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27話:新入生歓迎会、自己紹介

俺の恥ずかしい暴露が終わった後、1年生の面々が順々に発表していく。


1年3組以外のメンバーは、ほとんどあだ名なんて決まっていなかったので、まずは1年3組からの発表だ。


「1年3組、あだ名は<ケン>、二つ名は<忠犬>、やりたい種目は短距離で、今まで野球部だったから陸上経験はありません。俺はウララセンセと永遠の愛を育む事を誓います!」


おい、こんな場で告白かよ!玉砕に決まってんじゃん!


「はい、次はマルちゃんね」


ウララ先生、スルーかよ!あんなに頑張ってたのに……、ケンっておちゃらけてるけど、そこまで言った事は無いんだぞ!せめて思いっきり振ってやれよ!

……あ、ケンがショボーンとしてる……可哀想に……。


「1年3組、あだ名は<マルちゃん>、二つ名は<緑のタヌキ>、やる種目は長距離で、ずっと帰宅部なので、陸上経験どころか運動経験がほとんどありません。……僕は太ってるので、やせる事が目的です。ヤスに無理矢理連れてこられただけなのですが、そんなのは忘れて精一杯頑張ります」


俺を悪者にするな!わざわざ悪評を垂れ流すのは止めてくれ。実は無理矢理連れてきたの、根に持ってんのか?でも、あの時はしょうがなかったんだ。


「1年3組、あだ名は<アオちゃん>、二つ名は<天然>、私は短距離志望です。今まで吹奏楽部でしたのでマルちゃんと同じく、陸上経験はありません。私もヤス君に迫られて、今ここに居ます。ユウと一緒に頑張っていこうと思いますのでよろしくお願いします」


アオちゃん、君は俺をどうしたいんだ!?

確かに俺は吹奏楽部にするか、陸上部にするか答えを聞いたよ?だから、今言った事は間違いじゃないと思う。

でも、言い方があるだろ!?その言い方は別の意味に感じるぞ!ここに居た8割の人間がこっちを軽蔑の目で見たぞ!

特にどこからかはわからなかったが、殺気が感じられた気がする……。ユウって言うアオちゃんの彼氏かな?嫉妬か?

……勘弁してくれよ、一瞬寒気がしたぞ……。


ここで、1年3組は打ち止めだ。


あと、あだ名がついてるのは、さっきからずっとへばりついて俺の隣に座っているヤマピョンくらいなんだろうが……、こいつがちゃんと自己紹介できる気がしない。

と思っていたら、別のテーブルのとこからガタンと立ち上がった女子生徒が俺を睨みつけてきた。

一言で言えば超ちびっ子。二言目を言うなら、色黒。

目はおおきく、ちょっとつりあがっていてきつそうな印象を受ける。今は睨まれているからなおさらだ。かわいいんだけど、高校生には見えない。小学生に見える。

第一印象では、すごい元気そうな子だなあ。

ってか何で俺は睨まれているんだろう?

じっと見てたら、俺に向かって叫んだ。


「1年2組、さっき、話にも出てきたユウこと<ユッチ>!二つ名は<黒の弾丸>!!今まで短距離やってきたからこれからも短距離!中学校3年間陸上部だったから、陸上経験は3年。去年の県大会決勝のリレーの時に、バトンを落として失格になったから、雪辱を果たすのが目的だったけど……もうひとつ目的が増えた……それは、ヤス!お前をつぶす事だ!!お前みたいな変態に、アオちゃんは渡さない!!」


「ちょっと待て、俺はまともだ!変態なんかじゃない!」


変態扱いされたままなのは、いくら人誤解されたままでは嫌だったので、つい立ち上がってユッチと自称したやつを見据えて怒鳴る。

そういえば、アオちゃんの言ってたユウというのは、女だったんだな。きっと彼氏だと思っていたが、親友だったか。

確かに、ユウという名前の女性、友や優衣と言う字を書く人もいるもんな。

……ところで、さっきから新入生歓迎会のはずなのに、なぜこんなに矢面に立たなくてはならないんだ……歓迎会ってのは祝われる事ではなくて、罵倒される事だったんだな……。


「嘘をつけ!さっきも女の顔に、自分の何も履いてない股をなすり付けたって宣言して、アオちゃんに無理矢理迫ったりしたって言われてたじゃないか。それのどこが変態じゃないんだ!?」


勘弁して下さい……一つ目のは事故です、そんな卑猥な言い方を女の子が叫ばないで……。

二つ目のはアオちゃんの言い方がまずかっただけです……。しかも無理矢理って言ったのはアオちゃんじゃないよ!


「ついでにアオちゃんから聞いたぞ!お前、中3の頃に、中2の妹の寝込みを襲ったらしいじゃないか!」


ザワッと陸上部員達がどよめく。……今日俺は、一体どれくらいの汚名をかぶればいいんだ……。


「襲ってない!誤解だ!」


「そうそう、襲ってないよ」


ケンが先ほどまでショボンとしてたが、復活して俺を笑顔で援護してくれた。ナイスだ!ケン!今、お前は俺の天使だ!


「ヤスはただ一緒に寝ただけだよ、妹を抱きしめて」


一瞬でこいつは俺を奈落の底へ突き落とした。くそ、さっきの笑顔は天使みたいだったけど、実際は悪魔の笑顔だったんだな。

ってか何でそこまで知ってるんだよ!事実だから言い返せんじゃないか!


「俺を罵声から助けてくれるんじゃないのかよ!」


「何を言う、こんな良いいじる機会から、何故わざわざ救わなきゃいけないんだ」


もう、どうにでもなれという感じだ……。これ以上、俺の評判が下がる事は無いだろう……なぜなら既に最底辺だからだ。


「一瞬でもお前を天使だと思った俺が間違いだった」


「天使か、いい響きだ、確かに俺は天使かもしれない。……天界のしがらみから地面に降り立った墮天使と言うやつさ」


「訳わかんねーよ!」


俺はケンとのいつものやりとりで、この場をごまかそうと試みた。だが、黒い弾丸ことユッチはそんな俺の狙いを弾丸のごとく粉々にぶち壊す。


「とにかく、お前はボクの敵だ!半径10メートル以内に入るなよ!アオちゃんにも同様だ!」


「いや、お前はともかく、アオちゃんは席が隣なんだけど……第一、今多分距離は10メートル無いぞ」


「っ!うるさい!減らず口を叩くなあ!この馬鹿!あほ!まぬけ!オタンコナス!お前なんか嫌いだあ!!」


そう言ってがたんと席に着いた。

最後のはガキのケンカだったな……ずいぶんと長い自己紹介になった。


ユッチの二つ名、黒い弾丸というのは言い得て妙だな。髪の色も真っ黒な上に、肌の色も日に焼けていて黒い、いや、この時期に日に焼けているのは変だから、地肌が黒いのか?

しかも、弾丸のように自分の意見をこれと決めたら、てこでも動きそうにない。猪突猛進とはユッチのようなやつにある言葉だ。


「はい、次の人〜、どんどん言っちゃって下さいね〜」


……ウララ先生は本当にマイペースな方ですね。



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