405話:10回言って
今日は4月19日日曜日。ごろ寝をする俺とサツキをどうにか外へ連れ出そうとするアヤ。それでも動かない俺とサツキ。
がっかりして俺の隣で不貞寝をするアヤ……なんか悪いことをしたかな。けど、アヤがどんだけ外で遊びたかろうが、それでも俺は日曜日、基本的に寝て過ごしたいんだ。世の中のお父さんはみんなきっとそう思ってるさ。
不貞寝しているアヤを尻目に、適当な雑談をしながら過ごす俺とサツキ。
「ヤス兄、ピザって10回言ってみて」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!」
「じゃあここは?」
「ひじ」
「……ヤス兄、面白くないよー。きちんと引っかかってよ」
や、めっちゃ有名じゃんその遊び。自分の肘をゆびさしときながら相手に膝といわせるゲームだろ?
「サツキ、俺をはめようと思うのなら、もっと難しそうなのを言わないと引っかからないぞ」
「じゃあねじゃあねー、次は『キャンパス』って10回言ってよ」
「キャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパスキャンパス!」
「角度を測る道具は?」
「コンパス!」
「ぶっぶー、分度器でしたー」
……くっ、言われてみれば確かに。なんかひっかかるとすごいムカつく。
「ヤス兄ってさー、引っかかったことあるやつだけ引っかからなくなっただけでしょ? 初めて聞いたやつは全部引っかかってるでしょ?」
「そ、そんなことないぞ? 他にも引っかからなかったやつはいくつもあるぞ」
「へー……例えば?」
「…………」
「ないんじゃーん、ヤス兄ってば見栄はっちゃってー」
うるさいよ、ってかそんなにわざわざ俺の引っかかりやすさを暴露しなくたっていいじゃんか。
「じゃあねじゃあねー、ヒラヤマって10回言ってみて」
ヒラヤマねえ……どんな引っ掛けなんやろ?
「ヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマヒラヤマ!」
「世界で一番高い山は?」
「…………ヒマラ……じゃなくて富士山!」
どうだ! 引っかからなかったぞ! ヒマラヤは山じゃなくて山脈だもんな。そういうひっかけだろ。
「ぶー、エベレストでしたー。ヤス兄、富士山は日本で一番高い山だよ?」
「…………ああっ!」
「ヤス兄、馬鹿でしょ?」
うるさいうるさい! エベレストなんてそんなに簡単に出てこないよ! 俺が悪いんじゃない! そんな問題を考えたやつが悪いんだ!
「ヤス兄ってば必ず引っかかってくれるよねー。そういう人って貴重だよ。いつまでも引っかかってね」
褒め言葉じゃねえ。何べん自分の中で反復してもサツキのセリフは褒め言葉に聞こえねえ。
「なあサツキ、なんか俺もムカついたから、サツキにクイズ出していいか?」
「どぞどぞー、私これに引っかかったことないんだよねー」
ふん、そんなことがいえるのも今のうちだ、後でほえ面書くなよ。
「サツキ、コーチンって10回言ってみて」
「へえ? そんな引っ掛け問題があるんだー? 私それ初めて聞いた」
「俺の奥の手の10回言ってみて問題だからな」
「コーチンコーチンコーチンコーチンコーチンコーチンコーチンコ……」
おしおし、サツキ、気づいたな。今更顔を真っ赤にさせても遅い。
「ま、サツキってば卑猥な言葉を連続させちゃってー、俺はそんな子に育てたつもりはありませんよ、お兄ちゃん、悲しい!」
「死んでしまえ! この馬鹿ヤス兄!」
「ま、今更純情ぶっちゃって、このお・ま・せ・さ・ん♪」
「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! この馬鹿ヤス兄!」
……ああ、サツキをからかうって楽しい。真っ赤にさせたサツキの顔が余計にかわいいし、一石二鳥な作戦だな。
「ねえねえおにいちゃん! あたしもそれ参加していーい?」
サツキをからかって遊んでいたら、アヤも参加したくなってきたみたい。さっきまで不貞寝していたのに、いつの間にか目を輝かせている。
「もちろんかまわないぞ。けど、アヤってフィリピン生活長かったから、こういう言葉遊びってあんまり知らないんじゃないのか?」
「大丈夫大丈夫! とっておきのを2つ知ってるんだからー!」
へえ……どんなんなんやろ? フィリピン特有の何かなのかな?
「それではアヤからおにいちゃんへの出題です! 『愛してる!』って10回言ってみて!」
「あ、愛してる?」
なんだよそれ? それホントに10回言ってみてクイズの問題なのか?
「そうそう、『愛してる』! ちゃんとした問題なんだから、ちゃんと言ってねー。これはあたしの目を見ながら言うんだよー」
なんだそれ。余計に怪しいと思いつつも、どんな引っかけなのか気になるので、口に出して言ってみる。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる!」
「はふぅ……後20回!」
え? まじで? 言わないといけないの? アヤの目を見ながらこのセリフを言うのって結構恥ずかしいんだけど。
「ほらほら、早く言ってよ。問題が出せないでしょ?」
く、そんなこと言われたら、どんな問題なのか気になるじゃないか。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる!」
「はふぁ……あたしもおにいちゃん大好きー!」
そういってぎゅっと抱きついてくるアヤ。ふんわりとした感触が伝わってくる……。
「って違うだろ!? 問題はどこ言った!?」
「いいのいいの、今のが問題なんだからー」
……わけが分からないっす……そのうち理性が崩壊するからやめて。
「ううん……今はこれで満足したげるー」
そういうと、抱きつくのをやめて離れるアヤ。ギューッとされた感触が残ってて、なんだかほっとしたような残念なような複雑な気分。
「それじゃ次の問題! 『外へ行こう!』って10回言ってー」
……今回のはまともな問題なのか?
「アヤ、それも問題じゃないでしょ? ちゃんとした問題作ってよ」
「サツキ、難癖つけちゃダメだよー、ほらおにいちゃんおにいちゃん、早く10回言って」
「外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう外へ行こう!」
「今あたしが遊びに行きたいのは?」
「…………外?」
「せいかーい! それじゃおにいちゃん、外へ遊びに行こうよー!」
…………はいはい、ホントに外に遊びに行きたいんやね。
というわけで、重い腰を上げて、アヤとサツキと俺の3人で公園に遊びに行ってきました。まあ、たまには外で遊びに行ってもいっか。
おはようございます、ルーバランです。
下記ページからいくつかお借りしました。
http://aruhenshu.exblog.jp/4132641/
10回クイズで検索すれば色々出てきます。
それでは今後ともよろしくです。