403話:勧誘活動
今日は4月15日水曜日……月曜日に来たメンバーは全員陸上部に決めましたって言ってくれた。
合計8人、女子がサツキ、アヤ、シイコ、エリ、ユッコ、キョン、リカちゃんの計7人。男子はまだナベ1人。
……男子をどうにか頭数を入れないと……本気でリレーも駅伝も出られない。昨日も一昨日も、ポンポコさんと俺と2人で陸上部を勧誘してたんだけど、誰も陸上部に連れてこられなかった……残念。やっぱり陸上部ってマイナーだからなんかなあ……。
こうなったら強硬手段で、全ての教室に陸上部の勧誘をしてまわることにした、俺の相棒はサツキ。ポンポコさんはユッチを相棒にそれぞれのクラスを回る。
今は昼休みの最中。少しずつ仲良くなっていったクラスメイトたちが机をくっつけあってお弁当やおにぎりを食べている、そんな初々しい風景がクラスで見られる。
……おしおし、ほとんどの生徒がいるな。あ、シイコとエリがいる。シイコとエリはこのクラスかー。
「おし、サツキ、行くぞ」
「らじゃー、ヤス兄」
ガラガラガラッとドアを開けて勢い欲は言っていく俺とサツキ。1年生のほとんどは何事かと顔をこちらに向ける。
「どーもー、近藤康明、通称ヤスです!」
「どーもー、近藤五月、通称サツキです!」
『2人あわせてコンドコンドです!』
「なんかコンビ名のつけ方が適当だねーヤス兄。コンドコンドって名字を取っただけじゃん」
「コンビ名は分かりやすい方がいいんだよサツキ。ますだおかだもおぎやはぎも品川庄司も名字を取っただけのコンビ名じゃん。こういう名前にしたほうが名前覚えてもらえるし。俺、ますだおかだだったらピンでも名字分かるけど、サマーズとかクリームシチューになるとどっちがどっちの名前かわかんねーし」
「そんなコンビ名なんてほとんどないってば。もっとひねったコンビ名にしないと」
「むぅ……そうか。ちょっと考えないといけないな。ところで、俺は陸上部なんすよ」
「突然強引に話を変えたねヤス兄」
「うるさいサツキ。1年生の皆さん、陸上部に入ってみませんか?」
「しかも突然勧誘を始めるし」
「何で茶々を入れるんだサツキは!? さつきだって陸上部に人がほしいだろ?」
「女子は今年7人も入ったからもういいかなーって思ってる」
「うああ!? サツキってば既に勧誘の意思なしじゃん!?」
「だって男子はあんまり私に関係ないしねー」
「あうう……連れてくる相手間違えたー……男子はまだ1人だけなので、どんどん募集してます。高校から陸上を始めても全然遅くない!」
「腕立てが28回しか出来なくても、このヤス兄が長距離では一番速いんです、今なら簡単に長距離エースの座が奪えます」
「サツキ、余計な事いわない! 俺に勝とうと思うなんて百年早いっす」
「どんなに長く見積もっても3ヶ月だねー」
「いやいや!? 3ヶ月で負けるって俺、どれだけ弱いのさ!?」
「陸上部にはフリーの女子がたくさんいるので、女子と話したことないって言う気弱な男子、来てみると運がよければ彼女が出来るかもしれません」
「部活は合コンじゃないぞサツキ……ってか、新入部員ってフリーな女子ばっかなん?」
「彼氏いるのはユッコだけって聞いてるー。シイコは卒業式の日に告白して玉砕したって聞いたし」
「サツキ、言うなー!」
……シイコ、ご愁傷さまっす。
「くそー、あの変態には知られたくなかったのに」
……シイコ、ボソッと変態とか言うな。
「と、こんな感じで和気あいあいと陸上部は活動してます。よろしければ見に来てください」
「無理矢理まとめたねー、ヤス兄」
「うっさい、サツキが暴走したからだろうが。それでは次はまた陸上部の部室で会いましょう!」
『ありがとうございましたー!』
自分の担当分である1年1組、2組、3組をサツキと順番にこんな感じで回った。これだけ宣伝すれば、陸上部に興味を持った人が1人か2人来てくれるだろう。
そして放課後……新入部員が来ないかなー、せめて見学くらいは来てくれないかなーって待っているのだが、いつまでたっても新入部員が現れない。来るのは入部を希望してくれている8人だけ。
「サツキ、来ないなー」
「来ないねー、やっぱり勧誘の仕方が悪いんだよ。勧誘は網にかけるようにやるんじゃなくて、一本釣りするようにやらないと効果ないんだと思うよー」
ふむ……1本釣りか。
「アオちゃん、色仕掛けで何人か釣ってこれないっすか?」
「馬鹿ですかヤス君?」
にっこり笑いながら全否定された。
「や、でもこうアオちゃんのフェロモンに釣られてふらふらと陸上部に入ってくる後輩もいるかもしれないじゃん」
「ホントにヤス君って頭が年がら年中春ですよね」
……くああ、なんかムカつく。必死こいて勧誘してるのに、にっちもさっちも行かない俺の思いを少しくらいは受け取ってくれよ。
「シイコ、玉砕してきてくれ」
「玉砕って言うな! 誰があんたなんかの命令を聞くもんか! クラス中にばらして! あの後クラスメイトの生暖かい視線がつらかったわよ!」
「俺に言うな俺に。サツキに言えよ」
「ヤス兄が言えっていったんだもーん」
「言ってないし!」
嘘を言うな嘘を。
……その後も、待てども待てども陸上部に人は来なかった……。残念、また明日、勧誘をがんばろー。
おはようございます、ルーバランです。
ラグビー部やアメフト部ってなんであれだけたくさん人を集められるんだろう? といつも不思議に思ってました。今でも理由は分かりません。
それでは今後ともよろしくです。