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335話:ライフカード

あの後パクパクと出てくる料理を平らげ、今は家に帰ってきて、ユッチの部屋でくつろいでる。

サツキとユッチも普段着に着替えて動きやすい格好に変わった。

つい先ほど新郎新婦の2人は役所に結婚届を出しに行った。ああ、ほんとに幸せそうな2人組み。背中に羽が生えたみたい。


「おし、サツキ。ネタあわせやるぞ」


ただ招待されるだけじゃなんやら悪いなあという気持ちになり、サツキとお呼ばれされることが決まってから、なんかネタねっかなーと考えて作ってきた。まだちょっとうろ覚えのところがあるので、もう少ししっかりと練りこみたいと思っている。


「ええ? 今やるの? いつ帰ってくるかわかんないじゃん。聞こえちゃうかもしれないし」


「大丈夫だって、まだ当分帰ってこないから」


こっから市役所までは結構な距離がある。それまで何回かネタあわせが出来るはず。


「という訳でユッチ。しっかり見て、面白いかどうか判別してくれよ」


「うん、わかったあ……」


……夕飯にユッチが作るつもりだった料理がほとんどかぶってしまっててめっちゃへこんでしまってる。ここは笑って元気になってもらわないと。


「んじゃいきます。ショートコント、『選択』」


「ああ、ヤスヤス。ちょっといいかね?」


「あ、何でしょうサツキ課長?」


「今日の18時からなのだが、突然先方からどうしても大事な打ち合わせがしたいと連絡があってだな。ヤス、悪いが出席してくれないかね?」


(……な、なんだってー!? 今日はあいつとの大事な大事な結婚記念日だってのに、何でそんなときに限って会議なんて入るんだよ!? せっかく花屋にひまわりの予約までしたってのに……ここはすっぽかそうか。いやいや、すごく重要な案件だって言ってるしな……)


「ん? どうした? 都合でも悪いのかね?」


(……課長にはいつもお世話になってる。だがしかし! 今日だけはダメだろう……いやでも……)


「どうしたのだね?」


(どうすんの!? どうすんの俺!?)


「さあ、ここで皆様にご選択! 出て来たのは4枚のカード! 『正直』『嘘をつく』『笑う』『謝る』、人生はあなたのカードの選択にかかっています! さあさあ、どうすんの!?」


バババッ! と4枚のカードを広げてユッチの前に差し出す俺。けど、ユッチはなかなかカードを選んでくれない。


「うん、いいんじゃないかあ……?」


おいユッチ!? ここでどれか1枚選んでくれよ!? 話が進まないじゃん!?


「ダメだねヤス兄、ユッチ先輩乗り気じゃないもん」


くそお、俺はどんなに頑張ってもオダギリにはなれないというのか……ライフカードネタ。面白いと思ったのに。

ボケッと差し出した4枚のカードを見ているとなんだかむなしくなってきて、とりあえずカードは下におく。


「そういやユッチさあ、トオルお兄さん、今は天にも昇る心地なんだろうな。将来お嫁さんになりたいユッチは、結婚式参加してどんな気分だった?」


「うん、そうだねえ……」


おいユッチ、返事になってないぞ。ちゃんと返事してくれよ。


「ああ、それにしてもあの料理うまかったなあユッチ」


「うん、そうだねえ……」


……意気消沈しすぎだろ。いくらユッチが企画してた料理とかなりかぶっちゃったとしてもだな……ってか、ほとんどの料理がかぶったとか、どんな偶然なんだろう。


「ユッチ先輩、きっとどっかで聞いたんですね。そのメニューが頭になんとなく残っちゃったから、メニューがかぶっちゃったんですよ」


「うん、そうだねえ……」


あかんなあ、せっかくの結婚式なんだから、もっと明るくならないとだぞユッチ。


トントン。


さっきのねたでも笑ってもらえなかったユッチに対して、いかにして元気付けようか考えていたら、ドアをノックする音が聞こえた。

……お、誰だろ? ユッチのお姉さんかな?


「遊んでるところ悪いけどお邪魔しますよ。ええと、ヤス君とサツキちゃんだったかな」


あ、ユッチのお父さんだ。そういやまだきちんと挨拶してなかった……まずったなー。

さっきまでうつむいてたユッチも、ちょっとだけ顔を上げてユッチのお父さんの方を向く。


「あ、ええと……どうもはじめまして。ユッチの友達で近藤康明って言います。ユッチにはいつも学校でお世話になってます」


「こんにちは! ユッチ先輩の後輩で、ヤス兄の妹のサツキです!」


兄妹ともども正座をして深々とお辞儀をしています。お辞儀ってええなあ。相手がどんな顔をしているかわからんですむし。


「ああ、これはご丁寧にどうも。ゆうの父です。いつもゆうから話は聞いてるよ。最近はヤス君とサツキちゃんの話しばっかりだったから気になってたんだ」


ああ、どもども。ありがとうございます。


「お、おとうさん、変な事言わないでよお!?」


ユッチが変なことを言ってなきゃ変なことは言わないさ。


「ところで……ひとつ聞きたいのだが」


あいあい、なんでしょう?


「ゆうとヤス君は付き合ってるのか?」


ん……まあ、もしかしてそういうネタは来るかなあとか思ってたけどな。


「そんな訳ないじゃんかあ! お父さんのバカあ!」


うん、まあそう言う事です。


「だがゆう、付き合ってもいない男友達の家にだな、そんなにほいほいと泊まってもいいのか? ヤス君、君は何を思ってゆうを泊めてた?」


「や、別になんも考えてないです」


……あれ? ユッチのお父さんの顔がちょっとだけ険しくなったぞ。


「ほう? それはつまり、私には話す必要はないということかな?」


あっれえ? なんかすっごい怒ってる?


「お父さんってば、やめてよお。別にヤスは家に泊めてくれただけだってばあ! 何もなかったよお!」


「いやいや、人の娘を捕まえて、半同棲のような生活をしていたのだろう? 私は納得いく話が聞けなければ許せん」


ユッチ、自分の家に居場所がないって家に転がり込んできただけなんだけど……だけど、正直にそれを言ったらすごく機嫌が悪くなるよなあ……ここで俺はどういう選択をするべきなんだ? 後ずさった瞬間、ふと、さっき床においておいたライフカードが手に触れた。そのカードには……『謝る』


「ごめんなさい」


特に理由はないけど、とりあえず謝ってみた。


「『ごめんなさい?』、ヤス君、もしかしてゆうに手を出したのか!? ヤス君!?」


はあう!? もしかして最悪な選択をしてしまったんじゃないのか!?


「何とか言いたまえヤス君!?」


ごめんなさい! さっきのライフカードやりなおさせてください!









……それから30分後、結婚届を出しに行った2人が帰ってきたころにようやく誤解が解けた。

カードの切り方って大事ですね。適当にきっちゃダメですね……。

こんばんは、ルーバランです。


ライフカードのネタ、多分3年位前にかなり話題になったCMです。知らない人ごめんなさいm(_ _)m


それでは今後ともよろしくです。

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