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407話:新入生歓迎会

「それでは、新入生が無事11人も入部してくれたことをお祝いして、乾杯!」


『かんぱーい!』


ウララ先生の音頭とともに、みんなで乾杯をする。乾杯の場所は去年と同じファミリーレストラン。

……これからウララ先生が大山高校にいる間はずっと毎年のようにここにお邪魔することになるんだろうなあ、大変だ店員さんたち。

そんなことを心の片隅に重いながらゴクゴクとオレンジジュースを飲む自分……うむうむ、うまい。けど、目の前の人物のせいで思ったほどにはおいしく感じられない。


「……なによ?」


「別に」


「ならじろじろ見ないでよ、この変態」


……運がない。なぜこれだけ大勢いる中、同じ席にシイコが座ることになるんだよ。他にも1年生はたくさんいるのに。

自分のテーブルには1年生がシイコとカケル、2年生が俺とユッチの計4人が座ることになった。シイコはずっと不機嫌な顔をして俺をにらみつけているし、何故かユッチもシイコに似たようなブスッとした顔をしている……何でこんな不機嫌な顔をしてるんだよユッチのやつは。


「なあユッチ、どうかしたか?」


「別にい。ヤスには関係ないだろお」


……ユッチ……やっぱりめっちゃ不機嫌じゃんかよ。何で俺に対していきなり怒ってるんだよ。


「なあユッチ、なにかを俺に怒ってるだろ?」


「怒ってないってばあ! もお、しつこいなあ」


「いやいや、じゃあ何でそんな不機嫌な顔してんだよ」


「あ、ねえねえ、はじめまして! 名字は河辺、名前がゆう。みんなにはユッチって呼ばれてるんだよお。よろしくねえ!」


うわ、完全に無視された。


「あ、はじめまして、私はシイコ! よろしくユッチ!」


あれ? ユッチとシイコって1回くらいテニスの大会で会ったことなかったっけか? 確かユッチ、1回応援に来てるし。

……まあ、覚えてなくてもしょうがないか。


「う、うん? よろしくう? あ、あれえ?」


「……シイコ、お前って勇気あるなあ。礼儀知らずというか」


「なにがよ? 別にあんた以外にひどいことなんてしてないでしょ?」


俺以外の先輩にもタメ口で話すというのは十分ひどいと思う。俺は敬語を使ってもらうのを諦めたけど、他の人にはせめて敬語を使って欲しいっす。


「ところでユッチ、中学の頃は何やってたの?」


けど、どうやらシイコは敬語というものを知らないらしい。中学生の頃に色々言われなかったんだろうか。


「ボク? ボクは中学からずっと陸上だよお。今年は絶対に東海大会に行きたいんだあ!」


うんうん、東海大会出場できるよう頑張れ。陸上部の中で一番頑張ってるんだから、ユッチには結果を出してほしいな。


「ふうん……ユッチはずっと陸上部だったんだね。きっとすごく速いんだろうね」


「ううん、ボクなんて下手の横好きレベルだよお。もっと速くなりたいんだけど、全然だあ……そういえば、シイコは何をしてたんだあ?」


「私、私は中学時代はテニス部だったよ。向こうの席についてる双子の妹のエリとダブルス組んでて、これでも一応東海大会も出場したんだから」


「ええ!? シイコってすっごお! ほんとすっごお! なんでそんなに上手いのにやめちゃったのさあ?」


ユッチ、サツキだって東海大会に出場したんだぞ。サツキにも一回くらいすごいって言ってくれ。


「えーと……別のことをやりたかったってだけなんだけどね。別にたいした理由はないよ」


「うっわあ、うっわあ、すっごいなあ。シイコってすごいんだねえ!」


……ユッチ、そこまでびっくりする事はないだろうに。過去の栄光なんてどれだけあったって意味はないんだよ。大事なのは今なんだぞユッチ。過去の栄光にすがった瞬間、人は衰えてしまうものなんだ。今を一生懸命に生きていれば栄光はこっそりついて来るんだぞ。


「……ところで、カケルはいつまでそこで空気になっているんだ? 会話に加わらないと」


「そ、そうなんですけど。なかなか加わるきっかけがなくて」


……引っ込み思案なやつだ。さっきから口を挟もうと『あっ』とか『うっ』とか言いながら、結局言いそびれてそのたびに空になったウーロン茶をちびちびとすすり続けている。


「ところでユッチって何組にいるの? 私1年生の教室大体回ってみた気がするんだけど、ユッチを見たことないのよね。私顔覚えるの結構得意なのになー」


「…………あん?」


ユッチ、声もキャラも変わってるよ!? なんだそのヤクザみたいな言い方は。


「だから、ユッチは何組なのよ? 今度ユッチのクラスに遊びに行くから」


あああ、ユッチの空気が変わってるのに気づかずに駄目押しをしちゃって。ユッチの顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「ボクは高校2年生だあ! シイコのばかあ!」


「えっ!? あ、う、す、すみませんでした!」


……敬語を使ってなかったのは同学年だと思ってたからなのか。あれ? じゃあ俺に敬語を使わないのももしかして。


「シイコ、もしかして俺のことも1年生だと思ってるのか? 俺も高校2年生だからな」


「分かってるわよ、この変態」


……俺、シイコのこと嫌いになりそうだ。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
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