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39話:インターハイ地区予選前

次の日の練習から、早速購入したシューズで練習するようになった。


普通の靴との違いは、やっぱり軽さ。

ちゃんとした靴を履くと、こんなに軽くなるんだとちょっとびっくりした。

走ってみても、今までよりも足が重くなりにくかった。


ケンも購入して、すごく走りやすくなったって喜んでた。

……今までのケンの靴はほんとぼろぼろで、右足の親指部分なんかから靴下見えてるぐらいだったから、当然かもしれない。


お礼をユッチに言おうと思ってたんだが、威嚇する事は無くなったのだが、俺を見るたびに


「この変態!バカ!アホ!間抜け!」


と悪口を言うようになった。

幼稚園児並みの悪口なんだが、俺の話を聞こうとしてくれない。何となく俺も悪口言われると腹が立つので、言い返してしまう。

最後はお互いに悪口を言い合って終わるという日が続いてる。


俺らはほんとに高校生かよ……。




長距離組では、ノンキも買ってきてた。

兄に連れられて買ったらしい。


そうして、その靴で練習するようになって、今日で3日目、5月2日金曜日。

今日の練習は、各自それぞれに練習するようだ。


俺たち1年も、各自好きなスピードで、好きな量を走っていいと言われた。

俺は気持ちよく走れるスピードで、8周走った。だいたい8kmになるらしい。


今日、各自で練習な理由は、明後日から始まるインターハイ地区予選、高校総体東部大会が始まる。2、3年生はそれに出場するので、各自で調整して練習するそうだ。


中長距離の先輩達が出場する種目は、800m、1500m、5000m、の3種目。

長距離の種目はあと2つ、3000m障害という種目と5000mウォークと言う種目もあるそうなのだが、どちらも練習できる環境じゃないと言う事で、出場しないと言っていた。


3000m障害と言うのは、長距離の人がハードルみたいな物を越える種目というもの。

ただ、そのハードルみたいな物は平均台くらいの太さがあって、上に乗って越えるらしい。

しかも、1周に1回は落とし穴みたいな部分も跳ばなきゃいけない。

落ちると水にびしょぬれになる……。


なんて恐ろしい競技なんだ……。


5000mウォークと言うのは、走るのではなく、5000mを歩く競技。

しかし、歩くと言っても速い人は、普通に走る人よりも速く歩いてしまうという……まさにびっくり人間だ。

地区レベルでも上位に入賞する人は1kmを5分以内で歩く(高校女子3年の体力テストの1km持久走の平均記録が5分)うえ、それを5kmも歩き続けると言うのだから、すごすぎる。

歩き方にはやり方があって、その通りに歩かないと失格になるらしく、この学校ではその歩き方を学べないから、出場しないんだってさ。


「と言う事だ、わかったか?ケン」


「ん?悪い、聞いてなかった」


「おいっ!何で聞いてないんだよ!お前がプログラムを見て、3000m障害と5000mウォークって何?って聞くから色々調べて教えてやったのに!」


今は練習が終わって、陸上部全員で集まっている。ウララ先生はちょっと用事があってぬけていて、今はそれ待ちだ。その間、ケンとヤマピョンとそんな会話をしてた。


「だって、ヤスの説明長ったらしくて、クドいんだもん。もっと簡単に説明しろよな。ヤマピョンもそう思うだろ?」


「……えと……」


ヤマピョンが俺の顔をちらちら見てくる。なんだよ、おい。


「ヤスに気を使わなくていいからさ。思った通りの事を素直に言ってみ」


ケンが促す。あれだけの行動で、ヤマピョンの考えてる事がよく分かるな。


「……長い……」


うわ、オブラートに包まず単語だけで言ってくるから、かなりへこむ。


「やっぱヤマピョンもそう思うよなー。ヤス、もっと簡単に説明できないと、人民の心をつかむなんて出来ないぞ!女を口説く時だって、延々と美辞麗句を並べ立てるんじゃなくて、『愛してる』の一言の方が効果的な場合が多いんだぞ」


ほんとかよ!お前女と付き合った事無いじゃん!


「わかったよ!3000m障害は3000メートルの障害物競走で、5000mウォークは、5000m歩く競技。これでいいんだろ!?」


「短すぎて分からん、障害物競走ってなにさ。運動会か?」


ヤマピョンもコクコクうなづく。


「うがー!!てめえら!自分で調べやがれ!」


「お、ヤスが壊れた」


「ケン、うっさい!」


「ヤス君、あなたが一番うるさい!」


…………。


いつの間にか、ウララ先生がきてた。なんで毎回俺ばっかり怒られるんだろう?


「すみません……」


「うん、毎度毎度ほんとに気をつけてね。自分の行動にほんとに責任持たないと」


ぼろくそに言われてる。俺、今までも基本的には巻き込まれただけだと思うんだけど。


「それじゃ、今日のミーティング始めます。明後日からインターハイ地区予選が始まりますね。明日は祝日で練習が無いので、各自で調整する事になりますが、もし学校で調整したいと言う人がいたら、私にこのあと言ってください。私も練習に立ち会いますから」


「ウララセンセ、明日きていいですか!?」


話の途中で遮るなよ、ケン。


「その話はあとでね、ケン君。それで、明後日の事ですが愛鷹広域公園陸上競技場という所で試合が行われます。1年生はまだ行った事が無いと思いますので、後で先輩達に行き方を聞いておいてください。」


「はーい」


返事したのはケンだけだ、多分また話しのコシを折った気がするが……


「……こほん、それで競技場には8時に集合してください。場所取りをしようとする人たちがあふれてますが、巻き込まれないようにしてください」


ん、場所取りなんて必要なのか?


「1年生は分担してみんなで使う物を持ってきてください。後で決めといてね、ポンポコさん、代表者としてよろしく」


「うむ、了解いたした」


ポンポコさん、先生に対してもそんなしゃべり方してるんだね。他の先生もなんも言わんのかなあ。


「…………ある人は県大会出場、ある人は自己記録の更新と目標は様々と思いますが、全員悔いの内容に全力を尽くしていきましょう!」


『はい!!』


「以上、今日の練習を終わります」


『ありがとうございました!!』


うーん、ウララ先生ってなんか印象ががらりと変わるなあ。ふざけていい雰囲気の時は、もうボケボケな先生なのに、今なんかはすっごい真面目でかっこいい。

切り替えが上手ってことだな。


「1年生、集合せよ!」


『ほーい』


わらわらと1年生が集まる。


「明日必要な物は全部で6つだ。ビデオ、旗、ブルーシート1世、ブルーシート2世、救急セット、組み立て型のテント」


「1世2世って何?」


「私の趣味だ」


『…………』


ポンポコさんの趣味ってよく分からんね。


「それで、このうちの5つは問題ないのだが、組立型のテントだけは重いのでな。力のある男子か、家の近い人に持っていって欲しいのだが」


「家の近いやついるかー?」


ケンが声を上げるが、誰も反応しない。ケンがため息をついて言う。


「仕方ないな、これは男子の誰かが運ぼう、後で男子だけのこって決める。それ以外の物はどうすんの?」


「うむ、それ以外の物は軽いから、順番で運べばいいと思う」


『了解』


そして、組立型テントを誰が運ぶかでジャンケンする事になった。

組立型点とは意外と重い。持ってくだけで疲れてしまう。持ってく理由は雨が降ってきた時に、必要になるかもしれないからだって。


『ジャンケン』


『ポン!』


俺:チョキ

ケン:パー

ヤマピョン:パー

マルちゃん:チョキ

ノンキ:チョキ

オオリン、スギヤン:チョキ


あ、なんか一発で決まったな。ケンかヤマピョンが持ってく事になるのか。


「あー、じゃあ、俺が5日に持ってくから、ヤマピョンは6日に持ってってくれ」


コクコクとうなづくヤマピョン。


「残り1日、5月4日はヤスでよろしく」


「何でだよケン!?俺勝ったよ?」


「なんとなく」


「そんな理由で俺にするな!」


「しゃあねえな、じゃあ多数決。残りの1日はヤスがいいと思う人ー」


バババッと手があがった。特に女子組の手の上げ方が速かった……。俺、そんなに嫌われてるの?他の人は……自分に押し付けられたくなかったんかな。


「決定だな!よろしくヤス!」


「これいじめだろ!?こう言うのがのちのちいじめに発展していくんだぞ!」


「ヤスなら大丈夫!いじめられ慣れてる!」


「そんな慣れ嫌だー!!」


俺の叫びは空しく空に消えていった。

まあそれは置いといて、1年生の人たちは大会には出場せず、応援のみだ。

それでも生で見る初めての陸上競技だ、楽しみだな。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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