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349話:味見

今日は2月11日……祝日。ええと、建国記念日。まあ、自分にとっては休みがあってうれしいぐらいしか思わないけど。

今日は部活もなく、1日中家でゴロゴロすると心に決めている。いつものようにケンとユッチは家に転がり込んできてる……前、アオちゃんが言ってたけど、家ってそんなに居心地がいいんだろうか? よく分からんなあ。

なんかサツキとユッチは台所でガチャガチャしてるけど……まあ、俺には関係ないや。俺はコタツでコタツムリー。


「はあ……幸せ……」


みかんを食べつつ、緑茶をすする。

はぁ……これぞ日本の冬の過ごし方だよな。


「ヤス、ジジくさいぞ」


「うっさいケン、ケンがなんと言おうと、俺はせっかくの休みの日くらい基本的にダラダラして過ごすと決めているんだ。ダラダラ過ごすことは最高だぞ」


「ええとな、ヤスは外に出てはしゃぎたいとは思わないのか? せっかくの晴れの日なのに」


「晴れてても冬の外は寒い。コタツの中はあったか。さあ、外に出る理由がどこにあろうか、いや、ない。コタツムリになる事ほど幸せなことがあろうか。いや、ない」


「ヤス……お前の幸せって小さいな」


うるさいやい、何千億円あったって幸せじゃないやつは幸せじゃないんだよ。裕福になることイコール幸せだと思ったら大間違いだ。自分が幸せと思ったらそれが幸せなんだ。文句あるか。


「ケン、そんなこと言うんだったらお前はコタツに入るな。文句を言うやつに俺のコタツには入れさせん」


「ヤス……お前の器も小さいな」


うるさいやい、これが俺だ。文句あるか。


「あ、ヤスう、ちょっとこっち来てえ」


台所から顔を出して俺を呼ぶユッチ……ううん、このコタツを動かしながら行くことが出来れば行くんだけど……。


「めんどいからいやだ、用事があるならユッチがこっち来てくれ」


「なんだよお、ヤスのバカあ!」


それほどまでにコタツの魅力と言うのはすごいのだよユッチ……はぁ……幸せー。犬はバカだよなー、猫のが賢いよ。

犬は喜んで庭を駈けまわって、猫はコタツで丸くなる。猫に全面的に同意だよ。


「あ、ヤス兄ヤス兄、ちょっと来てー」


「あいあーい」


そう返事してコタツを出る俺。


「ヤスう! 何でサツキちゃんなら来てボクだと来ないんだあ!」


「ええと……人徳の差かな?」


「何でだあ!」


ああもう、うるさい、これが俺だ。文句あるか。


「ヤス兄、毒見してー」


……毒見? 毒見ってなんやねん。


「ほらほら、今度2月14日にバレンタインデーがあるでしょ? 今ユッチ先輩と手作りのチョコに挑戦してるんだよ」


へぇへぇ、去年までは市販の方がおいしいじゃんって言って作らなかったのに、どんな風の吹き回しだ?


「と言うわけでヤス兄、毒見係してよ」


サツキの手の上にはチョコチップクッキー……ふむ、なるほど。

普通の手作りチョコだと、硬くて歯が立たない、なんてことが起こりうるんだよな。確か、生クリームやら牛乳やらを上手に入れないかんのだよな。

チョコチップクッキーなら硬くて歯が立たないなんてことも起こらないし、時間も手間も少なくて楽……だったはず。

チョコクッキーをひとつつまんで口にほおる。サクサクとした食感に、ふんわりと甘い味が口いっぱいに広がる。


「お、うまいじゃん」


「ほんと? 甘すぎたりしない?」


「ん、大丈夫。すごくうまい。手が止まらなくなりそう」


うん、これはうまい。いいなこれ。2月14日はこれもらえるんだろか?


「サツキちゃん、俺ももらっていい?」


「ケンちゃんはダメー。ケンちゃんは2月14日までのお楽しみー」


「…………ちょっと待てサツキ、そのチョコは誰に上げるつもりなんだ?」


「んーと……ユッチ先輩とポンポコ先輩、クロちゃんとサキちゃん、それとケンちゃん」


……ふう、良かった。もしやサツキに好きな人が出来て、その人にあげるのかと思ってしまった。


「あげるのは全員女子なんだな。友チョコと言うやつか……ああ、びっくりした」


「おいヤス、俺は男だぞ」


ケンはいいの、ケンは例外。


「あ、それとクラスメイトの男の子にもあげるつもり」


「だだだ、誰だ!?」


そんな話聞いたことないぞ!


「嘘だよー、ヤス兄もそんなに慌てなくてもいいのに」


ふぅ、嘘か……良かった。


「ところでユッチは誰にあげるんだ?」


「ボク? えへへえ、ヤス、聞きたい?」


「いや、別に」


「ヤスう、聞きたいって言えよお!」


「別に聞きたくないし」


……ちょっとだけ聞きたいけど。聞きたくないって言った方が面白い。


「聞きたいって言うんだあ! ヤスのバカあ!」


ユッチ、ほんとに思ったとおりの反応を返すなあ。


「ケンちゃん、ヤス兄ってユッチ先輩からかうの好きだよねー」


「いっつもからかわれてるから、たまにはからかいたいんだろ?」


「ヤス兄ってば器ちっちゃいねー」


「だよなー」


そこ、内緒話してるようだけどめっちゃ聞こえてるからな。いつか覚えとけよ。


「んでユッチは結局誰に渡すんだ? 聞きたいから教えて」


「ええ? ええとね、ないしょー!」


だったら聞くなよ!


「ところでサツキちゃん、チョコあげる人の名前の中にヤスの名前がなかったけど、ヤスの分はないのか?」


「ヤス兄の分はないよー」


「ええ!? まじで!? なんで!?」


「今食べたでしょ?」


食べたけど! 1枚だけなんだけど、それだけなの!?


「ヤス、いつかきっといい事あるさ」


……ケンに変な風に慰められた。

くそお、ホワイトデーは今回何も作んないからな。

おはようございます、ルーバランです。


真夏にコタツの話を書いても暑い……。


それでは今後ともよろしくです。

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カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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