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418話:こどもの日

今日は5月5日、こどもの日。

世間ではゴールデンウィークだと騒がれているけれど、陸上部では大会間近ということもあり、今日も練習に励んでいる。陸上部員一同、御殿場市にある陸上競技場に集まっている。


「こどもの日というと……ユッチ、何を連想する?」


「かしわもちい!」


「……他には?」


「ちまきい!」


「……他は?」


「かっつお! こどもの日は料理がおいしいひだよねえ」


……さすがユッチ。まさに花より団子な答えだな。鯉のぼりとか兜とか、その辺もちょっとくらい言ってくれればいいのにな。


「子供の日っていいよねえ! 男の子でも女の子でも一緒になって大騒ぎできるしさあ!」


「まさに子供なユッチにとっては最高な祝日だよな」


「なにお!? ヤスの方が図体でっかいだけで、心は子供なくせにい!」


「うっさいわい、心も外見もお子様なユッチには言われたくないわい。その点、俺のほうがしっかり大人だ」


「そんなことないよお、ボクのほうがすっごい大人だあ! ヤスなんて寝癖ぼっさぼさのまま登校しようとするしさあ。高校2年生になったんだから、外見も気にしないとダメだよお」


「いやいや、俺よりユッチのほうが子供っぽいって。ユッチなんてこの前昼飯の時、オムライス食べながら口の周りケチャップで真っ赤にしちゃってたくせに。そのまま教室に戻ろうとしてめっちゃ恥ずかしかったぞ。なあ、ポンポコさんは俺とユッチとどっちが子供っぽく見える?」


「……私から見れば、お前もユッチもどっちもどっちにしか見えないがな」


うあ、俺、ユッチと同レベルなのかよ。


「ユッチ、ヤス、いつまでもしゃべっていないで、そろそろきちんと練習の準備をするように。お前らの行動を見て下級生は真似をする。プライベートでは別に今のようにふざけててもいいが、練習中だけは真面目に練習をしてくれないととても困る」


……はい、ごめんなさい。

ユッチもそれを聞いて反省したのか、いそいそと練習をするためにアップを開始した。


「ところでヤス、きちんと早朝練、朝練、昼練、夜練、夜中練をしているか?」


「ポンポコさん、そんなに出来るわけないじゃん!?」


「ちょっとした冗談だ」


ポンポコさん……大真面目な顔で冗談を言わないで欲しいっす。冗談が冗談に聞こえなかったっすよ。


「だが、朝練くらいはきちんとやっているのだろうな? 後輩指導は必ずやらなければならないことだが、自身の練習もきちんと行わねば、勝てるものも勝てない」


……真剣な問いかけに目をそらす俺。


「……まさかヤス、朝練すらやっていないというのではないだろうな?」


「いや、やってるよ!? ……ちょ、ちょっとだけ」


「ヤス、ちょっとくらいとはどのくらいだ? 怒らないから正直に言え」


怒ってるっす。ポンポコさん、既にかなり怒ってるっす。


「ええと…………ちょ、ちょっとだけやってるっすよ。朝起きて、ちょーっとだけ走って……ラジオ体操して……」


「だから、ヤスの言う『ちょっと』とはどのくらいなのだ? ちょっとという言葉ではなくて、具体的な数値を使って言ってくれ」


「す、数値っすか、だ、大体四捨五入して……」


「するな! 具体的に正確な値で言ってくれ。具体的な数値も分からないような走り方をしていたのか? それでは全く意味がないではないか」


い、いや……時計は確かにつけてたから、正確な時間は分かるんだけどさあ……。


「だ、大体朝20分……朝の6時から6時20分の朝走ってます……」


こ、怖いっす。ポンポコさん、前、1時間は走れって言ってたんだもんな……全然そこまでは走れてないもんな……。


「ふむ……まあ、そんなものだろうと思っていた。ヤスの生活ややる気を聞いていて、1時間や2時間も走るなどという事が出来るとは思っていなかったからな」


……おお? も、もしや、怒っていないのか?


「ところでヤスの家ではいつもユッチを泊めているそうだな。ヤスとユッチは付き合っていたりはするのか?」


……そ、それが何か関係あるんだろうか? ポンポコさんは何を考えているかさっぱりわからないから返事をするのが怖い。間違えた返事をするとめっちゃ起こられそうだしなあ。


「べ、別に全く付き合ってないっすよ。家に泊まるったって、ユッチはサツキの部屋で寝るだけだし」


「何故どもる?」


……いや、やましいところがないのに、その目でにらまれるとなんだか緊張してしまうんすよ。


「ふむ……付き合っていないのならば遠慮する必要はないな。私がヤスの家に行き、ヤスの生活を監視してやろう」


「は!?」


……なんかイヤーな言葉が聞こえたのだが……。


「監視するのだ。そうすれば合宿時のように朝練も出来るではないか」


……とても嫌だ。あんな生活は合宿だけだから出来るんす。あんな毎日が続くのは嫌でたまらないっす。


「というかさ、別に後輩指導って俺がやらなくてもいいんじゃないの? そうすれば俺の練習時間確保できるし」


「何を言うか、ヤスが指導しなかったら誰が指導するというのだ? 他に誰も指導できそうな人がいないだろう?」


……まあ、そりゃそうだけど。


「そういや、短距離指導は誰がやってんの?」


「ウララ先生がやっているぞ」


……短距離ずるいっす。何故短距離には指導者がいるのに、長距離には指導者がいないんだよ。


「前にも何度か言ったが、ないものねだりをしていても仕方がない。出来る範囲で出来ることをやっていくように頑張れ」


……それはそうなんだけど……これからやっぱり誰か、専門の指導者がないと、やっていけないような気がする。

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カカの天下
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