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365話:電話中、ユッチと

「さーびーしーいーよー……さーつーきー」


20時……サツキがいないというだけでここまでダメダメになるとは……。父さんと母さんは今日はデートしてくるとか、突然電話があった……身重なのに、なんだか元気ですね、母さん。

ううん、楽しく遊んでるサツキの邪魔しちゃいけないから、サツキにメールも電話も出来んし……。


「ケンにでも電話すっかあ」


Pi、Pi、Pi、Pi、Pi、Pi……TRRRRR、TRRRRR、TRRRRR、TRRRRRR、TRRRRR、TRRRRRR……。


で、でねえ……ほんとにこういうときに限って出ないとは……くそう、ケンのやつめ。


「仕方ない……ユッチにでも電話するかなあ」


Pi、Pi、Pi、Pi、Pi、Pi……TRR


「もしもしヤスう!? どうしたのお?」


はやっ!? どう頑張ってもそんなに早く電話出られないだろ!? どうやって電話に出たんだお前!?


「いや、特に用事はないんだけど、なんとなく電話したくなって」


「今ボクもちょうどヤスに電話しようと思ってたんだあ、まるでテレパシーみたいだねえ」


……お前はSMAPですか。


「そう言えばユッチ、昨日でテスト終わったけど、テスト結果はどうだった?」


「ばっちりだよお! 絶対に赤点は1個もなかったはずだあ!」


なかなか志が低いなユッチ。まあ、今まで赤点だらけだったこと考えたら、それはそれでいいのかも。


「これで春合宿いけるねえ! 楽しみだあ」


「そだな、楽しみだ。ポンポコさんの異様なはりきりっぷりがなかったらもっと楽しみなのに」


……あかん、なんだか憂鬱になってしまった。


「ポンポコってばそんなにすごいメニュー考えてるんだあ?」


「そうなんすよ、目標1日40キロとか言われてさあ……むりだっつーの」


早朝練で5キロ、午前練で15キロ、午後練で15キロ、夜練でまた5キロ走るとか言っていた……いくらポンポコさんの持論が質より量だと言っても、限度があるだろ、限度が。


「ウララ先生もすごく張り切ってるよお。『ゴーヤ先輩とキビ先輩を絶対に東海大会に連れてくんだ』って! ボクも東海大会に行きたいし、お互い頑張ろうねえ、ヤスう」


「ん、頑張ろうな、ユッチ」


春合宿が終われば、すぐに5月の8日、9日、10日の3日でインターハイ地区予選、そして県大会、東海大会と続いていく。

やっぱり、県大会には出てみたいよなあ……。


「そう言えば今日、サツキちゃんはいないのお?」


「それがさあ、クロちゃんって言う中学の友達の家に泊まりに行ってるんだよ。父さん母さんも今日は帰って来れないって言ってるしさ、何故かケンにも連絡つかないしさ。家に1人でめっちゃ寂しいんすよ」


「ヤスってばウサギみたいだねえ」


うるさい、4LDKに1人でいると、やっぱりとても寂しくなるんだよ。金持ちのアメリカ人とかあんな広い家に住んでてよく寂しくならないなあとか思うぞ。


「それか『いしかわぶたき』でもいいかなあ」


「……ええとユッチ、『いしかわぶたき』って誰?」


「ヤスってば知らないのお!? あの『咳をしても一人』を詠んだ人じゃんかあ!」


「……ユッチ、それを言うなら石川啄木だ。豚木じゃないぞ?」


石川啄木さんに誤ったことを謝れ。


「う、うるさいなあ! わざと間違えたに決まってるじゃんかあ!」


「素で間違えたくせに」


「うるさいうるさあい! ヤスのバカあ!」


……ついでにそれを詠んだ人って石川啄木だったっけ? ……ま、どうでもいいか。


「まあ、そういうわけで今家に1人ですごく寂しいんだよ」


「ねえねえヤスう、それってもしかして今から遊びに来いって誘いかなあ? ボク、すぐに行くよお! 明日休みだしい」


今はもう20時半なんですが、今から遊びに来てもらってどうしろと。と言うか泊まる気満々ですねユッチさん。そして昼まで眠るつもりなんだろ。


「まあ、ほんとなら来てくれるとうれしいんだけど……今日はサツキがいないからダメ」


「ええ!? なんでなんでえ!? 何でサツキちゃんがいないとだめなのさあ!?」


「ええと、うち、今俺以外誰もいないから。若い男女がひとつ屋根の下で2人きりっていろいろよくないだろ?」


「うっわあ、今何考えたのさあ? ヤスってばえっちい」


……いやだってさあ。


「まあ、とにかく今日はダメ。大体ユッチ、今から家に来てたら21時になるだろ? ユッチいっつも22時には寝てるじゃん。そんなんじゃ家にきたって何もせんまま寝るだけじゃん」


「そ、そ、そんなことないよお! ボクだって夜更かしできるんだからあ!」


そんなこと自慢せんでもよろし。


「まあ、遊びに来るんだったら明日来てや」


「……今日はダメ?」


そんな切なそうな声で言わないでくれ。断りづらいから。


「ごめんなユッチ、また明日な」


「……うん……わかったあ。それじゃまた明日遊びに行くからあ……おやすみい」


プツッ……ツー、ツー、ツー……。


……なんだろう、この罪悪感は。悪いことしたわけじゃないのに。


「はああ……もう今日はさっさと寝るかな……」


ううう、1回くらいサツキから電話かかってきてくれてもいいのに……つまんないなあ。

こんにちは、ルーバランです。


石川啄木を『いしかわぶたき』と読んだことはないですが、大石内蔵助は『おおいしないぞうすけ』、吉良上野介は『きらうえのすけ』と読んでました。


今まで自分、何故か『咳をしても一人』は石川啄木だと思っていましたが、尾崎放哉という人らしいです。


なんで勘違いしてたんだろう?


それでは今後ともよろしくです。

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