282話:グチグチ
12月1日。とうとう今年も残り1ヶ月になりました。
やっぱり冬ともなってくるとちょっと寒いっすね……。
既に部活は始まっていて、現在ウォーミングアップ中。今ちょうどジョグが終わってストレッチ。
今日は初めに短距離メンバーとフォーム修正のドリルをしてから練習に入る……ちなみに60分ジョグ。
ゴロンと土の上に寝転がったら何かうとうとしてしまう。
「……ヤス、眠そうだなあ」
「……ユッチもな」
「……ユッチ、ヤス、ぼーっとしてて大丈夫か?」
「ポンポコさん、ごめん、眠い……ふぁああ」
ポンポコさんの顔を見ながら大あくび。
「ボクもお……ふわあ」
その後ユッチも大あくび
あくびって伝染するなあ。
「……ユッチもヤスもやる気はなしか? それなら帰ればいい」
「いやいや! やる気ありありっすよ! そんな帰れなんて言わないで!」
結構傷つきますから!
「そうだよお! 後5分経ったら元気になるんだからあ!」
「今の2人は眠りたいようにしか見えないな」
「6時限目があんまりにも退屈だったんだよ、そこで寝ちゃったせいで未だに引きずってるっぽい」
「ボクもボクも。ボクなんか5時間目からずっと寝てたあ」
……それは寝すぎだろ。……寝る子は育つって言うのに、ユッチ育ってないなあ……閑話休題。
「しょうのないやつらだ」
「……しょうがないじゃん。だって先生の声が子守唄でさあ。『ゆーりかごーのー 歌をー カーナリアーがー歌うよー』って聞いてる気分だった」
「そうだよねえ……どうして先生の声って子守唄ばっかりに聞こえるんだろお?」
ユッチってほとんどの授業で寝てんのか?
「ユッチは子守唄に聞こえない先生っていないの?」
「ウララ先生と学年主任の先生はずっと起きてるよお? あ、あと理科のキキ先生と体育のチチ先生と家庭科のトト先生、音楽のララ先生は起きてる」
結構起きてるやん。
「起きれない先生の授業って何?」
「ええっと……オーラルコミュニケーション、数学、現代社会、情報、現国……それだけかなあ」
「ああ、数学のあの先生は気持ちはすごく分かる、俺んとこの6時間目はまさにその先生が授業だったんだよ」
あれで最後まで聞いていられる人はきっと異世界人だ。
「……2人の気持ちは分かるが」
「だろ? クラスの半分以上が寝てたし、起きてた人も携帯いじってたり、本読んでたり……ああいう先生って何考えてんだろう」
うちのクラスがおかしい訳じゃないぞ、ほとんどの人が起きて聞いてる授業もあるんだから。
「私たちが授業を聞いてなくても、どうでもいいのだろう。どれだけ適当な授業をしていても給料はもらえる」
……金か。
「ボクそんな先生いやだあ。なんで先生になったんだろお?」
だよな……そんな先生、教えるって立場についちゃ駄目だろ。
「失業がないからではないか?」
「それなら市役所とか、別の公務員になればいいのに」
大企業の正社員でもクビってそんなにないんじゃないのか? よう知らん。
「私たち学生に希望を見出せなくなったのではないか?」
……いやいや。先生がそれを思ったらおしまいだろ。
「他には……給料が他の公務員より高いからではないか?」
「ええ? 先生って残業代でないからむしろ他の公務員より安いらしいよ」
「……そうなのか?」
「そうだぞ。特に部活動。ウララ先生なんて、土曜日俺達の部活動見てくれても、手当てが1200円しかつかないらしいよ」
「えええ!? そうなのお!?」
「そうだぞユッチ」
「ウララ先生、土曜日の部活終わったあと、時々ボク達にご飯おごってくれるよお?」
「それをやったら赤字だよな。部活動の顧問なんて、お金のこと考えたら絶対割に合わないぞ」
「そうだったんだあ……そんなこと聞いたらウララ先生と土曜日、ご飯食べにいけないよお」
「前にウララ先生に聞いたら『あはは、子供が遠慮なんてするな! 申し訳ないって思わないでほしいなあ。どうしても気になるんだったら、お返しに頑張ってくれたらそれでいいよ』って言ってた」
「……うん、ボク今日からもっと頑張るう!」
うん、頑張ろう……それにしても、そうやって頑張ってる先生がいる中、頑張らない先生って何考えてんだろうね。
他の先生を見てて何も感じないんだろうか。古典の学年主任とか、すごい丁寧な授業をする。
学年主任は、とにかく俺らの手と口を動かす。毎回小テスト実施し、全員で音読し、鬼のような量の演習プリントを作成してやらせて……寝る暇ねえもんなあ。
「あんまりにもつまらなくって、全員が眠ってたり内職してても気にせず授業をする先生を弾劾するシステムってないんかなあ」
「単純な事ではないか。先生に『先生の授業はつまらない。ちゃんと授業しろ』と宣言すればいいのではないか?」
「……後々怖いやん。問題児になりたくないし」
「ヤスは反省文、何百枚も書いているのだろ? すでに問題児だ。今更ではないか?」
……まあ、書いてるけどさあ。問題児って言わないでくれ。
「ヤス、言ってみてよお。ボクも今度言うからさあ」
「……分かった。いつか先生に宣言してみる」
あの先生の授業ずっと聞いてるのも苦痛だもんな……どうなるかなあ。
「さてユッチ、ヤス。駄目先生を愚痴りたくなるのは分かるが、自分自身が頑張ってからだな。ヤスはジョグ120分行こうか」
「何で倍!?」
「ヤス、『目上の人に文句を言う時は、目上の人の1.5倍の働きを見せるか、目上の人より2倍頑張らなければならない』と言う格言があるのだぞ。だから倍だ」
「……初めて聞いた」
「ボクもお」
……俺、無知やなあ。
「私が作ったからな」
「ポンポコさんかよ!?」
そりゃ知らねえよ!
「しかし、文句を言うなら、自分がこれだけやってからだと、私は思う」
んだな……選挙権あんのに行かなくって『今の政治家腐ってる』ってわめいたって誰も聞く耳持たねえさな……俺選挙権ないのに何考えてんだ、そんな大人にならないように頑張ろう。
……おし、頑張るべ。
おはようございます、ルーバランです。
部活動の手当て、平成21年あたりから(すみません、きちんと調べてないので正確な日時は知りません)2400円に増額されたらしいです。作中は平成20年12月1日の話なので、1200円と書いております。
・部活動指導業務手当
4時間 2,400 円
6時間 3,000 円
けど、部活動手当てを増やして教員特別手当というのが減ったとか読みましたが……本当なのでしょうか? 仕事から帰ったらもうちょっと調べてみよう。
それでは今後ともよろしくです。