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3話:入学式

入学式はつらい。

普通は、入学式にいる生徒たちは、校長先生の話を聞く気はなくても、聞いているポーズをとる事くらいはしているだろう。


今回、実際に俺は校長先生の話は聞いていた。


「1年生諸君、入学おめでとう。桜は残念ながらもう散ってしまっているが、君たちの桜は咲いて何より……」


うーん、上手いことを言ったのか微妙なラインなセリフを残したな。


「……ですね。今日はこのように晴れ渡って、天気も君たちをお祝いしています……」


小学生の運動会の時に言いそうなセリフだな、しかもさっき空見たら、いきなり雲が出てきて、しっかり曇りになってしまっていたが。


「……この高校では全校生徒が校技として茶道と弓道を体験します……」


へー、そうなんだ。どっちも経験ないな。でも、弓道ってそんな簡単に身に付くもんなんかな。


「……。今年の3月、私の初孫が生まれました。ぱっちりしたおめめのかわいい女の子です。息子夫婦は私に命名してくれって言ってくれて、3月3日に生まれたから、ひなたってつけました。目に入れても痛くないほどかわいいんです。将来あなたたちが求婚してこようとお前らなんぞには絶対にやらん!……」


いきなり話変わった! なんで孫娘の話!? 赤ん坊がかわいいのは分かるけど、俺たちが求婚したら、年の差15だよ!

いや、年の差15って意外といるけど、今から狙うってどんだけロリコンだよ!? 最後口調変わり過ぎだよ校長!!


「……孫についてはそう言うことです。話は変わりますが、この高校では、約4分の3の数の人は卒業後4年生の大学に進学しています……」


多いんか少ないんかよく分からない数字だな。進学校ではないんだろうが……


「……しかし、高校という物は学業を修めるだけの所ではありません、部活動やクラス活動を通じ、集団での行動、そして得られる達成感というものも学んでいって欲しいと思います。」


何言ってんだか。そんなもんある訳がないだろ。集団行動なんて面倒臭さとうっとうしさしかないって。


「そこで、せっかくの高校生活なのですから、我が校では1年生には全員部活動に参加してもらっています」


なに!? 何でそんな事になってんだよ!? 普通高校に入ったら、放課後なんて自由になるに決まってるだろ!? おかしいってこの高校! 帰宅部がよかったのに!


「……。1年生の皆さん、これから3年間、頑張っていきましょう。以上を持ちまして、校長式辞といたします。」


そこそこに拍手をして、礼をする。

ふう、大体7〜8分くらいだったかな。

世間一般の校長先生の式辞がどんなもんかしらないが、10分以内なら許容範囲だろう。

途中、変な脱線もあったおかげでなんとか聞き続ける事ができたな。10分間もまじめな話を続けられたら、正直聞いていられない。


この後のPTA会長の祝辞も普通に進んだし、このまま終われば普通の入学式として印象に残らなかっただろう。


「新入生誓いの言葉。新入生代表、1年1組、谷田太郎君」


「はい!」


頭が坊主のガタイのいい少年が席を立った。ガタイがいいと言うか太っていると言うか微妙な体型だ。


そして、壇上にあがり、第一声を叫んだ。


「僕は『ドカベン』に憧れています!」


…………。


知らねえよ! だからどうしたよ!


「あの作品はすばらしい! 野球漫画の筆頭に挙げられます! 他の野球漫画何ぞ目じゃありません!」


今、『星飛雄馬』や、『MAJOR』とかが好きな人を敵に回したぞあいつ。

俺は野球漫画なら『ラストイニング』がお気に入りなんだが。

ま、漫画と現実は全然別物だけどな。


「あの作品のもっともすばらしい点の一つは、『山田太郎』こと『ドカベン』との対決です!他の選手達が、いかにしてドカベンを打ち取るか、そこに水島先生の知恵が積み込まれています。」


もういいよ、いつまで語る気だよ。


「そして…………だからこそあの時ドカベンは、………プロ野球編になってからも……」











…………はっ!いかん、気付いたら意識が飛んでいた。


周りを見ると、聞いている人は誰一人としていやしない。

かと言って、雑談を許されるような雰囲気ではなく、ただただやつの大声だけが体育館内に響く。

教師達ですら、目が空ろになっている。

誰か、あいつをとめようとする挑戦者はいないのか……。









  


「だから、僕はサッカー部に入って、平成のサカベンになるのです!以上!1年1組、谷田太郎!」


やっと終わった。

なんて無駄に長いんだ。1時間20分もしゃべり続けやがった。

しかも野球部じゃなくてサッカー部なんだ……最後サカベンになってたし、サカベンって何だよサカベンって。今年のサッカー部かわいそうに。あんな変なやつが入部するなんてな。

もちろん拍手なんておきるはずもなく……


おきてるよ! まばらだけどめちゃくちゃ強く拍手してるヤツがいるよ!

なんなんだあいつら? あいつらもドカベンに憧れている奴らか?

あいつらまでサッカー部に入ったら、今年のサッカー部はすごい事になるな。








予定時間を1時間もオーバーして入学式が終わり、教室に帰るため、ケンと廊下を歩いていた。

他の生徒達も、順次帰ろうと、式のときの静かな時間はもうなくなり、ざわざわとそこかしこで話をしていた。


「ヤス、やつはありえないだろー」


「だよなー。俺、式の途中意識が飛んだ」


「1組は災難だな、あいつがいる訳だろ。学校にいる間中あのテンションを続けられたら、ちょっとつらい」


「ケンはほぼずっとハイテンションだろ、ケンならあいつに対抗できるんじゃないのか?」


「ヤスってほんと毒を吐くよな、その毒っぷりを他のヤツラにも見せつけてやれよ」


と、その途中、中学校の時同じ部活だった同級生が前を歩いていた。

ケンは声をかけようとしていたが、俺は気付かなかった振りをしてこそっと気付かれないように教室を目指した。

ケンは俺に何か言いたそうな顔をしていたが、結局何も言わずに俺と一緒に教室にきてくれた。

ケンの言いたい事は分かっている。お前が気にしすぎる事はないって言いたいんだと思う。

でも……無意識にさけてしまう。


まあ、単純に中学校のときの苦い思い出ってだけなんだけどな。


こんにちは、ルーバランです。


ほとんどの学園物の小説って1日目って絶対に長くなりますよね。


私の場合もやっぱり長くなってます。


小説内の時間進行は遅いですが、のんびりとみてやってください。

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カカの天下
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