328話:着うたはおっくせんまん
今日は1月16日金曜日。
ダラダラと英語の授業を受けてる途中です。
「と言う訳でここの助詞は should beではなく could beを……」
ふわあ……基本的にウララ先生の授業って面白いんだけど、どうしても文法についてのところは眠くなってしまうな。
何か面白い事ないかなー……。
プッ、プッ、プッ、ポーーーン……プッ、プッ、プッ、ポーーーン……。
うわっ、やばっ。携帯サイレントモードにすんの忘れてた!
「……誰かなー。私の授業中に時報なんて聞いている人は……」
あ、すみません。俺です。
慌てて鞄から携帯を取り出す……こう言う時に限って中々取り出せない、そして今も延々と時報が鳴り続けている。
プッ、プッ、プッ、ポーーーン……プッ、プッ、プッ、ポーーーン……。
とーまーれー! とーまーれー!
「……ヤスく―ん?」
にこやかなウララ先生の顔が恐いっす! そしてみんなのニヤニヤした顔がつらいっす……こっちを見んなあ!
がちゃがちゃと鞄を引っ掻き回して無理くり引っ張りだして音を止める……ふう……ようやく収まった。
「ヤス君、携帯電話、便利だけど時と場合を考えましょうね」
……ういっす……すんませんです。
ようやく英語の授業も終わり、今から昼休み……なんだか英語の授業を受けてる間ずっと針のむしろに座っている気分だったよ。
「ヤス君って、変なのを着信音にしてるんですね」
「だよな、やっぱり変な着信音だなって思ったの俺だけじゃないよな」
ケンもアオちゃんが口を揃えて俺の着信音は変だと言う。別に俺としてはそんな変な感じはしてないんだけどな。
「そかあ? 普通じゃん」
時報、なんかいいじゃん。このなんともしょうもないこの音。脱力感満載。
「ヤス君、今は着メロ、着うた、着うたフル、着ボイスなんてのもあるんですよ? 無料で手に入る携帯サイトも結構あるんですから、そう言うのにしようと思ったりはしないんですか?」
「ううん、全くせんなあ」
着メロ探すのめんどい。もともと入ってたこの時報の着信音で十分かなと思っている。
「知ってるか? ヤスの好きなブルーハーツとかを着メロに出来たりするんだが」
「別に興味ないなあ」
わざわざ携帯でまで聞こうとも思わないし。家に帰ってミニコンポで聞けばいいと思うんだけど、そういうもんじゃないんだろうか?
「ヤス君ってば頭硬いですねえ……ケン君、こういう人には実際に聞いてもらった方がきっと興味を持ちますよ」
「だな。ってかヤス、人がすすめているものをそんなむげに断るのはダメだろ」
いやいや! ってかそっちこそ別に強制じゃないんだから無理矢理やらせようとしないでくれよ。
「ちなみに私の着うたはこれですよ!」
そう言ってアオちゃんが携帯を取り出して、着うた鳴るものを流し始める……。
『マホーウーノコートバー フターリーだけにはわかるー』
……なんだっけこれ? ええと……声は知ってるんだけど……。
「分かんないんですか!? スピッツの『魔法のコトバ』ですよ!」
……ええと……分からん……そんな歌あったっけ?
「映画『ハチミツとクローバー』の主題歌にもなったじゃないですか!?」
「……すまん。そもそも『ハチミツとクローバー』を知らない」
「なんでですか!?」
なんでですかって言われても……ってか、自分が知ってるからって相手も知ってるなんて思わないでくれよ。どんな名曲だとしても、どんな名作だとしても、みんながみんな知ってるなんて事そうそうないんだよ。それが世の中なんだよ。
「分かりました……もう1度ヤス君には色々と叩き込んであげますね」
「やめて!? 何を叩き込むつもりなのさ!?」
「スピッツのよさと少女漫画のよさを骨の髄まで教えてあげますよ」
「いやいや!? 間違ってるから! 娯楽でそんな苦労したくないから!」
「大丈夫です、気付いたら楽しくなってますから」
そんな中毒症状みたいな喜びは嫌だ!
「……まあ……アオちゃんとの事はまた後日決めるとして、次は俺の着うただな」
次はケンか……ってかケン、別に人の着うたを聞く必要なんか全くないと思うんだけど。
そう思いつつも、ケンが紹介したがってるのでとりあえず聞いとく。
「子供の頃、やった事あるよ、色あせた記憶だ。紅白帽頭にウルトラマーンウルトラマーンセブン!」
……ええと? どっかで聞いた事あんな。これ……ロックマンの替え歌だったっけな。
「でも 今じゃそんな事も忘れて 何かにおわれるように毎日生きてる!」
……俺、毎日のんびり生きてるなあ。
「君がくれた勇気は『『おっくせんまん! おっくせんまん!』』」
ええええ!? なになに!? 何かクラスメイトが全員で『おっくせんまん!』の瞬間になったら叫びだした。
何でみんなしてそこだけ声あげんの!?
「ヤス、遅れてんなあ。『おっくせんまん!』のフレーズは耳にした瞬間、みんなして叫ぶのが決まりなんだぞ」
「ほんとかよ!? そんな話聞いた事もねえよ!?」
「ヤス君、流行に敏感に生きないとダメですよ?」
「や、2人揃って俺を嵌めようとしてるだけだろ。それ絶対におかしいから」
「ま、信じなくてもいいけどな」
……へん、誰が信じるかってんだ。
昼休みが終わり、5時間目の授業。
古典の学年主任の先生……ちょっと苦手なんだよなあ。
「さて、漢文と言って最初に思いつく人物と言うのはおそらく孔子、孟子……」
……今は先生が解説をしているけれど、いつあてられるか、いつ問題を解かされるかと全員が戦々恐々としている。この学年ん主任の先生の時だけは誰も寝た事がないんだよな。
「子供の頃、やった事あるよ、色あせた記憶だ。紅白帽頭にウルトラマーンウルトラマーンセブン!」
ケンの鞄から先ほど大音量でなっていた『思い出は億千万』のフレーズが流れ出した。
ケン……俺がウララ先生の授業でミスった事を直後にやらかすなよ。
「……おい、携帯の電源を切っておかなかった奴は誰だ?」
「あ、すいません。俺です」
「……ケンか。さっさときってくれ。これだけ普及してしまったら高校に持ってきている事は仕方ないと諦めているが、授業中は必要ないから必ず電源を切っておくように」
……そう言われつつも、ケンもあたふたしてさっきの俺と同様中々切れないでいる。
おいおい、そろそろあの問題のフレーズのところに来ちゃうぞ。これ、こんな授業中でも叫ばなきゃいけないんだろうか?
そんなことないよな。それはあるわけないだろ……でも、さっきの瞬間クラスメイトがみんなして叫んだ事は事実なんだよな。
……ど、どうしよう!?
「君がくれた勇気は」『おっくせんまん! おっくせんまん!』
「……」
「……」
「……」
「……な、何で誰も叫ばないんだ!?」
「そりゃ授業中だし」
……そりゃそうか。
「ってか何で叫ぶの?」
おい!? さっき思いっきり叫んでたお前が何を言う!?
「ヤス、お前大丈夫か?」
……せ、先生まで……。
いいよいいよ、どうせ俺なんてKYなんだ。
こんばんは、ルーバランです。
自分の携帯の着信音はホントに時報に設定されてたりします(^^;
時報が鳴ってる人見たら私かもしんないです。
それでは今後ともよろしくです。