379話:ババヌキ
アオちゃんによって配られたトランプ……おし、ジョーカーは入ってないな。ジョーカーが入ってるだけでなんか憂鬱な気分になるもんなあ。
あれ? あれ? 1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、12、13……ペア、ひとつだけじゃん。なんだよこのペアの出来なさっぷりは。
ありえないぞ、1個しかペアが出来ないなんて……。
「ひい、ふう、みい……4枚、5枚」
「あ、ヤス君たら、4枚目からなんて言うか分からなかったんですね?」
「そ、そんなことないべさ! おら、トランプの枚数ぐらあ数えられるべさ!」
分からんけど。ひいふうみいまでしか知らんべさ。
「じゃあ数えてみてもらえますか?」
「ひい、ふう、みい……よん、ごお、ろく」
「全然違いますよ、ヤス君」
……なんかむかっつくわあ。いいじゃんか知らなくたって。そんなこと知らなくたって、逆上がりが出来なくちゃ結構かっこ悪いんだ。
「じゃあアオちゃんは知ってるんか?」
「よお、いつ、むう、なあ、やあ、こお、とお、とお、あまりひとつ、ですね」
……知ってたよ。なんかすっごくむかつくよ。
「というかヤスってば、11枚も持ってるのお!? うっわあ! ばっかだあ!」
……ユッチ、馬鹿とか全く関係ないんとちゃうかな? こんなの運やろ。
「ってかユッチだってめっちゃ持ってるじゃん! 7枚か?」
「う、うっさいなあ! 9枚だよお!」
……全然俺と持ってる枚数変わらんやん。そういうのをどんぐりの背比べっていうんだぞ。
ってか、アオちゃんとミドリちゃんには絶対に負けたくなかったのに、アオちゃんは4枚、ミドリちゃんは5枚か……何だ、この不利さは。不利すぎるだろ。この両極たんっぷり、ありえなさ過ぎるだろ。
アオちゃん何か配る時に細工でもしたんじゃないかとか疑ってしまう。
「ヤス、ババ持ってるかあ?」
「ノーコメント。ユッチは?」
「だったらボクもノーコメント!」
……だったら聞くなよ。人に聞いておいて言わないとは、なかなかずるいやっちゃ。
「なんだかヤス君のその枚数、ちょっとかわいそうですからヤス君からひいていいですよ。さあ、どうぞ」
……手心を加えられるなんて、なんだか屈辱だ。だが、屈辱を味わっててでもアオちゃんには勝ちたい。
「じゃあアオちゃんのから1枚もらうぞ! ……俺の勘がこいつだと言っている!」
しゅばっ! とアオちゃんの手札から一枚引く………………………………ババ。
「……」
すごすごと手札にババを入れる俺。
「ありがとうございますヤス君、一歩勝ちに近づきました」
手心を加える気はなかったんですねアオちゃん、もう勝つ気満々じゃないですか。俺を負かせる気満々じゃないですか。
「あははあ、ヤスのバーカ! アオちゃんが優しくしてくれるわけないじゃんかあ! まだまだヤスはアオちゃんの腹黒さを知らないなあ!」
「……ユッチ、後で覚えてなさい」
「ああううう、ご、ごめんなさいい……つ、ついほんとの事いっちゃったんだあ」
「……ほんとに覚えてなさい、ユッチ」
絶対にユッチの方が馬鹿だろ。どこまでアオちゃんを怒らせれば気が済むんだ……。
「あ、次ボクの番だねえ」
あ、俺から引くのか。
「ほれユッチ、12枚の中にババが1枚だ。ユッチなら12分の1を当ててくれると信じてるぞ」
「ばあか! そんなの当たるわけないじゃんかあ! ……これだあ!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ども、ありがとユッチ」
「嘘だあ! 12枚もあるのにババが当たるわけないじゃんかあ!」
「嘘なようなほんとの話、事実は小説より奇なりってよく言うだろ?」
でも、『事実は小説より奇なり』ってセリフって小説内でしか聞いたことないけど。ほんとに事実が小説より奇なりだった人、誰かいるんかなあ。いるんだったらぜひ教えてほしいよなあ。
「さて、次は俺がアオちゃんから……ってアオちゃんもう2枚か」
「先ほどペアが出来ましたので」
……やばいな、このままだと負けてしまう。
「とりあえずどれ引いても合うだろ、ほい」
引いたカードは、スペードの3……あれ? ペアが出来ねえ。
またすごすごと手札にカードを入れる俺。
「……ヤス君って、勝負弱すぎませんか? こう、弱すぎる人とやっても面白くないんですが。あ、あがりました」
……はえ? は、速すぎだろアオちゃん! 12枚もありながらなんで俺は1枚もそろわないのに。なんでアオちゃんはラストの1枚がペアになるんすか。
「枚数からいけば、ヤス君かユッチが負けそうですね。2人のどちらかの暴露話を楽しみにしてます」
……いややあ、負けたくねえ。
こうなったらユッチだけには絶対に負けねえ!
こんばんは、ルーバランです。
……こいつらって合宿に来てるはずなんですが、何をしているんだろう(^^;
それでは今後ともよろしくです。