ。俺もサツキもユッチも明日試合だから公欠もらうぞ。アヤは残念だけど、学校に行ってな」


「サツキは別に明日試合でないよね? 何で明日大会に行けるの?」


「私リレーメンバーの補欠だもん。もしも誰かが故障しちゃった時、私が代わりに走ることになるんだもん。行かないわけにはいけないでしょ?」


まあ、確かにその通りなんだけど、実は堂々と学校を休むことが出来るーって喜んでたよな。


「もう、何であたしだけ学校行かないといけないの? あたしもお兄ちゃんの応援したいのに!」


……そんな事言われても。明日は本来は普通に学校がある日なんだから、しょうがないだろ?

心の中で思いつつ、ユッチが作ったお芋の煮っ転がしに箸を進め、口に運ぶ……お、うまい。


「ユッチの料理ってホントうまいなー。俺、ユッチの料理で嫌いだった料理ってマジで1個もないわ」


「ええ? えへへえ。そんな褒めないでよお、照れちゃうじゃんかあ」


「照れるな照れるな、事実なんだから」


ユッチみたいに料理上手な人ばっかだったら、好き嫌いがある子なんて撲滅されると思うんだよな。


「えへへえ、あ、ありがとねえ、ヤスう。ヤスの作ったトンカツもすっごくおいしいよお」


「……お兄ちゃん、そう言えばさ、あたし、日本に来てからずっと前から思ってたことがあるんだけど」


「ん? 何だアヤ?」


「ユッチ先輩ってなんで家にいるの?」


「……」


ま、またすごい質問を。


「ね、ねえヤスう、ボク、ここにいちゃいけないのかなあ?」


そ、そんなことないぞユッチ。別に俺もサツキも、父さんも母さんも全く気にしちゃいないから。アヤも、ここにいちゃいけないみたいな言い方をしなくたっていいのに。


「だって、ユッチ先輩の家ってここからそんなに遠くないんでしょ? 別に毎日毎日家に泊まりに来なくてもいい気がするんだもん」


「そ、それはあ……」


「せめるなよアヤ。学校いくのだってユッチの家から行くのとここから行くのでは30分は家でのんびり出来るんだから」


「それだけの理由でユッチ先輩って家に毎日泊まってるの?」


や、そんな事はないんだけど……言い方まずったか。


「別にユッチ先輩、私はいてくれると嬉しいからいつでもいてくれていいけどねー」


「あ、ありがとおサツキちゃん! ボク、すっごく嬉しいよお!」


「だってユッチ先輩いると、妹がいるみたいな気分になるんだもん」


お、おいサツキ、いくらほんとのことだからって言っていいことと悪いことが……。


「い、いもうとなんだあ……ボク、そんな子供っぽいかなあ?」


ほ、ほら。ユッチのやつ、めっちゃ落ち込んじゃってるじゃんか。明日大会だってのにみんな寄ってたかって落ち込ませちゃってどうするよ。


「な、なあユッチ」


「……なにさあ? どうせボクなんかいらない子なんだろお? ここにいちゃいけないんだろお?」


誰もそこまで言ってないのに。何でそこまで落ち込むんだよ。


「なあユッチ、ユッチが泊まりに来るの嫌だったら、もっとずっと前に俺もサツキも追い出してるって。それをしないって事はユッチが泊まりに着てくれるのが嬉しいからだって。くよくよしてないでさ、明日がユッチにとっての本番だろ? 元気になってないと、結果もついてこないぞ」


「……うん、ありがとお、ヤスう」


ちょっとだけ元気になってくれてよかったけど……我ながら、ちょっとくさいセリフっぽかったな。あんまりこんなセリフは言いたくないなあ。






さて、明日からインターハイ地区予選だ。頑張っていこ。

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カカの天下
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ええじゃないか
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