34話:集団宿泊研修1日目、深夜
今日の行事も終わり、後はもう寝るだけだ。
青少年交流の家は全部で500人が宿泊でき、大半の人はベッドで眠る。
一つの部屋に8〜12のベッドがあって、クラスで男女それぞれ10人に分かれて寝る。
出席番号順に別れるので、12番のケンとは別の部屋になった。
うーん、高校の友達は、ケンとアオちゃんだけだからな。
23時には消灯なのだが、消灯後も話をやめて寝ようなんて人は俺くらいだ。
明日の朝は7時に朝の集いがあるから、早く起きなきゃ行けないんだが
「いや、絶対にナベリンだって!」
「俺はキョンキョンの方が好みだな〜」
そういう話になんて加わるのも面倒だし。
「アオちゃんなんてどう?」
「あの子もいいけど、なんかぬけてるよね〜」
「それがまた良いんじゃん!」
「ドジッ子好きかよ、お前」
アオちゃん、マニアックな人に好かれてるぞ。良かったねえ。
「さっきから黙ってるけど、マルちゃんは誰が好みなんだよ?」
「僕?僕はその……この高校の子じゃないんだけど」
「お、って事は!中学校の時の子だな!」
「よしっ!マルちゃん!たっぷり聞かせてもらうからな!もう今夜は眠れない!」
…………うるさくて寝られない……ちょっと涼みにいってくるか……。
外に出ると、もう真っ暗だ。明かりはほとんどない。
でも、おかげで空を見ると、たくさんの星が見える。
残念ながら天の川は見えなかったが、俺の住んでる所じゃこんなには見えない。結構満足していた。
しばらくの間その場にぼーっと立っていたのだが、ジャリ、ジャリ、と後ろの道から音が聞こえてきた。
俺の他にも、涼みにきた人がいるんかな?
振り返ってみると、知った顔だった。
「よ、お前も寝られなかったのか?」
「ああ、私の部屋で、『赤裸々告白!中学時代の甘酸っぱい思い出を語ろうの会』というのが発足してしまってな。それに参加するのが嫌だったから逃げてきたのだ。」
中々ヘビーな事するね、あなたの部屋は。
「ヤス、君の部屋もそうなのか?」
「ああ、クラス内の女子で誰が好みかをひとりひとりずっと話し続けていてな。うるさくて寝られないから逃げてきた」
「……似たような事をする物なのだな。男も女も」
「全くだ」
俺たちふーっとため息をついて、お互いの顔を見合わせ、苦笑した。
部屋を抜け出して来たのは、ポンポコさんだ。確かに、ポンポコさんはあまりそう言う話は好きそうじゃ無いな。
「ポンポコさん、少し話してかない?今戻っても、まだ部屋の連中は騒いでる気がするし」
「私の部屋もそうだ。ふむ、どこか座って何か話すか」
俺とポンポコは適当にすわれる所に座った。
「……星が綺麗だよな。俺、これだけの星を見るの初めてだ」
「そうか?これくらいでは、そんなに多くは見えるとは言えないぞ。まだ強く光っているのが、見えているに過ぎない」
「え?ポンポコさんはもっとすごいのを見た事があるの?」
「ああ、あるぞ。長野の高原にスキーに行った時なんだが、夜中に兄弟全員で旅館から抜け出て、人工の光が届かないところまで歩いていき、夜空を見上げたのだ。もう空いっぱいに星があって、まるで大小様々な宝石を夜空と言う名のスクリーンにちりばめたようだったぞ」
「……へ、へえ……それは是非見てみたいな。そんなにすごいんだったら、これで感動していた俺が馬鹿みたいじゃないか」
「いや、これはこれで味があると思うぞ」
「何で?ここじゃ天の川が見えないし、綺麗な空を見てみたい」
「だから良いのではないか。天の川が無いと言う事は、対岸に離されてしまった彦星と織り姫はいつでも会えると言う事だ。1年に1回しか会えない2人を阻む天の川。それが消えてしまうというのは、2人にとってとても喜ばしいではないか。そう考えてこの夜空を見ると、また違った感想が抱けると思うが。」
……………。
「どうした?不思議そうな顔をして」
「いや、意外だった。ポンポコさんって結構ロマンチストなんだなって思って」
「ふふ、私とて女子高生だ。ロマンティックな事には興味があるさ」
「そうなんだ……ただの歴史オタクかと思ってた」
「失礼なやつだな。大体、歴史にもたくさんのロマンが詰まっているではないか。日本史だけでも、日本に正しい仏教を教えようと目が見えなくなってでも中国から旅してやってきた鑑真。新たな世の中を作ろうと平氏と戦った源義経、その義経に最後まで忠義を貫いた弁慶。赤穂四十七士の物語も素晴らしいぞ。他にもまだまだ言い足りない。」
「…………」
「それに歴史は、一面性のみを伝えられている可能性もある。新たな発見によって、また別の側面が見つかるかもしれない。最近ならば、去年、約3万5千年前の石器が栃木県高原山で、発見されたりしていたな。これによって、旧石器時代の人々の知性は今まで思っていたよりも、もっと高いものだったと推測されるようになった」
「……ごめん、知らない」
「そうか?一応新聞に載っていたんだが……もしかすると見落としてしまったのかもしれないぞ」
うーん、そんなに有名な事だったんだろうか?
「日本だけでも、まだまだ多くのドラマがあり、新たなドラマが見つかる可能性が隠れている。世界ならなおさらだ……わかったか?歴史には壮大なロマンがあるのだ。今後は歴史を馬鹿にするなよ」
ポンポコさん、俺は歴史を馬鹿にした記憶は無いんだが……
「ああ、わかった」
ポンポコさんにツッコミできなかった……ヘタレだ、俺。
「ふむ、まあいいだろう……ところで、正史三国志は少しは読んだか?」
「いや、まったく……」
「まだなのか!?ヤスは今まで何をしていたのだ、あれから何日経ったと思っている!?」
「まだ4日しか経ってないよ!?」
「……仕方がないな。では、日本史の話にするか?確かお前、好きなんだろう?」
……さっきまでの話を聞いてると、俺の知識では確実に聞き続ける事は不可能だ……ポンポコさんの実力は果てしない。
まだ、三国志の話を聞いていた方が……いや?
別に他の話をすればいいんじゃないか?
「ポンポコさん、今日は日本史の話はなしにして、星を見ようよ!!星について話し合おうよ!!」
「ふむ、星か?星の観点から話すのか。そうだな……諸葛亮孔明が星を読むと言うのは知っているか?」
「知ってるけど!それより星座の話とかをしようよ。星座占いとか楽しいじゃん?」
別に占いは好きじゃないんだけど、またエンドレス三国志は嫌だ。何とか話題を変えたい。
「確かにそうだな、占星術と言って、孔明はそれで赤壁の戦いの際、曹操の寿命はまだあると言う事を占ったそうだな。司馬懿も、大きな流星が落ちるのを見て、孔明が死んだと知ったと言う。戦いで、占星術は重要な役割をになっているな。ヤス、目のつけどころがいいぞ。三国志における他の戦いでも重要な役割を持っていると考えられる。例えば…………」
また、延々と聞くのか!?しかも今日はウララ先生が終了の合図出してくれないぞ!!
「おい、聞いてるのか!?」
「はい、聞いてます!」
「まったく、ヤスは既に『三国志を愛する会』の一員なのだから、その自覚を持つべきだ」
「いつそんな会に入ったの!?俺入会した記憶ないよ!」
「私に三国志について話した時点で入会だ。君は会員6号だな。おめでとう」
そんなにいるんだ!哀れな犠牲者が結構いるもんだ。
「ちなみに、残りのメンバーは私の兄弟だからな。一般人では君が初めてだ、嬉しいぞ」
「嫌だーーーー!!!!」
「嘘をつかなくてもいいぞ、部活の練習中にケンやアオちゃんから聞いた。君は嬉しいのに、嫌って言うそうではないか」
「それが嘘だ!気付けよ!」
「君は照れ屋だな。まあいいさ。それが君の味らしいからな」
「聞けよおい!俺の話を信じろよ!」
俺の周りは俺の話を聞かんやつばっかりだよ!
「怒鳴ってばかりいては、冷静な判断が出来なくなるぞ」
そうだ、落ち着けば俺の話も分かってくれるはずだ!
……すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……よし、落ち着いたぞ。
「それでいいんだ、では話を続けようか。今度はボーッとせずに聞くのだぞ。ヤスも話したくなったら、どんどん口を挟んでくれ」
落ち着いてちゃ駄目じゃん!また三国志の話が始まるよ!
「……ちょっと……」
「占いから見た三国志だったな。占師としては管輅と言う者がいたな。ちゃんと覚えているか?」
「えっと、一応……」
「よし、この管輅という人は……」
始まってしまった……今日は眠れるのかなぁ……。
……その後、ポンポコさんは朝まで語り続けた。
朝になっても部屋に帰ってこないと俺の部屋のクラスメイトと、ポンポコさんの部屋の人が大騒ぎを始め、先生達が捜索を開始。
周りを茂みに囲まれている所だったので中々見つからなかったみたいで、見つかった時にはえらいびっくりされた。
「お前らは何してたんだ!」と散々に怒られ、本当の事を話しても全然信用してもらえなかった。
周りからは白い目で見られるし……。
危うく停学になりかけたけど、
「そんなに言うなら確かめてみればいい、私はまだ……」
「そんなこと言っちゃ駄目ー!!」
怒り始めてたポンポコさんが危ない事をのたまいはじめそうになったので結局うやむやになった。
ほんとになんなんだかなぁ、やってらんないっすよ。