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399話:あの姉妹、再び

今日は4月13日月曜日。今日から1週間、仮入部期間。1年生の勧誘のために、各部活が趣向を凝らす期間。

わが陸上部は東海大会出場に向けて、3年生には集中してもらおう、と全員で話し合った結果、勧誘をしたり、仮入部に来た1年生の面倒を見るのは俺とポンポコさんの2人となった……なんでやねん。


「怒るなヤス、ヤスにはまだ来年がある。3年生の先輩達は今年がラストチャンスだ。特にゴーヤ先輩、キビ先輩、マー君先輩、ボーちゃん先輩は十分に県、運がよければ東海を狙える実力だ。出来る限り周りでサポートしてやりたいではないか」


「まあ、そだけどさあ。んじゃなんで俺とポンポコさんだけなんよ」


「面倒を見るのは嫌か? ヤス」


別に嫌じゃないけどさ。


「なんか俺は上の大会狙えねえよって言われてるみたいじゃん」


「気にするな。ヤスも運がよければ、ぎりぎり、万が一、億が一くらいの確率で上の大会は狙えると思うぞ」


……ものすごい、お前なんかじゃ上の大会は狙えないって言われてる気分だ。


「ってかさ、1人くらい短距離でも面倒見てくれる人がほしいよ」


「面倒を見る人がいないのだから仕方ない。面倒を見れそうなほかの2年といえば、ケンとユッチとアオちゃんだが、3人ともリレーメンバーだ。1年生の面倒を見ていてリレー練習ができなければ本末転倒だろう?」


そうっすね、仕方ないのは分かっている。だがなんか悔しい。

ついさっきまでポンポコさんと2人で1年生のところの校舎を回って適当に勧誘してきた。今は練習義に着替えて、これから来る1年生を待っている。


「ところでポンポコさん、どんな1年生が来て欲しい?」


「私か? ふむ……そうだな、実力のある人がほしいな」


「あれ? 自分で1から鍛えるのが面白いみたいなこと言ってなかった?」


「それはヤス1人で十分だ。ヤス1人で十分楽しませてもらっている。逆に、お前がもう1人いると思うとぞっとする。こんなに手のかかる奴は1人で十分だ」


ひでえな。俺、そんなに手がかかるような人になったつもりはないっすよ。


「はろー、ヤス兄。入部希望者2人連れてきたよー。この前話してた、ヤス兄のことを知ってる2人だよー」


あー……結局誰のことかわかんなかった2人っすか。


「お久しぶりです、サツキの変態兄さん」


「サツキに誘われて陸上部に来たっすけど、私らの近くに近寄らないで欲しいっす」


……なんでいきなりそんなことをいわれにゃいかんのだ。俺なんかしたか?

サツキに声をかけられて後ろを振り向くと、サツキに並んで2人、顔のよく似た女子が並んでいた。どこかでこの2人には会った気がするんだけど、どこだったっけな。


「ヤス兄ヤス兄、テニスの大会で対戦相手だった2人だよ。ダブルス3にいた2人」


……ああ、いたいた。変な名前の姉妹。名前はえっと……。


「なあ、お前らって、名前なんだったっけ?」


「話しかけないでください。話しかけられると妊娠させられると聞きました」


……俺、どんなんやねん。病原菌か何かっすか? ってかサツキもさ、後ろで笑ってないでちょっとくらいフォローしとくれよ。


「……ええと、いくら女子で後輩でも、俺怒るっすよ? この……おかしい姉妹だっけ?」


「オカ姉妹っす! 間違えないで欲しいっす!」


「ああ、そだったそだった。おかしい姉妹、略してオカ姉妹の2人だろ?」


「違うっす! おかしいのは椎子姉だけっす! 私は普通っす!」


ああ、思い出した……岡椎子オカシイコ岡恵里オカエリって言うかわいそうな名前の2人だったな。確か、オカシイコが姉でオカエリが妹。

『おかしいのは椎子姉だけっす』って言ったオカエリさんは、椎子姉にハリセンで後頭部をはたかれている。……オカシイコさん、そのハリセンはどこから持ってきた。


「んで、オカエリさんとオカシイコさんは」


「フルネームで呼ばないでほしいっす! 今度言ったら怒るっす!」


……既に怒ってるではないですか。オカエリさん。


「んじゃ言い直して、オカ妹は」


「そんな言い方するなっす! 私はエリって言う名前があるんす!」


…………めんどいやっちゃ。そんなこと言ってたら大人になったときにやっていけないぞ。大人になったら肩書きで生きるようなものなんだから。『○○会社の△△支社の企画開発の主任です』とか、『☆☆家の奥さん』とか、『××のお母さん』とか、どこへ行っても自分の名前よりも肩書き優先になってくるんだから……まあ、それは大人になったときに考えればいいか。今はオカ妹の要望どおり、名前で呼んでやるか。


「じゃあエリさんは」


「お前なんかが名前で呼ぶなっす! 馴れ馴れしいっす!」


……じゃあどう呼べばいいんじゃ。俺にはもうお手上げっすよ。

ちらちらとサツキにSOSの視線を送り続けているけれど、一方通行で全然信号を受け取ってくれない。


「ところで、お前達は入部希望なのか?」


にっちもさっちもいかなくなっている俺を見て、ポンポコさんが助け舟を出してくれた……助かった。


「えっと、まだサツキに連れられてきただけなので、入部するかどうかは練習を見てから決めようかと思います」


「私も右に同じっす」


『お前らなんか入部して来るんじゃねー』と大声で叫びたくなったけれども、ぐっと我慢して心の奥にしまっておく。


「ふむ……ところでひとつ聞きたいのだが、中学は何をしていたのだ?」


「私もシイコ姉もソフトテニス部っす。でも、高校では別の部活をしたかったっすから、とりあえず陸上部に来たっす」


「2人とも東海大会出場までしてるから、強いですよー。高校受験の間も運動はそこそこしてたって言ってるから即戦力ですよ」


「サツキ、照れるっす。褒めないで欲しいっす」


褒めないでほしいとかいいながら、まんざらでもないオカ妹もといエリ。


「うむ、入部してくれることを期待しているぞ。よろしく」


『よろしくお願いします』


……入部希望者がいるのは嬉しいけれど、散々にけなしてくるような奴が入ってくるのかーとなんだか複雑な気分。

……ま、なるようになるか。

こんばんは、ルーバランです。


新入生第2弾、オカ姉妹です。

オカ姉妹という双子、覚えている人はいますでしょうか。


新入生の入部で登場人物が増えてしまいますので、出来る限り混乱しないよう、頑張ろうと思います。


それでは今後ともよろしくです。

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