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396話:サツキとアヤの入学式

今日は4月7日、火曜日。今日は入学式。

入学式前から教科書を買いに行ったり、身体測定をしたり、部活にいったりとサツキとアヤは何度も学校へ出向いている……アヤは外交的で、いつの間にやら陸上部になじんでた。1年以上所属している自分よりなじんでるってどうなんだってちょっと思う。


「サツキ、アヤ! お、き、ろ!」


「うーん、まだ寝るー」


「サツキ、置いてくぞ! せっかくの入学式って言うハレの日に遅刻とか嫌だろ!?」


「……だいじょーぶ、今日の天気は曇りー……遅刻しても問題なしー……欠席しても問題なしー……」


問題ありありだから! せめて入学式くらいはきちんとしてくれよ。


「関係ないし! お、き、ろ! アヤもおきろ!」


「いーやー……」


耳元で起きろと怒鳴っていたら、アヤはもぐりこんで、蓑虫みたいになってしまったので布団をひっぺがえしてたたき起こす。


「……おにーちゃんのえっちー……」


「なんでだー!」


……くう……アヤもねぼすけだったとは……。家に来た当日は長旅の疲れもあるのかなーと思って全然起きてこなくても放っておいたんだけど、それが2、3日続いたころにおかしいと思い始めた……。そして今日、それは確信に変わった。こいつ朝弱いわ。

そういえば、アヤには申し訳ないけど、自分はアヤのこと全く覚えてないことは伝えた。アヤはちょっと寂しそうに笑ったけど、これからもっと思い出作ればいいもんねって言って、許してくれた……ほんと申し訳ないっす。


「アヤ、敷布団をかぶってでも寝ようとするな! サツキ、いい加減起きろ!」


「……くー……」


く、起こす人間が2人になったことで、ものすごい時間がかかる。サツキも、仲間ができたからか去年よりも明らかに起きようとしない。

本来ならさ、妹が起こしてくれるもんだろ。馬乗りになって、起こそうとしたのに全くおきない俺にちょっと怒って、『もう、それだったら私も寝るもんね』って言って俺の布団にもぐりこんできたりさ、ちゅーして起こしてもらったりさ、兄としてはそういうのを期待したかったりするんだけどさ……現実なんてそんなもんだよ。


「はあ……妹が起こしに来るシチュエーションと言うのを一度でいいから味わってみたいよ」


「ヤス兄、漫画の読みすぎー」


「そこ、都合のいいところだけ返事するな! ほら起きるぞ!」


「…………くー」


「タヌキ寝入りすんな!」








ふう……ようやく学校に着いた。ホントぎりぎりだけど。


「そう言えばヤス兄って別に今日学校来なくてもいいんだよね?」


「んー……まあ、一応。保護者の席で見てるつもりだけど」


「あ、そうなんだー」


俺がそんな言葉を言った瞬間、にやーっていやらしい笑いをするサツキ……こいつめ、何をたくらんでる。


「なんだサツキ? 入学式で一体何をするつもりなんだ?」


「ううん? べっつにー? 何も言ってないよー? いこ、アヤ!」


……なんか不気味だ……。









そして始まった入学式。手狭な体育館に、新入生とその保護者、先生とぎゅうぎゅうに集まって座っている。春なのになんだか暑苦しい。


「今日と言う日を迎えられ、私は本当に嬉しく思います……」


暑苦しくてさっさと終わってほしいのに、去年と同様、面白くもない校長先生の話を延々と聞き続けている。去年と校長先生が変わっているので、話の内容は多少変わっているけれど、面白くないものは面白くない……しかもこの先生長いし。


「皆さん、退屈していると思いますので、ここでちょっと先日テレビで見た小話をさせていただきたいと思います……」


どうでもいいから、そんな小話はどうでもいいから! 聴衆が退屈していると思うんだったら終わってくれ。


「今日私が皆さんに伝えたいことは7つあります。本当はもう少し伝えたかったのですが、要約して少なめに7つにしてみました……」


多い、多すぎるよ!? 俺なんてこんな会話で覚えられるの1個までっすよ!


「私も今年校長になりたての、皆さんと同じ1年生ではありますが、これから誠心誠意、職務を務め、この学校をよりよくしていこうと思います……ところで」


まだ続くのか……もう15分以上話し続けているんだが。


「年収1000万以上の家庭と年収300万円の家庭では、小学校のテストの成績が20点以上も変わるとの事ですが……」


……もういいよ。そんなゆとり教育が始まった時点でそうなることが分かりきったことじゃんか。グダグダと続けないでくれ。


「……それでは大変手短ではございますが」


「長いだろ!? 長すぎるよ!」


……しまった。つい声に出してしまった。やっばい、新入生と保護者が何事かと俺のほうをいっせいに見てる……1番びっくりしているのは校長な気もするけれど。

だってしょうがないじゃん、あまりにも長いんだもん。一言文句言ってやりたくなるじゃん。

うう……みんな俺を見るな。早く終われ。


「……ごほん、それでは続きまして、新入生宣誓……2年1組、ヤスはこの後生徒指導室に来るように」


あー!? ちょっと先生、勝手に俺のことばらさないでよ!? しかも明日のクラス発表の楽しみも奪いやがって!


「新入生宣誓、新入生代表……近藤、五月! ……近藤? まさかな……」


「はい!」


サツキ!? サツキが宣誓すんの? 初めて知った……。

サツキが壇上に立ち、手を上げて宣誓を開始する。お、意外とまともに宣誓をするっぽい。


「宣誓! 本日、私たち200名は、平成21年度入学生として、富士山を仰ぎ見ることが出来る、大山高等学校の入学式の席につくことができました」


おお、ま、まともだ。いいぞサツキ。


「先ほどは、入学式と言う大事な場であるにもかかわらず、不出来な兄がツッコミをして申し訳ありませんでした」


お願いだから俺の名前を出さないで。大事な場に遅刻とか欠席しそうになったのはどこのどいつだ。


「今日、この大山高校に入学できたことを、私は誇らしく思います。その誇りを失わないためにも、大山高校の校訓である『自尊』を心に刻み込んで、思いっきり自分の行動に自信を持ち、うぬぼれ、唯我独尊にふるまい、自分が正しいと思ったことは最後まで貫きたいと思います。よって私は在校生である兄の近藤康明とともにこれからも真面目に不真面目に、自由に振舞っていきたいと思います」


それ違う。校訓の『自尊』はそういう意味じゃないと思う。なんだそのゴーイングマイウェイナセリフは。


「うぬぼれたセリフを申しましたが、私はまだまだです。毎夜毎夜兄に攻められてばかりで、いつも私は受けに回ってます。今日の朝も激しく争っていました」


何の話だ、その抽象的なセリフはやめてくれ! 痛いまでの皆さんの視線を感じるっすよ。


「こんな私ですが、今後とも先生方のご指導のほど、よろしくお願いします。新入生代表、近藤、五月」


体育館にいる人全員が、パチパチという拍手をしつつ俺への軽蔑の眼を送る……思うんだけど、評判って底がないよね。底なし沼のごとく、俺の評判はどこまでも落ちていくー。

おはようございます、ルーバランです。


年収1000万以上の家庭と、年収300万円の家庭ではテストの点が……と言うのは本当の話です。

学校がゆとりで教育するのをやめたら、お金のあるところは自分達でお金を出して子供達を教育させ、お金がないところは教育にお金を回す余裕がない。

今後、政党が変わってどうなっていくんでしょう? 期待です。


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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