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320話:誰にだっていろいろあるよね

「はあ……すっきりしましたー」


……俺は疲れたぞ。何で俺のストレス発散に付き合ってくれるはずだったのに、アオちゃんがすっきりしてるんだよ。

あの後もドンドンと太鼓をたたきまくり、ダンスダンスレボリューションで踊りまくり、鍵盤をたたきまくりと、ひたすら音ゲーばかりをまわった。俺最初に音ゲー苦手だって言った気がするのに何で?


「ヤス君、今日はありがとうございました」


お礼言うのは俺の方だったはずなのに……違うよね、何かが違うよね?


「ちょっと私のほうも最近嫌なことがありましてですね。いらいらしてたんですよ」


「そうなんすか」


それで俺に対してなんかいつも以上に毒舌だったんすね。


「年末から年始にかけて、ほんとにいろいろありまして……」


「そうなんすか」


「特に年始はひどかったんですよ」


「そうなんすか」


「……ヤス君、そこは『いったい何があったんですか?』くらい聞いてくれてもよくないですか?」


や、だって聞いたらすごい愚痴につき合わされそうな気がしたんだもん。アオちゃんが聞いてくれって顔でこっちをちらちら見てたのは知ってるけど。


「それでいったい何があったかというとですね」


俺聞きたいなんていってないんだけど。アオちゃんが勝手に独白をはじめていく。


「あれはそう……クリスマスイブのことでした」


クリスマスイブってサツキ達とパーティやった日のことだよな。その日は確かアオちゃんはデートだからって不参加だった。


「あれだろ? 痴話げんかだろ? 犬も食わないといわれているやつだろ?」


「ヤス君、勝手に話をはしょろうとしないでください」


「じゃああれだろ? アッハンウッフンな気持ちになったところでシュバババーンとやろうとしたら、イヤンバカンみたいになってしまい、結局しょぼーんって感じに終わったとかだろ?」


「ヤス君、頭大丈夫ですか?」


ごめんなさい。自分でも途中から何を言っているのかわからなくなりました。


「変な口出しばっかりしてないでちゃんと聞いてくださいよ」


ええ……愚痴に口を挟まず聞き続けるのはめんどくさくてしょうがないんだが。サツキもケンも俺の愚痴にたいして茶化さず聞いたためしがないぞ……聞かなきゃダメか?


「クリスマスイブといったら女の子だったら誰だってあこがれる1日ですよね?」


知らん。とりあえずサツキもユッチもキビ先輩もいつもどおりだったけど。


「15時に待ち合わせだったんですよ。私、楽しみで14時についたんですよ」


……そこは早すぎなんではない? 待ち時間何して過ごすんだろう。


「けれど、15時になっても来ないんです。15時半になっても来ないんです」


「携帯に電話すりゃいいじゃん」


昔の待ち合わせだとどうすればいいか分からないけど、今だったら携帯という便利な道具があるからな。

……ほんと昔の待ち合わせってどうやってやってたんだろう? 携帯をもってしまうと途端に分からなくなる。


「携帯に電話しても出ないんですよ。いつまでたっても『電波の届かないところにいるか……』ってアナウンスが流れてきて」


さいですか。


「結局来たのは17時半ですよ!? どう思います!?」


「大変だったねー」


「……なんかヤス君、ムカつきます」


……えええ、俺どんな反応すりゃいいのさ。これ以上どういう反応もしようがないじゃないか。


「『大変だったね』に心がこもってないんですよ。ほんとにそう思ってるならもっと気持ちを込めていってくださいよ」


「そ、それは、大変だったんだねえ!!」


「……なんかものすごくわざとらしいです」


もういいよ、俺はどうせどんな風に言ったっていちゃもんをつけられるんだよ。そういう星の下に生まれてきたんだよきっと。

……しかし、俺らがジェンガで楽しんでる中、アオちゃんは1人ぽつねんと寒空の中たたずんでいたわけか……ええと、3時間半……ながっ!

やっぱり大変だったんだねえ。


「それで、その後はどうなったんだ?」


「そのまま夕食に行くことになったんですけど、電車は混みますし道には迷いますし予約の時間には遅れましたしで最悪でしたよ」


お疲れっす。そんな思いをするくらいなら家来てパーティに参加しときゃよかったっすね。


「遅刻したことも何にも謝ってくれませんでしたし……ふぅ」


「大変だったんだねえ……」


ここって別れちゃえばええやんと無責任に発言してもいい瞬間なんだろうか?

……よく分からん。そんなに嫌なら別れればいいのに。そうは問屋が卸さないというのが彼氏彼女の事情というやつなのだろうか?


「んで、年明けには何があったん?」


どうしようもなくなったので話題転換。


「ヤス君には前話しましたっけ? うちって母子家庭なんですよ」


ええと、聞いた聞いた。


「それでですね、祖父母とはちょっとずつ仲良くなれてるのですが……」


よかったじゃん。


「叔父叔母従兄弟とはなかなか関係が修復されず……」


叔父叔母従兄弟と仲が悪いと何かきついことでもあるんだろうか? 俺なんて叔父叔母従兄弟の顔すら知らんぞ。


「なんかちくちくというかその場に居づらい雰囲気でして……疲れました」


……そういうものなのか。


「俺んちはおじいちゃんおばあちゃんは既に死んでしまってて、叔父叔母達は海外に行ってるからそういう家のつながりってどういうものなんかよう分からないんすよ」


「あ、そうなんですか?」


そうなんですよ。


「けど、アオちゃんがなんとなく大変なんだろうなあというのは分かる……年末年始、お疲れ様でした」


「……ありがとうございます」


ま、誰にだっていろいろあるよな。明るく振舞ってるアオちゃんにだって悩みがあるもんだ。


「はー……すっきりしました」


アオちゃんの顔がほんとに晴れ晴れとした顔になっている。彼氏には彼氏の愚痴は言えないし、家族に叔父叔母の愚痴は言いづらいし、ずっと自分の中で溜め込んでたんだろうな。ようやく全部吐き出せたって所かな?


「そうか? それは良かった」


「ヤス君ってほんとにいいですね。私、ここまで気兼ねなくなんでも言える人ってヤス君ぐらいしかいないですよ」


ありがとっす。何よりの褒め言葉です。


「これからも愚痴言いたくなったら付き合ってくださいね」


……俺はアオちゃんの愚痴聞き係っすか……ま、とりあえずアオちゃんのストレス発散になったみたいだからいっか。

こんばんは、ルーバランです。


なんでも愚痴れる友達がいるっていいですよね。

「何で何にも話さないんだ! なんでもきいたるから話せよ!」

と怒る人がいるのですが……私は怒ってる人には話せない(−_−;


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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