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358話:なぜ子供は転ぶのか

2月26日、水曜日。部活が終わり、ケンとサツキと家に帰っている途中。


「それにしてもサツキちゃんって結構神経太いよなー。俺とヤスってこの時期ってさ、落ちないように結構勉強してなかったか? 毎日高校まで部活なんて来れないよ」


確かになあ……俺、2月入ったらさすがにサツキ、全く部活来なくなるんじゃないかなーって思ってたんだけど、平日も土曜日も全部部活に来てるもんな。


「大丈夫大丈夫、この前プレテストやったら9割くらいとれたもん。それに、ヤス兄が毎日勉強教えてくれてるし」


……俺をそこまで信用しないでくれ、サツキ。


「これで最後の最後のツメをあやまって、すべったりしたら泣くに泣けないよ? サツキちゃん」


「……何でケンちゃん、そんな不安にさせる事言うかなあ? 受験生に『落ちる』とか『すべる』なんて言葉使わないでよ」


「去年、俺らもサツキちゃんに『おーちたおちた、何がおちた!』『受験!』って言われまくった記憶があるんだけど」


……ああ、あったなあ……ケンと2人、誰が落ちるか! って必死になった。


「そんな昔の事忘れたもん」


「サツキちゃん、俺の記憶はまだ鮮明に残っているぞ。ヤスは覚えてるか?」


「まあ、そりゃ覚えてるけど」


でも、別にサツキにやり返そうとは思わないなあ……ケンにならやり返すが。


「ケンちゃんもヤス兄も昔は昔、今は今でしょ? そんな昔の事を掘り返さないでよ」


「まだやられてから1年も経ってないんだけど。そんな昔じゃないだろ」


「1年も前なら昔だよ! ケンちゃんってば老けてるねー」


……どうでもいい言い争いをしているなあ……。

聞いているのもめんどくなってきて、空を見ながら歩いてた……ズシャ。


「あ、ヤス兄がこけた」


いててて……。


「ヤス兄ってばドジだねー。何で上なんか向いて歩いてたの?」


話がつまんなかったから……って言うと、怒られそうだなあ……なんて答えよう。


「まあ、俺がこけるのっていつもの事じゃん?」


「そういえばヤス兄って小さな頃からよくこけてたよね。なんにもない所でも」


「ヤスって小さな頃から成長してないんだな」


そうなんすよー……ちくしょ。


「そういえば、ヤス兄も小さな頃ってよくこけてたけど、子供の頃って誰でもよくこけるよね? おっきくなってくるとあんまりこけなくなるけど……どうして? ケンちゃん知ってる?」


「んー……色んな理由があるんだけどな、一番大きな理由が頭の重量と体のバランスが悪いって事かな。頭ってさ、子供の頃からそんなに大きくならないんだよ。で、体は大人に比べてすっげえちっちゃいじゃん。そうすると頭が重くって、体の重心がとりにくくなるんだよ。んでこける」


「へー、そうなんだ。ケンちゃん物知りだねー」


「次に考えられるのは、靴のサイズが合っていないとこける。子供ってどんどんおっきくなって、靴もどんどん買い替えなきゃいけないじゃん。たった数ヶ月しかはかないのにもったいないって親達がおっきな靴を履かせようとするんだよ。これをやると、歩きにくくてこける」


「ふむふむ……家のお父さんとお母さんは頻繁に靴買ってくれたよ? でもヤス兄は転んだよ?」


わざわざ俺を引き合いに出すな、サツキ。


「あとは、足のサイズが小さすぎるって事だな。極端な例で説明すると、針を立てようとするのと、瓶を立てようとするのじゃ、安定感が全然違うだろ? 大人に比べて子供の足は小さいもんだから、そりゃ安定感はなくて転ぶよな」


「なるほど、でも、ヤス兄の足っておっきいのに転ぶよ」


わるかったな、転びやすくて。何だか俺がものすごく転びやすい子みたいじゃんか。


「他にも、右目と左目の視力が全然違うと、遠近感がとりづらくってこける。そもそもすごく注意力散漫な子だからこけるって理由もあるな」


「あ、ヤス兄は注意力散漫ってやつに当てはまるんだねー」


うるさい、ニヤニヤ嬉しそうに笑いながら俺を見るな。

……それにしても、ケンのやつ、博識なのは認めるけど、とんちんかんな説明をしてるなあ……サツキもそんな説明に納得するなよ。


「ケン、サツキ……子供がよく転ぶ本当の理由ってのを教えてやろうじゃないか」


「え? ケンちゃんが説明したのであってるでしょ?」


「思いっきり間違ってるぞ」


「なんだよヤス、それじゃ子供が転ぶ本当の理由って何なんだよ?」


ふっふっふ、よく聞いてくれた。


「子供は、『前を向いて』歩いているから転ぶんだよ。大人になっていけばなっていくほど、『下を向いて』歩いていくようになるんだよ」


ふっ、決まった……我ながら完璧な答えだ。


「……何で人間って言うのは、大人になるにつれて足下ばかり見るようになるんだろうな? もっと前を向いて生きていけばいいのに。小さな頃にあった夢はどこへ行ってしまったんだろう? 夢に向かって前を見て邁進していた頃を何故人は忘れていくのだろう……?」


かっこいい……かっこよすぎないか? 俺。


「ヤス兄、夢だけじゃ食べていけないからねー」


……ナイスツッコミだ、サツキ。現実に一気に引き戻されたぞ。


「それに、前ばっかり見てて、地に足がついてない人って頼りないよ、ヤス兄」


……ナイスツッコミだ、サツキ。

なんだか、自分のセリフに酔っていた自分が空しくなってしまった……ううん、サツキのが一枚上手だなあ。

こんばんは、ルーバランです。


『子供は前を向いて歩くから転ぶ』というセリフを言いたかったが為に書いた話です(^^;


それでは今後ともよろしくです。

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