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272話:見て見ぬふり

11月26日水曜日。

今週になって気分を一新して部活にきてくれっかなあと期待してたんだけど、残念ながら昨日の部活でも、ヤマピョンもポンポコさんも部活に来なかった。

ついでにどうでもいい話だけど、1時間目の理科担当、キキ先生も授業に来ていない。家庭の都合でいったん家に帰ったためにこれなくなったんだとか……家庭の都合って何なんだろうね?

おかげさまでただいま自習の時間。そういえばムムちゃんとはあれから会ってないけど元気にしてるのかな?


「アオちゃん、ポンポコさんからなんで部活に来てないのか聞いてない?」


「さあ、特に詳しい話は聞いてませんが。でもポンポコさんは今日から部活に来るらしいですよ?」


そか、ポンポコさんは今日から部活に来てくれるんか。


「『なぜ私がヤスとヤマピョンのためにこんなに苦労しなければならないのだ。もう知らん』とぶつぶつ文句を言ってましたが、ヤマピョン君と何かあったんですか?」


「いや? まったくした覚えがない」


「忘れてしまっただけなんじゃないですか? いじめたほうはいじめたことをすぐ忘れてしまいますが、いじめられたほうはいじめられたことをいつまでも覚えているといいますよ?」


「……俺、そんなにいじめっ子になりそうな雰囲気に見える?」


ちょっとショック。俺、いじめようなんて思った事はないぞ。ヤマピョンをいじめた事だってもちろんまったくない。


「うーん、そうですね。どちらかというとヤス君はクラスでいじめられている人を見て見ぬ振りして、『どうか俺に火の粉が降ってきませんように』と祈っている人な気がします」


「ええと、たぶん現場に直面したらその通りやり過ごす気がするんだけど……そこまではっきり言われるとちょっとへこみます」


「ダメですよ、やっぱり正義感たっぷりに腕を振り上げて『やめるんだお前たち!』って言わないと」


「アオちゃんがやれば?」


「……ヤス君って冷たいです」


だって、注意したことで一緒になっていじめられるの怖いじゃん。ビバ、見てみぬふり。


「それにさアオちゃん、高校生にもなってクラスでいじめをしようなんて人はそうそういないでしょ?」


「そんなことないですよ。たとえいじめはなくても、見てみぬふりをついしてしまう場面はたくさんありますよ」


「ええ? なんかあるか?」


「デパートで迷子になってぐずっている男の子」


「きっと時間がなんとかしてくれるよ」


アオちゃんからすっごい冷たい目で見られた。

……つい、口から本音が。だって迷子なのかどうなのかなんて見てるだけじゃわからんやん。

飴落っことして泣いてるだけなのかもしれないし。


「先生に後輩が無実の罪でものすごく怒られていました。無実を晴らせるのはヤス君だけです。ヤス君ならどうしますか?」


「後で大変だったねーってなぐさめとく」


その場で無理やりかばおうとしたって『第3者は黙っとけー!』と火に油を注ぐようなもんやん。


「目の前で空き缶のポイ捨てをしてる人がいました。ヤス君ならどうしますか?」


「とりあえず空き缶を拾っといて、コンビニに通りかかったら捨てとく」


「ポイ捨てした人はどうするんです?」


「別にどうも? なんか注意すんの、めんどいし」


きっと言っても治らない。人は変わらない。ごみを拾っただけでも俺は偉い。


「さっきからヤス君、最低です。ヤス君なんて、痴漢にあってる女性がいても見てみぬふりだったりする人なんですよ」


「いやいや! そんなことないっす! サツキがあってたらその痴漢ぶっとばす」


「見知らぬ女性だったら?」


「がんばろー」


身内、友達だったら助けるけど、まったく見ず知らずの人が痴漢にあっててもなあ……その痴漢がナイフとか持ってたらどうすんの? 正義感ぶって怪我とかしたら洒落にならんっすよ? しかも痴漢ってきっとほかの人が見てもいまいちわからないよ? 満員電車だったらなおさらだよなー。 ま、きっと俺より腕力が強くって、正義感が強い誰かが助けてくれるさ、がんばろー……なかなか嫌なやつだな、俺。


「私だったら?」


「がんばろー」


「ヤス君、ぶん殴っていいですか?」


アオちゃんがにっこり笑って握りこぶしを作っている……めっちゃ怖いです。

ごめんなさい、冗談です。アオちゃんだったらがんばります。


「いいです。ヤス君がそういう人だって言うことはわかりましたから」


どうやら呆れられたようだ。でもしょうがないんです、それが俺なんです。


「それでは最後にもうひとつだけいいですか? 学校の校門前でうろうろして、いかにも迷子みたいで、水色の幼稚園の制服を来て、黄色い帽子をかぶって、帽子からツインテールをのぞかせてる幼い女の子を見かけましたらどうしますか?」


……アオちゃん、やけに具体的だな。もしかして校門前に誰かいんの?

なんだかアオちゃんの言葉が気になって、窓越しに校門前を見てみた……確かにさっきアオちゃんが言っていた特徴のツインテールの女の子がうろうろしてる。……後姿だけじゃ誰かわからないなあ。こっちむかないかな?

…………あ、向いた。


「あっ!」


ムムちゃん! 何でこんなとこにきてるの!? 何をどう考えても幼稚園の時間だろ?

ほんとに迷子なんかもしれんと心配になって、あわてて席を立ってざわついてる教室から飛び出す。


階段下りて、下駄箱前に来て、靴履き替えて校門前まで走る。近くまで来て見ると今にも泣きそうな顔になっているムムちゃん。


「おひさ、ムムちゃん」


とりあえず、軽く声をかけてみる。


「……ふえ? ……あー! ヤスおにいちゃんー!」


「……」


「……どーしたのー? とつぜん笑い出してー?」


「や、なんでもないっす」


……いけない、おにいちゃんと呼ばれて喜んでる俺がいる。妹喫茶というものが商売で成り立つ理由を感じてしまった。

瞬間的ににやけてしまった顔をとりあえず元通りにする。……絶対俺今変な顔してるよ。


「ムムちゃん、こんなとこでどした?」


「んーとね! パパがおべんとうを忘れたのー」


「そかー」


キキ先生、あわてんぼうだねー。


「それでムムね、『はじめてのおつかい』にちょうせんしたのー!」


「そかー」


はじめてのおつかいね、俺が始めてのお使いをしたのは5歳のころだったような……ちょっと自慢だったのに、うしろでこっそり母さんがついてきてたことに気づいたときはショックだったよな。


「1人でここまで来たんだよー、えらいでしょ!」


「そかー……1人でかー。お母さんとお父さんはー?」


やばい、語尾がうつってる。


「ないしょー! パパをびっくりさせようと思って!」


…………え?

や、それってさ、普通に考えて…………迷子?


「ムムちゃん、迷子?」


「迷子じゃないよー? ないしょできただけだもん」


それが迷子だから! 隣のトトロのめいちゃんと一緒じゃないっすか!? 今頃村で総出でムムちゃん探してるっす!


「ムムちゃん! すぐにお母さんに電話しよ! 学校にいるよーって! 電話番号わかる!?」


「ムム、知らないよー?」


ああ、もう!


「職員室いこ職員室! ムムちゃん探してるよ」


「ムムあしいたいー。おんぶー」


「はいはい、おんぶ!」


ムムちゃんを背中に乗せて、職員室へダッシュ。


「わー! ヤスおにいちゃんはやーい! もっともっと!」


あいあーい……って思ってたら、キャーキャーさけぶムムちゃんが気になったみたいで、そこらじゅうの窓から授業中にもかかわらず学生と先生の顔、顔、顔……。

なんか、今後激しく誤解される気がしてしょうがない。


「ムムちゃん! だまってつかまってろい!」


「ヤスおにいちゃんが怒ったー!」


さらに大声でさけぶムムちゃん……誤解が起きないことを祈っています。







やっぱりムムちゃんは迷子になっていたらしく、ご近所さんがみんなで家事をほっぽって探してたらしい。

キキ先生が迎えに来たときは、ムムちゃんは自分と職員室でジュースを飲んでました。

この心配してるのに……とキキ先生が怒りたいけど、見つかってよかったと喜んでて、ものすごい複雑な顔をしてた……や、まあ見つかってよかったね。


そして、オチというかなんと言うか……。


「あ、ロリ君、お疲れ様です」


「……アオちゃん? なにそのあだ名は」


「幼女に対しては見て見ぬふりをせず真っ先に飛び出していったヤス君は、今後ロリ君と呼ぼうと思いまして。クラス全員一致で可決ですよ」


……やめてください。それこそがいじめじゃないでしょうか?

こんにちは、ルーバランです。


昨日おとといと投稿できず、申し訳ありません。

7時出勤の12時帰宅でしたので……と言い訳です、これからがんばります。


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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