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32話:集団宿泊研修1日目、昼

今日は4月25日金曜日、今日から集団宿泊研修というものがある。


1年生のみの研修で、期間は4月25日(金)〜4月26日(土)、場所は富士の麓にある国立中央青少年の家と言う施設だ。

学校よりもさらに富士山が近くなり、晴れた時に見るととても綺麗だ。


どんな所かと思い、インターネットで調べてみたら、

スポーツ施設、キャンプ場、宴会場、講堂と他にもたくさんで充実している。

さらに青少年団体は無料で施設を利用できるというお得っぷり!(一般人でも一泊250円!)

食費等の諸経費は実費になるが、それでも安い。宿泊施設には最適だ!!

……ただ、今からここで何をするかと言うと、クラスの親睦を深める為の飯ごう炊飯だ……。

なんでわざわざ富士山の前まで来て、カレーを作らなきゃならんのだ!


「……月に1回は俺、カレー作ってるよ……」


「ほらほら、ブツブツ言ってませんと、早く火をおこして下さい。まだ火がついてないの、私たちの班だけですよ」


「……わかってます……」


アオちゃんが俺にエールを送る。アオちゃんと俺は同じチームだからだ。

今日は、5、6人が1グループになって行動する。グループは出席番号順に割り当てられる。

プリントを見てみるとこんな感じになっていた。


  教室内の様子


    教壇

  □□□□□□

  □□□□□□

窓 □□□□□□ 廊

側 俺ア□□□□ 下

  ■■□□□□ 側

  ■■□□


この俺とアオちゃん、それに■の席の人たちが俺の班の人だ。


「私が火をおこすの代わりましょうか?ヘタクソなヤス君に任せておいたら、いつまでも食べられません」


「……言葉きついですね。でもお願いします」


「うわ、ヘタレです!そこは意地でもやってやるって場面ですよ!」


「……そんな王道なセリフはいらないです。それより早く作って食べる事の方が大事なんですから、代わりましょう。むしろ俺、料理できるんで、食材の方を扱いたいんですが」


「女性に火をつけさせ、男性が食材を扱うなんてセオリーから外れ過ぎですよ!ここは王道らしく、あなたが火をつけて、薪をくべて、汗をかいた所を女性が手ぬぐいで拭いてあげるというシチュエーションを作りましょう!」


なんだその設定は!絶対そんな場面には出くわさないと思う。


「……今は男女平等な世の中です、というか、アオちゃんって少女漫画か、少女向きの小説の読み過ぎだと思います」


しかも、設定が古い気がする、気のせいかな……っと、言い争っている間に火がついたな。


「……じゃあ、火がついたので、後は消さないようにしましょう。アオちゃん、よろしくお願いします」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


俺は無視して食材が置いてある方へ向かう。俺と同じ班の人達が、やっててくれているはず。

行ってみたら、まあちゃんとしてた。用意していたのが、女子だけなのが気になるが…………。男子はどこへいったんだ?


「ちょっと、猫娘!なんでこっち来てるの?あなたの担当は火でしょ!猫が熱いの苦手だからって逃げちゃ駄目じゃない!」


「……え?火がついたからこっちを手伝おうと思いまして……って、なんで猫娘なんですか?」


熱いの苦手って……いや、確かに猫舌だけどさ。それは舌だ!


「猫娘って実は馬鹿でしょ?あっちをアオちゃん1人にしちゃ駄目じゃない!あんた分かってんの?あの子の二つ名は<天然>なのよ!」


「いや、何かする訳……」


アオちゃんならやりかねん!


「ほら、分かったらさっさと戻りなさい!」


「…………」


俺は言われた通り、戻る事にした。











戻ってみたんだが…………アオちゃん、何をした?火柱が立ってる!!!キャンプファイヤー以上の燃えっぷりだ!


「アオちゃん!何をしたの!?」


「薪をたくさん入れてたら消えそうになっちゃいましたので、油を入れたらまた燃えてくれるかなって思って……で、そこにある油を入れちゃいました」


そう言って、指差したのはガソリン携行缶と呼ばれるもの…………やばい!!


「これ油じゃないよ、ガソリンじゃん!!こんな時にボケないで!早く消さないと!水持ってきて!」


「水ですね!バケツリレーなんて初めてです!」


「嬉しそうに言うな!」


タタタッと走っていって、バケツじゃないけどホースを2本持ってきた。既に水を出してるみたいで、勢いよく水が出ている。ナイスだ!

バケツより強力じゃないか!

ホースを片方を受け取り、火が出てる方に向ける。


「よっしゃ行くぞ!」


「イエッサー!隊長!」


入り口を狭め、どどどどっ!っとホースから水が飛び出る。

よし、この勢いなら消えるはずだ!


……………………


………………??


あれ、消えない!何で!?これだけ水当てたら消えるでしょ?


「隊長!消えるどころか燃え広がっております!」


「きっと水の量が足りないんだ!隊員一号アオちゃん!もっとホース持ってこーい!!」


「サー、イエッサー!」


……そして今度はホースを5本持ってきてくれた。全部で7本だ。よし、これならいける!


「放水構え!」


「サー!」


「発射!!!」


「ラジャー!!!」


2人で計7本のホースを操作する。

よし、これで火が、…………広がった!


「何で?まだ水が足りないと言うのか!?」


「あ、隊長!忘れておりましたが、ガソリンの炎は、水では消えません!」


「先に言えこのドアホーーーーッ!!!!!!」


「……隊長!火が先ほどの油に届きそうです!」


あれ?あのガソリン缶、ふたが開いてるじゃん?


「やばい!間に合わない!!総員退避ーーーー!!!!」


「ラジャー!!!」


ガソリン缶にたどり着いた炎は、ボンッ!!!と燃え上がった。しかもこっち、風下だ!俺たちのほうに炎が来てるよ!!


もう一目散に逃げた。明日の朝事件になってようが知った事か!怖いんだよ!炎が俺たちを食べにきてるんだよ!!!
















はぁ、はぁ、はぁ………もう息もたえだえになりながら、2人で木陰に腰を下ろす。

富士山は雲がかかってて、てっぺんまでは見えないけど、俺たちを見下ろしてる。


「………はぁ、はぁ、アオちゃん、大丈夫?」


「…………だい、じょう、ぶで、すよ……」


「……きつそうだね、はぁ、はぁ………」


その後、2人とも呼吸が整うまでゆっくりと待つ。


「……アオちゃん、もう大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


「…………」


「…………」


「……くくっ」


「……ふふっ」


『あははっあはははっああっはははは!!!』


や、経験ないかな?こうとにかくめちゃくちゃ怖くって、何とか乗り切ると、もう怖いを通り越して笑っちゃうしかないって言う経験。


「この馬鹿野郎。アオちゃんのせいで、大火傷になるとこだった」


「水、水って騒いで被害を大きくしたのはヤス君ですよ」


「知らなかったんだからしょうがないだろう、だいたいアオちゃん、知ってたんだったらさっさと言えよ」


「あの時はもうパニックになっちゃってて、ど忘れしてたんですよ」


「嘘付け!すごく嬉しそうにしてたじゃん、しかも隊長って何だ隊長って」


「違いますよ、パニックになると笑っちゃうしかないじゃないですか。ヤス君だって、隊員!ってノッてましたよ」


「あのテンションじゃないと、あの場でやってけ無かったんだ、しょうがないだろ」


「…………」


「…………」


「…………お互いが悪いってことにしましょう」


「…………そうだな」


ふう、思いっきり笑ったら、すっきりしてしまった。


「…………やっと、普通に話せました」


「ん?何の事だ?」


「……だって、ヤス君、ずっと私に対してだけは敬語で話すんですよ。ケン君やヤマピョン、つい最近知り合ったユッチにまで普通にしゃべってるのに、私にだけ敬語なんですもん、悔しくって」


あ、そういや今アオちゃんに対して敬語使うの忘れてた。


「でも、アオちゃんだって使ってるじゃん、敬語」


「私の場合は癖なんですよ。ちっちゃい頃、妹と私と、よく大人達と話をしなきゃいけなかったんですけど、どうしても子供って馬鹿にされるじゃないですか?妹は、言葉が遅かったので余計馬鹿にされちゃってて。そんな時、どうしたら馬鹿にされないかって……妹をどうやって守ろうって考えてて、大人達のしゃべり方を真似たんです。……あんまり効果無かったんですけどね。それがいつの間にか癖になっちゃってて」


……意外だった、いつもホワワンとしてたから、苦労なんて無いんだろうなと思ってみてたけど、すごい苦労してんだな。そう思ったけど、それは口には出しては言わなかった。同情なんていらないはず。

だから、すごいお姉さんっぽいんだな。


「今後は、私に敬語使わないでくださいね」


「……ああ、分かったよ、これでいいだろ?」


「もちろんです!これでようやく友達ですね!」


そっか……友達になったのか。ケン以外の友達なんていらないって思ってたけど、高校の友達一号って訳だ。

……うーん、ぶっちゃけ延々と警戒するのは肩こるし、親しくなったらちゃんとまともに接するようにするかな。


「よろしく……ってそういや、あの火事どうなったんだろ!?」


「あ、忘れてました!まずいです!」


「戻るぞ!」


「はい!」










…………あの後、ワーワーやっている俺たちを見て、火事に気付いたクラスメイトが、いち早く先生とここの施設の人に伝えて、急いで消火器を持ってきたそうだ。俺たちが逃げた後、すぐに火災は消し止められたらしい。


もちろん俺たちは、火災を起こした事、逃げ出した事をこってりと絞られた。ごめんなさい。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
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ええじゃないか
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