41話:インターハイ地区予選、400m
まずは、女子400mの予選だ。
出場しているのは2人だ。元々女子の方が少ない。選手は3年が4人、2年が2人、1年が2人。
来年、女子の選手は、1、2年あわせて4人しかいなくなる。
ぎりぎりでリレーを組める程度しかいない。
きっついなあ……。
先輩は4組目と5組目に出場する。
1組目2組目が走り終わった。
400mってスタート地点がバラバラだから、どの人が先頭を走っているのかいまいち分かりにくいな。
「ヤス、さっきから、5レーンの人が勝ってるな」
お、ケンもそう思ったか。レーンって言うのは選手が走るコースの事な。1レーンが一番内側で、8レーンが一番外側だ。
「ああ、俺は次くらいは別のが来るんじゃないかって思う。俺の予想では7レーンだ」
「そうか?2回続けて5レーンなんだ。今度も5レーンな気がしないか?俺は5に賭ける」
「よし、ケンは5だな。俺は7だ、7に賭ける」
「ふーん……そうだ、ヤマピョンもどっかに賭けないか?」
お、ヤマピョンを巻き込むんだ。ヤマピョンはどこに賭けんだろ?
「………え……?」
「どこが1番になるかだよ。先輩が走ってる時は、応援しないといけないけど、それ以外の時はこう言う事しててもいいじゃんね」
うーっ、と唸りながら考えてる。ちょっとして手をあげて、指を4本立てた。
「………」
「そっか4レーンか。ケン、当てたらどうする?」
「うーん、外したやつが、来週当てた人の名前に必ず『様』をつけるって事で、」
「OKだ」
こくこく。とヤマピョンも合意のサインを送る。
バン!
3組目がスタートした。
7レーンの人は、いいスタートを切ったように見える。外側を走っていて、前の方からスタートしてた8レーンの人に100m付近で追いついてしまった。
よし、このままならいける!頑張れ!7レーンのお姉さん!
250mあたりまでは先頭を走っているように見える。
このままいけばトップは確定だ!
100mを切った。
…………あれ、何でそんなにスピード落ちてるの!?そのままじゃ抜かれるよ?あ、5レーンの人に抜かれた…………4レーンにも抜かれた。
どんどん抜かれてってるじゃん!どうしてそんなに一気にばててるのさ!?
「おっし、勝った!また5レーンが来た!」
負けた……結局7レーンの人は5位に終わった。ラストのばてっぷりはなんだったんだろう?
「来週は2人とも『様』付けでよろしくな!」
「……ちっ!わかったよ」
うんうんとヤマピョンもうなずいてる。…………ヤマピョンってケンの名前読んだ事あったっけ?いや、全くないぞ。
って事はこの罰ゲームって俺のみの適用じゃん!何だよそれ!
俺が意気消沈してる間に、4組目の先輩がスタートしようとしてた。先輩は3レーンだ。
……応援しないと。
「みんな、せーのでいくよ、せーの」
『ゴーヤー!!』
通称、ゴーヤ先輩。2年の先輩で話した事は無い。今後も話す機会は無いだろう。
俺はこの場であだ名で叫ぶのって恥ずかしいのだが、みんなどうなんだろうな?
バン!
スタートした。先輩は3レーンからなので、前を走る人を追う展開になる。
200mを過ぎても、まだ4コースを走る選手に追いつけない。
まずくないか?このままじゃぬけずに終わるぞ。
300mを過ぎた。
1、2レーンの人は追いつけないまま遅れはじめ、
7、8レーンの人はもう遅れて、とっくに追い抜いている。現在第4位。
後2人抜かないと、確実ではない。
お、6レーンの人が遅れてきた。後少しだ、350mの地点で…………追いついた!そのまま行け!行くんだゴーヤ!
結局、そのままゴールした。自分の応援席からではどちらが先にゴールしたかが分からなかった。
…………。
お、結果がでた。先輩は……3位だ!最後抜いてたんだな!
ゴーヤ先輩のタイムは61秒82。いいタイムなのか悪いタイムなのか俺には判断が出来ない。
今回の順位は4レーンの人が1位で、5レーンが2位。
ここまでが準決勝に確実に進出できるが、ゴーヤ先輩は3位なので、結果待ちだ。
5組目の先輩も8レーンで走ったが、結果は5位だった。タイムは65秒85。準決勝にはまず残れないだろう。
5組目までの順位とタイムは電光掲示板と言うのに表示される。でっかいテレビみたいなやつだ。
今、ポンポコさんが、全員の順位を割り出している。
「いけたぞ!ゴーヤ先輩準決勝進出だ!」
おー、ゴーヤ先輩、やったな!
俺だけじゃなくて、みんなも喜んでいる。
3位以下の中で、ゴーヤ先輩のタイムは、3番目。全体だと13番目のタイムだ。
後1人抜かないと県大会には出れない…………県大会って厳しいな。
男子の先輩たちも3人挑んでいた、こちらも1着しか準決勝に進めないと言う厳しい勝負だった為、準決勝にいけたのは2年生の先輩ただ1人だ。