362話:勉強合宿
今日は3月7日土曜日……ええと、なんだか家が凄惨な状態になっています。
「ヤスう、ここわかんない」
……ユッチ、頑張ってくれ。その台詞はもう10回は聞いた。
「ってかさ、ユッチ、ポンポコさんに教えてもらえよ。教え方うまいんだろ?」
「その通りだ。私が教える。分からないのはどこだ?」
「ポンポコは怖いからいやだあ!」
「……」
「……」
……ポンポコさん、ユッチにどんな教え方をしたんすか。飴と鞭の教え方はどこいったんですか。
「ヤスヤス、ここ教えて!」
キビ先輩、俺が2年生の問題分かるわけないじゃないですか。自分で頑張ってくださいよ。
今日は我が家で勉強合宿をしてる。来週月曜日から学年末テストが始まるからだ。今回赤点を取ってしまうと、留年の可能性があったり、そこまではなくても春休みに補修に行かなきゃいけなくなったりする。そうするとはる合宿に参加できなくなってしまう。今回は通知表に1か2がつきそうなメンバーを集めて勉強会。
ええと、教える組にポンポコさんと俺。教えられる側にユッチとケン、そして何故かキビ先輩。傍観者がサツキ。
……ってかキビ先輩、2年生の問題を俺とポンポコさんで教えられるわけないじゃないですか。何でこの勉強合宿参加してるんですか。
「ヤス兄も大変だねー」
「そう思うならサツキ、何か手伝え」
「いや。私、もうしばらくは勉強したくないもん。この前の入試まですっごく勉強したんだよ。今日は1日四苦八苦してるみんなを見て、優越感に浸る日なんだよー」
……思ってても口に出しちゃだめだぞサツキ。なんか恨みがましい目でユッチが見てきたぞ。
「そうかあ? 幼稚園に遊びに行ったり、毎日部活に来てたり、全然勉強してるようには見えんかったけど」
「そんなことないよ、ヤス兄が見てないところで私すっごく勉強してたんだから。ヤス兄、私の影の努力を知ったら感動して泣いちゃうよ?」
……自分で『影の努力』って言ってしまったら、その時点で影じゃなくなる気がする。
「ヤス、そろそろ休憩しねえ?」
「ケン、30分前にも同じことを言った。ケンの辞書の中には『集中』という2文字はないのか?」
「でもさ、もうなんだかんだ言って2時間勉強にかかりっきりなんだよ。ちょっと疲れた。休みたい。ジュース飲みたい。漫画読みたい。ゲームしたい」
……ケン、このわがままめ。合宿いけなくなってもいいのか!?
「でもヤス兄、人間の集中力なんてせいぜい10分くらいしか持たないんだから、2時間もやってたら、休憩入れたほうがいいんじゃないの?」
……いや、10分は短いだろ。でもまあ、2時間もやったら、そろそろ休憩は入れたほうがいいよな。
「んじゃ、ちょっとくらい休憩しよか?」
「やったあ! ヤス、ジュース持ってきてえ! ボクカルピスが飲みたいんだよお!」
……こらユッチ、何で俺はユッチの小間使いみたいに使われなきゃいけないんだよ。
「あ、ヤス兄、私はオレンジジュース」
「俺はコーヒーで」
「ヤスヤス、私は麦茶がいい」
「ふむ……それなら私は紅茶を頼もうか。砂糖は入れないでくれ」
みんなまで……くそう、これが俺の位置づけなのか。みんなに小間使いにされるのが俺の位置づけなのか。
「ヤスう、ありがとお!」
……なんかカルピスの代わりに牛乳か、コールスロードレッシングでも入れてやろうかとか考えたけど、結局実行に移せなかった……。ダメだなあ俺。
「ねえ、ヤスヤスう、気分転換にさあ、何か芸やってよお!」
……ユッチ、なんて無茶振りを振るんだ。お笑い芸人だってネタあわせなしにいきなり面白いことをやろうとしても、なかなか出来ないし、面白いことをやってといわれてうまく出来るなんてほとんどないんすよ。
「ユッチ、そういうことをヤスに言ったらダメだ。後でなんだかいたたまれない気持ちになるから!」
……どういう意味だよ、ケン。
「そうですよユッチ先輩! そのネタ振りだけはヤス兄にやっちゃダメなんです!」
……サツキまで。なんかそこまで言われると腹立つなあ……。
「仕方ない、サツキとケンにそこまで言われたら黙っちゃいねえ! いくぞ!」
「あ!『甘えん坊なアメンボウ』」
「い!『陰謀する綿棒』」
「う!『運動した沿道』」
「え!『演台たってええんかい? ええんだい!』」
「お!『俺のお礼』」
「か!『金、持ってるかね?』」
「き!『貴社の記者が汽車で帰社する』」
「く!『靴、いくつ?』」
「け!『剣道には行けんどー』」
「こ!『恋する鯉』」
「さ!『桜が咲くらしい』」
「し!『死罪になった人の私財』」
「す!『ステーキってす・て・き♪』」
「せ!『センターに立つセッター』」
「そ!『ソーダを飲むそーだ』」
「た!『タイマンで怠慢する』」
「ち!『朕好こうてる、ちんすこう』」
「つ!『妻を詰まらせた爪楊枝』」
「て!『店頭で転倒するテントウ虫』」
「と!『トサカの有名なところ……土佐か』」
「な!『難破したナンパ』」
「に!『ニラをにらむ』」
「ぬ!『ぬくもりが感じられぬ曇り空』」
「ね!『ねぎを値切る』」
「の!『ノミをたのみます』」
「は!『繁忙な綿棒』」
「ひ!『貧乏な民放!』」
「ふ!『富裕なNHK!』」
「へ!『返信しない変身ヒーロー』」
「ほ!『ホトケが言った、ほっとけ!』」
「ま!『呪っとく……マジ納得!』」
「み!『水を見ず』」
「む!『ムスカの息子』」
「め!『綿棒の変貌!』」
「も!『モズくうモズク』」
「や!『やまんばがいった、『どや、万馬券や!』』」
「ゆ!『湯葉を食べたゆばーば』」
「よ!『よし、ともだちになろうよ、使途と』」
「ら!『乱暴なランボー』」
「り!『リカちゃん、理科ちゃんとやる』」
「る!『ルーペを持つルンペン!』」
「れ!『令嬢の奴隷情報!』」
「ろ!『論破するドロンパ』
「わ!『ワンダフォーな湾だ!』」
「……」
「……」
……………………ふう、今回は今まで以上の出来だった。ついつい自画自賛してしまうな。
「……」
「……」
あれ? 今回はほんとに自信作なのに。貴社の記者が汽車で帰社する、とかすごいと思うのに。
「……」
「……」
誰か一言ぐらい何か言えよ。結果が知りたいじゃんかよ。
「……さ、みんな、勉強しよか」
「うん、そうだね」
「涼しくなって頭も冷えたしね」
「うんうん」
……てめえら! なんて事いいやがる! ……くそお、今度は絶対に腹筋が痛くなるくらい笑わせてやるんだからな!
こんばんは、ルーバランです。
……なんだか時々やりたくなってしまう親父ギャグシリーズ(^^
つまらないと思っても、面白いといってあげてください。
それでは今後ともよろしくです。