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417話:オセロ中

今日は5月2日土曜日。ゴールデンウィーク1日目……禁欲生活を始めてようやく1週間。禁欲生活がここまで大変だとは思わなかった。

朝や昼、学校に行ってたり部活していたり、夕方過ぎてサツキやアヤと話してる時間帯までは全く持って気にならないんだけど、夜、自分の部屋で1人になったときについ意識がそっちに行くと、そのままエロ本を読みたくなって……ケンのやつめ、3日3週間3ヶ月3年なんて大嘘じゃないか。3日目も4日目も5日目も6日目も、ずっとずっときつい……今のところは我慢しているが……あかん、俺ってこんなにエロかったのか。


ふと時計を見てみるとようやく20時になったところ……今日1日、これからがしんどいんだよなあ。

サツキとアヤは今風呂に入ってていない、やるなら今がチャンスだったりはするのだが……あかんあかん、我慢我慢。


「うう、うう、うう、うう……がるるるるるる……」


鎮静剤でも打ってもらった方がいいかもしれん。俺は今、ケダモノになれる自信があるな。


「ど、どうしたんだあ? 今日のヤスなんだか変だぞお? あ、変なのはいつものことなんだけど、いつにも増して変だぞお」


ユッチが居間でゴロンと寝転んで漫画を読みつつ俺に質問してきた……そう言えば、ユッチがいたな。残念だけど、ユッチがいちゃやろうにもやれないな。


「……ユッチ、俺は普通だ。とても普通だ……」


あかん、自分を抑えていないと怒鳴ってしまいそうだ。もしくは壊れてしまいそうだ。


「何か不機嫌だねえ……そういう時は思いっきり笑うと気分がすっきりするよお! ほらあ、笑って笑ってえ!」


笑っても欲がなくなるとは思えないのだけれど……それでなくなるならやってみてもいいか。


「がっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは! はぁ……」


うーん……どれだけ笑ってもほとんど意味がないっす。


「な、なんだよお。ボクの顔見てため息なんかついてさあ。もうすぐ大会なんだし、もっともっとテンションあげていかないとダメだろお?」


「ああ、ごめんごめん。別にユッチの顔を見てため息をついたわけじゃないから安心しろ。ってか、大会までユッチみたいにテンションをあげてたらばてる」


「なんだよそれえ。ヤスさあ、イライラしてるんだったら、なんだか気がまぎれることやってみたらあ?」


「んー……気がまぎれることって何だろな? 昼間だったらどっかに出かけて遊んだりしててもいいんだけど、もう20時だしなあ……やっぱりゲームをするくらいしかないかな。ユッチ、オセロかチェスか将棋かどれか出来るか?」


「オセロなら出来るよお! 今からやるう?」


「ん、んじゃ相手をしてくれ」


オセロは本当はとても奥が深いのだが……ユッチの出来るというのはどのくらい出来るんだろう。








盤面にオセロを並べて、ゲーム開始。


「それじゃ、ボクが黒だからねえ!」


「ういうい、チャッチャと叩きのめしてやるからさっさと置けよ」


「な、なんだとお! ボクの強さをなめるなあ!」


……



「でやあ、これでほとんどのコマが黒になったあ! へっへえ、ヤス、ざまあみろお!」


「……ま、まあいいけどさ」


しょ、初心者なんだねユッチは……俺もたいしたことはないけど。

俺の番か……ここにしよか。


「うっわあ、ヤスってばしょっぼお! 1個しかとらないのお? もっとガバーッととりなよお!」


「……ユッチ、『1石返し』という言葉を聞いた事はないか?」


「いっせきがえしい? なにそれえ?」


……ま、まあ知ってる人ってあんまり多くないんだよな。


……。


「ここは……うんうん、ここが一番取れるねえ」


「うおぃ! そこだけは置いちゃダメだろ! どんな初心者でも、X打ちだけは厳禁だろ!」


「エックスうちってなんだあ? そんなのはじめて聞いたあ」


「X打ちって言葉は知らなくても、角をとられないようにオセロを打つのが定石だろ? それだけは覚えようよユッチ!」


「うっわあ、知ったかぶっちゃってえ。ヤスってばやな感じい。みてろよお、ボクがこのまま大差で買ってやるんだからあ!」


……ま、まあ勝てるもんなら勝ってもらおうか。


……。





……。


「う、うう、うううう……」


残り枚数は4枚、さっきから3回連続でユッチにパスをさせて、ひたすら白が盤面を埋め尽くしていく。

あそこのX打ちが完全に勝敗を決めたよなあ。


「ヤスう……さっさと打てよお。うう……うううう……ひぐっ……」


何で涙を流す……。俺がものすごい悪者みたいじゃないか。


「なあユッチ、こっから俺がここに打てばユッチが勝てるんだけど……」


「そんなことして勝ったって全く嬉しくないいい! 敵の情けは受けないんだあ! やるならやれえ!」


……涙を流しながら言うセリフじゃねえよそれ。


「んじゃ、情けをかけるのはやめて、ここを打ってと。で、ユッチはパスだからまた俺だな。ここに打って、あ、次もまたユッチがパスだな。んじゃこっちに打って……」


「ぐずっ……ひぐっ……ああ、うう……」


「あ、最後はユッチ打てるな。どぞどぞ」


「ヤスのばかあ……」


……涙を流し続けながら最後の一枚をユッチが置く。ひっくり返るのは1枚だけ。数えるまでもなく、俺の勝ちだというのが分かる……。


「うん、ユッチ、ありがとな。いい気分転換になったよ」


「うううう! も、もう一回だあ! 次は絶対ボクが勝つんだからあ!」


まあ、言うと思ったけど……。





「ううう……」


2回戦、また盤面は白、白、白。俺が白で一色に染めている。


「ま、まあ、こんな時もあるよ。気にすんなユッチ」


「も、もう一回! 次、次こそはボクが勝つんだあ!」


まだやるんですかい……。




「うう……」


3回戦、真っ白になった盤面。64対0の盤面なんて初めて出来たなあ。ちょっと感動だ。


「つ、次はボクが白になるんだあ! きっと白になればボクが勝つんだからあ!」


「はいはい……」






「おお、感動だ。2回連続完全試合なんて中々達成できないよ」


今回は49対0。途中でユッチの打つところがなくなった。


「うううう……」


「うんうん、ありがとなユッチ。とてもいい気分転換だった」


「ま、まだまだあ! もう1回だけやろお!」


……またかよ。




「も、もう1回だけ! これで最後にするからあ!」


……もう20回ぐらいやっているんだが。1回も負けてあげない俺も俺だけど。サツキとアヤも途中で観戦に来てたけど、飽きてさっさと眠りに行ってしまった。


「後1回だけ! 1回だけえ!」


なんだか小学校の頃の国語の教科書に載ってた、戦争中のちっちゃ名女の子を思い出すな……ええと……ああ、そうだそうだ。『一つの花』ってやつだ。


「はいはい、後1回だけな」


……そろそろ負けてあげよう……。



「あ、後1回お願いい!」


馬鹿か俺は……何で負けてあげなかったんだろう……眠い。

こんばんは、ルーバランです。


負けず嫌いはほどほどに(^^


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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