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314話:マーフィーカルタ

ユッチがすやすやと寝始めたら、さつきも一緒に寝息を立てている……。

2人並んで眠ってると、ほんとに姉妹みたいに見えてくるな、ユッチのが妹に見えるけど。



……ああああ、ユッチってばこんなにヨダレたらして。ついでに髪もぼさぼさじゃん。寝癖だらけだぞ。

ヨダレをふきふき。髪をときとき。


「んがあ……ふぐぅ……」


……なんだその訳の分からん唸り声は。まったくしょうがないやっちゃなあ。


「ヤス兄ってばそんな風にしてると、ユッチ先輩のお父さんみたいだねー」


……サツキってば起きてたのね。ってかやめてくれい。ユッチと俺は同い年だ。親子に見られるのは心外だ。


「ほんと、ユッチ先輩みたいな妹がいたらいいのにね。いよいよお母さんに頑張ってもらわないと」


……サツキ、どんなに子供っぽく見えてもユッチは年上だからな。なんか発言が変だからな。









「んあああ……よく寝たあ、ヤスう、今何時い?」


「ほんとよく寝てたなあ……もうすぐ19時だぞ」


俺んちはもう夕飯食べ終わってしまった。ユッチも起こそうかと思ったんだけど、あんまりにもぐっすり眠ってるもんだから、ついつい起こしそびれてしまった。


「ふわあ……ボク、そろそろ帰らないといけないんだあ……」


「さっきユッチの家にも電話しといたから。ユッチのお姉さんが『泊まってきてもいいよ』って言ってたぞ」


「でもお……」


「ってか今帰ったら俺んち来て寝ただけじゃん。駄目だろそれじゃ。せっかく来たんだからもっと遊んでけよ」


「ふわあ……ありがとお……」


……まだ寝ぼけてるな。


「ところでユッチ、お正月と聞いて連想するものはなんだ?」


「かちぐりい」


……確かに勝栗はおせち料理のひとつにあるけどさ。なかなか渋いチョイスだな。


「他には?」


「かまぼこお」


「他には?」


「こぶまきい」


「他には?」


「くりきんとーん」


「他には? ってかおせち料理ばっかじゃん」


「それじゃあ……おもちい」


「……他には?」


「ぜんざーい」


「…………他には?」


「おぞうにー」


くいもんばっかやん。この食いしん坊め。


「ユッチ先輩、食べ物以外では何がありますか?」


「ええとお……初日の出だあ」


「他には?」


「ふくぶくろお」


「他には?」


「おそまつう」


それを言うなら門松かな。ううん……なかなか俺らが期待するセリフを言ってくれないなあ。


「ユッチ先輩、カルタやりませんか?」


「あ、やるやるう!」


……痺れを切らしたサツキが先に言ってしまった。まあいいけど。


「それでそれで? どんなカルタなんだあ?」


「マーフィーカルタって言うのがありましたので、それをやりたいんですよ」


「まーふぃー? まーふぃーってなんだあ?」


あ、ユッチは知らないかあ。


「ま、やってみりゃどんなのかわかるから。やらない?」


「うん、やるやるう!」





……という訳で、ユッチと俺とサツキの3人で、カルタ開始。読み手は母さん。


「ふふん、『お手つきユッチ』って呼ばれた腕を見せてあげるんだからあ!」


駄目じゃん。なんかめちゃくちゃ弱そうだぞ。


『キャンプで食べるレトルトカレーはものすごくおいしい ひとり部屋で食べるレトルトカレーはものすごくむなしい』


……長いな。


「ええとええとお……」


「はいっ! 残念、お手つきすら出来なかったなユッチ」


「うううう、次はボクが取ってやるんだからあ!」


……でも、なんでレトルトカレーってキャンプで食べるとあんなにおいしく感じるんだろう?



『いくをカタカナで書くと卑猥』


「はいはいい! へっへえ、どうだヤスう!」


……ユッチ、そんなに張り切ってとらなくてもいいぞ。


「ねえねえヤスう、『イク!』って卑猥? 『イクう!』……ねえ、今卑猥に聞こえたあ?」


……ユッチ、俺にそんなこと聞かないでくれよ。俺はどんな反応すればいいんだよ。


「ヤスってばなんで無視するんだよお?」


……無視させてくれよ! そこは無視だって! 母さん、早く次読んで次!



『今年の流行語大賞は来年の死語である』


「はいっと。これわかるー。芸人で来年見ないなんてことざらだもんね。私もやっと1枚取れたよー」


……頑張れ芸人さん。


『一発屋といわれている人でも一発当てただけすごい』


……そやね。ほとんど当てた人いないね。


「はいっ、これあんまりマーフィーっぽくないねー」




『みんなやってるって言うみんなは大抵2、3人である』


「はい……お母さんにおもちゃねだったときって大抵そうだったよねー」


「そうそう、ケンの家で遊んだゲームが欲しくなったときとか、ケンしかもってなかったのに……」


……なんか母さんの目がものすごくきつくなったんですが。昔のことなんだから許してやってよ、母さん。



『年上のギャグは笑えない』


「はいっ! まさにヤス兄のことだね」


「うっさいよ! しかもサツキ反応早すぎだし!」


「これだけはとらないとって思ってたんだよねー」


どれだけ笑えないと思ってるんだよ。なんか腹立つー。もういいよ、次だ次だ。



『ヤマザキ一番と、マーフィーの法則は、なんとなく似ている』


「はいっ!」


……おいおい、マーフィーカルタ。そんな事書いていいんかい。ヤマザキから訴えられるっすよ。



『すべての商品は、次なるサービスのために問題点を作っておくものである』


「……ええとお……どこだあ?」


ユッチの左手の真下にあるのに……ユッチが気づいてない、取れない。





『男は一度女性に生まれ変わってみたいと思っている。しかしその動機は不純である』


「はいっ……おいこら、何でみんなして俺の方を見る?」


「ヤス兄もそうなのかなあって思って」


……邪推するのはやめてくれ。


「俺はあんまり思ったこと無いけど」


「あんまりってことは1度はあるんだー?」


……ええ、そりゃありますよ。悪いか。



『2人の出会いは運命だと言ったカップルが、分かれると運命は偶然になる』


「はいっ……そう言えばアオちゃんって、付き合うたびに運命っていってるよお」


アオちゃん、運命っていくつあるんだよ。



『対岸の火事ほど面白いものは無い』


「はいっ……これは真理だね」


「うん、真理だ」


「えええ? ヤスもサツキちゃんもひどいんだあ!?」


ええ? ひどいかなあ?


「ユッチ先輩、30mくらい離れたところで『ひどい……私との関係は遊びだったのね!』『そ、そんなことないさあ』って全くの他人の修羅場を見てるの面白くないですか?」


「そ、そんなことないよお」


ふ、悩んだな。その時点で対岸の火事は面白いと思っている人間の1人ってことだな。








そして最後の1枚……カルタは最後の一枚になったときは反応速度だけが勝負だ。枚数を数えたところ、サツキ18枚、俺17枚、ユッチ11枚……俺の勝ちはもうないんだけど、せめて最後の一枚くらいとってやりたいと思ってしまう。さあ、母さん……読んでくれ。


『マーフィーの法則は宇宙の法則』


3人の手がいっせいに動く。


『はいっ!』


ぱしぱしぱしんっ!


……3人の手を見てみると、ユッチの手が一番下にある。


「やったあ! ボクの勝ちい!」


……負けたかあ。なんかこれだけ喜んでいるユッチを見ると、取った枚数は勝ってるのに負けた気分になるから不思議だ。

試合に勝って勝負に負けた、そんな気分だ。


「もう1回やろお! もう1回!」


おし、もう1回やるか! 次は1番になってやるからな。

こんばんは、ルーバランです。


マーフィーの法則 嘉門達夫

歌にもなってます。半分くらい歌詞からの引用です……歌詞というのか微妙ですが。


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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