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369話:サツキの欲しいものは?

今日は3月16日月曜日。

サツキに奇跡を見せて欲しいと言われ、何をすればいいかどうすればいいのかさっぱり分からないでいる。

訳の分からないことを言ったサツキはいつもと同じように元気に学校に出かけてった……くそう、一体俺は何すればいいんだろう?


「ケン、どうすればいいと思う?」


「知らんよ」


……ケン、つめてえな。ちょっとくらい手助けしようという気にはなんないのか?


「昨日サツキが言ってたんよ。『私が欲しいものは、どんなに頑張っても絶対手に入らないものだから』って。それってなんだと思う?」


昨日1日もんもんとしながら悩み続けたけど、結局何がなんだか分からなかった。


「なんだか面白そうな話してますね。私も混ぜてくださいよ」


……アオちゃんか。同じ女の子同士、サツキの心理が分かるかな?


「昨日さー、ホワイトデーのお返しに何がほしいかサツキに聞いたんだよ」


「昨日って3月15日ですよ? ヤス君、遅れるのは厳禁ですよ」


……すんません。


「それでですな、サツキの欲しいものを聞いたら、『どんなに頑張っても絶対手に入らないもの』って言われて、その後に『奇跡』が欲しいって言われたんだよ」


「あ、そう言えば私、ヤス君にバレンタインチョコ上げましたよ。お返しはありますか?」


……アオちゃん、実は話聞くつもり全くないよね。

アオちゃんの質問は無視して話を続ける。


「結局、サツキの欲しいものっていったいなんなんだろうなあって思って、ケンに聞いてみてるんだけど、ケンが冷たいんよ」


「アオちゃんもさ、話半分くらいに聞いてたほうがいいぞ。ヤスがサツキちゃんについて話し始めると、1時間ぐらい延々と妹自慢が始まるから」


そんなことはしないぞ。せいぜい30分ぐらいだ。


「まあ、ヤス君のシスコンは今に始まったことじゃないですから。そんなに気にしませんけど」


……アオちゃんまで、ひどいっすな。


「でさあ、アオちゃんは分かる? サツキの欲しいもの。ケンも考えてくれ」


「んーと……そだなあ……欲しいけど、絶対に手に入らないものだろ? 『自由』とか?」


……何だその抽象的な答えは。


「『ヤス君からの解放』というのもいいですね」


「ああ、それ確かに絶対手に入らなさそうだな」


……ケン、アオちゃん、後で覚えてろ。


「他には、『翼』とか欲しいよな。今自分の背中に鳥のように翼が欲しい」


「『翼をください』ですね」


大空に飛んでいきたいってか? 悲しみのない自由な空へってか? はっ、鼻で笑っちゃうね。


「ケン、アオちゃん……俺、思うんだけど、鳥が自由だなんて誰が決めたんだろうな。例え空を飛べたとしても、彼らには手がないんだ……自由に空を飛んでも、物をつかむことも、じゃんけんすることも、抱きつくことも、大好きな相手と手をつなぐことも出来やしない。どこが自由なんだろう? 彼らは空を飛ぶ代償に、とても大きなものを失ってしまったんだ……」


「ヤス……それを聞いた俺らにどういう反応を期待しているんだ?」


「なんとなく言ってみたかっただけ」


悪いか。ふと思いついたんだよ。けど、そう思うと、ダチョウって悲惨だな。空も飛べないし手もない。あいつらは何でそんな進化を遂げていったのだろう?


「後は、サツキちゃんがどれだけ努力しても絶対手に入らないものと言うと、『時間』とかだよな」


「どれだけ努力しても、失われた時間は戻ってこないですからね」


俺ら、高校生だろ。失われた時間よりもこれからある時間のほうがよっぽど長いじゃんよ。


「あれじゃん? サツキちゃんってテニスの東海大会で1回戦敗退してたじゃん。あの時ああしていればとか、多少後悔が残ってるんじゃないの?」


「さあ……全然残っているようには見えんけどなあ」


むしろ、晴れ晴れしてる気がするけど……そればっかりはサツキしかわからないことだもんなあ。

ま、結局アオちゃんにもケンにもサツキの欲しいのは何かわかんないってことだよな。自分で考えなきゃダメかあ。


「ちなみに聞きたいんだけど、ケンとアオちゃんは今欲しいものって何がある?」


「俺? 俺は今金が欲しい。欲しいゲームがたくさんあってな。母ちゃん買ってくれねえんだよ。兄ちゃんの仕送りが大変だって小遣いも0円になったし」


小遣い0円か……頑張れケン。


「私は今ホワイトデーのお返しが欲しいです」


……アオちゃんしつこいなあ。


「はいはい……はいこれ、ホワイトデーのお返し」


ごそごそと鞄をあさり、ラッピングしたものをアオちゃんに手渡す。


「あれ? あったんですね。ヤス君、忘れてるのかと思いました」


……失礼な。そんな失礼なやつにはやらんぞ。


「それでこれは中身、なんですか?」


「『鬼まん』。ホワイトデー当日にサツキとユッチと俺の3人で作って、余ったやつ。6個もあるから家族で食べて。ちょっと日にちが経ってるから硬くなってると思うけど、オーブンでチンすればかなりおいしく食べれるよ」


「……残り物なんですね」


……なんか、言葉にトゲがあるなあ。


「ってかアオちゃんも彼氏にあげるつもりだったのに、バレンタイン当日に別れたもんだから捨てるつもりだったのを、俺にくれただけやん。そんな捨てるつもりだったチョコのお返しにでっかな期待すんなよ」


義理ですらないんだから、それでいいだろ。


「……ようやく忘れかけてたのに、話を蒸し返すんですね、ヤス君は」


「俺!? 今の流れって俺が悪いの!? 話を蒸し返したのどう考えてもアオちゃんだろ!?」


「いいんです、恋愛の話の時は絶対に自分が正しいんです。だからヤス君が悪いんです」


ひ、ひでえ……なんてやつだ。


「冗談ですよ……わざわざありがとうございます。ホワイトデーっぽくないお返しでしたけど、ミドリとお母さんと食べさせていただきますね」


……最初っからそう言ってくれればいいのに……ついでにそのセリフも一言余計だからな。

こんばんは、ルーバランです。


『翼をください』、名曲ですよね(^^;

この歌も大好きです。 作中ではひねくれててすみません。


それでは今後ともよろしくです。


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カカの天下
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