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258話:ここ知り!

「みなさん、こんにちは! 司会のトクです!」


「こんにちは、アシスタントのメイです」


「今日も元気よく、私トクとメイの2人で『ここ知り!』をお送りいたします」


「『今日も』って今日がはじめてですよ?」


「……メイさん、ちょっといいかい?」


「なんですか? そんな小声でしゃべったら何も聞こえません」


「聞こえないようにしゃべっているの! いいか、ようく聞くんだ。この世はウソの上にウソが何重にも塗り固められてできているんだ」


「そ、そうだったんですか?」


「そうに決まっているじゃないか。例えば、全然人気がなくて今にも打ち切りになりそうな漫画でも必ず『大好評連載中!』という決まり文句がいたるところに書かれている」


「そ、そういえばそうですね」


「映画でも、『10月1日公開!』というCMが作られていると、必ず10月1日にはどれだけ映画館に閑古鳥が鳴いていようが『大ヒット上映中!』になる」


「大ヒット上映中というところがウソなんですね!」


「そうだ。わかってきたじゃないか、それでこそ俺のアシスタントだ」


「ありがとうございます! トクさん」


「おし。それでは気を取り直して……このコーナーは視聴者の皆様方が知らないから知りたい! と言う事をメール・手紙・もしくはFAXで送っていただいて、それに私たちが答えると言うかたちでお送りします」


「私たちが知らなかったらどうするんですか? トクさん」


「……メイ、ちょっと頭だせ」


「はい、出しました」


「脳天ビリビリ頭突きい!!!」


「痛いっ! 痛いです、トクさん! 私Mじゃありません。いじめないでください!」


「いいか、ようく聞くんだ。俺たちが知らないって言った時点で、このコーナーの存在意義がなくなるんだ」


「何でですか?」


「なぜなら、ここに送られてくるメールや手紙は、何か答えがほしいから送ってくるんだ。そんな癒しを求めて送っていただいたメールに『僕しらなーい』が通用すると思うな。知らなければ必死で調べて、その上で返答をするんだ」


「め、目からうろこが落ちました……トクさんはそんなにも皆様のことを考えていたんですね。今の今まであんた何様と思ってましたけど」


「……メイさんや、もう一回頭突きされたいみたいだな?」


「いえいえ! もう十分です!」


「おし、仕切りなおして……それでは早速記念すべき第1回目の質問から! ペンネーム匿名希望さんから『来年大学を卒業なんですが、就職面接に落ちてばかりなんです……どうすれば受かりますか?』」


「……」


「……」


「……い、いきなり重い話題ですね」


「まさかこんなところにこんなメールが届くなんて思ってなかったな」


「ですよね。『うちの犬の名前はどんなのがいいでしょうか?』のようなしょうもない話題だけだと思ってました」


「俺たちこそ、この業界をなめていたな」


「それで、自虐はこのくらいにして、どんな風に答えるんですか?」


「……そうだなあ、ぶっちゃけ俺自身が第1志望落ちたんだよなあ。それで今ここにいるんだが」


「そんな事ぶっちゃけちゃ駄目ですよ! 第2志望でいやいやここにいるみたいじゃないですか!」


「入ってから好きになったからいいの」


「……ああいえばこういう人ですね。トクさんは」


「うるさい。ちなみに『必ず受かる面接必勝法』、俺第1志望受ける前に読んだけど、何にも参考にならなかったなあ」


「本の意味ってないですねえ」


「そうそう、それで本を書いた人にクレームを入れたって、別に就職先がみつかる訳でもないからなあ。『あんた本当に私の書いたとおりの事をやったの?』って言われるだけで終わりだろうしな。」


「トクさん、それってこの質問に対して、『面接に正解なんてないんだ』って言って逃げるつもりですか」


「いやいや、そんなことはない。ええと……すごい単刀直入って事を言うと、『運がよければ、きっとある』」


「それ言っちゃったらどうしようもないじゃないですか」


「でもきっと事実。どんだけ不景気でも、ハローワークの求人はなくならない。んでだな大企業を選ばず、地元を選ばず、給料を考えず、でも辞めずにすみそうなところ……と自分の中にある無意識の条件を1個1個削っていくと、何かがきっと見つかる」


「いま、1個条件残しましたよね。というか、そんな事いっても資格を持ってなかったらなれない職業も多いですよ?」


「看護士や医者や弁護士はそうだよな。だけどさそうじゃない職業もいっぱいあるわけじゃん? 『俺は事務になりたいんだ』とか『絶対コンサルに入りたい』とか職種を自分の中で制限してると思うんだよ。例えば面接で『私、大学時代にロボットに関する研究をしていました。なので、機械いじりなら普通の人には負けません』と宣言するわけだよ」


「そうですね」


「でもさ、大学でどんな研究してようが、同じ事を企業に入ってからできると思うことが間違いなんだよな。大学の研究なんてほとんど役に立たないと思うほうが正しいぞ」


「トクさん、大学の存在を全否定ですか?」


「そんなことは言わないっすよ。けど、そうやって大学時代の経験を……なんて考えずに職種を選ばずなんでも受けてみるときっと何かある」


「やっぱり大学の存在を全否定じゃないですか」

「……メイさん、あんたもしつこいっすね。大学とは知識だけを学ぶところじゃないんだよ。それだったら専門学校や資格学校とどんな違いがあるんだ? むしろ専門学校のが実用的なことを教えてくれるかもしれんぞ」


「トクさん、どこまで大学の存在を否定するんですか」


「最後まで話しは聞いてくれい。大学とは『考え方』を学ぶ場なんすよ。高校までは与えられた課題をこなすというのが基本的なスタンス」


「はいはい」

「大学の研究は、テーマから研究の仕方まで、全部自分で考えて構築していくんすよ。この過程において、いかにして自分で考えてどうすればよりよい成果が得られるかということを考える頭ができるわけっすよ」


「はぁ……」


「こら、メイさん。4大卒なのになんで意味がわからないというホケッとした顔をしているんだよ」


「私の卒論、英語の本の翻訳して終わりでしたもん」


「……それ卒論ちゃうやろ」


「私の友達、いろんな論文をコピペして作って提出して卒業してましたよ?」


「それ剽窃ひょうせつだから! 論文で絶対にやっちゃいけないタブーっすよ!?」


「みんなやってましたよ?」


「どこの大学やねん」


「匿名希望です」


「ち、うまい逃げ口上を……と話がそれましたな。面接に受からないって言ってるこの匿名希望さんが『いろんなところを受けたけど、みんな落ちました』というなら、やっぱり面接がよくないのかな?」


「面接って基本的には化かしあいですよね」


「ま、そだな。でも俺は『どんな資格を持っていますか?』で『映画検定と時刻表検定です』と答えた」


「トクさん、あなた馬鹿ですか?」


「盛り上がったぞ? 『時刻表検定って何!?』って」


「人事の方、やさしいですね」


「履歴書の自己PRに『あんまりウソつかないことです』って書いたら『あんまりって何? それを書くならせめて普通は1回もって書かない?』って質問された。『1回もウソついたことがないって言ったらそれがウソになりますから。だからあんまりって書きました』って答えた。大笑いされた」


「普通そんなこと書きませんよね。そういうのを馬鹿正直と言うと思います」


「『うちのほかにもエントリーシート出してますよね。どこ出してますか?』って聞かれた後、『そのうち第1志望はどこですか?』と聞かれて『○○です』って別の名前を言った」


「……よくそんなんで受かりましたね。そこは嘘でも『御社です』って言いません?」


「その後、『うちが内定出した後、第1志望受かったらどうしますか?』って聞かれて、『……………………………………第1志望に行きます』って言った。でも受かった」


「……トクさん。あなた、就職なめてますね。この就職氷河期になんて事を言ってるんですか!」

「なあ、受かってびっくりした。ええと、後で人事の人に聞いたら、『その素直さがわかりやすくてよかった』って笑ってた」


「……こんなやつを受からした人事を恨みます」


「メイさん、なにやら不穏な言葉が聞こえましたが?」


「気のせいです」


「……まあいいや。俺が受かる理由も別に普通だぞ。俺が入社する前年、『御社命です!』『受かったら絶対にここ来ます!』って言って受からせた人が、全部大企業に内定決まった途端『やっぱりやめます』のメール1回で音信不通になったんだって」


「学生不信になりますね」


「だろ? これだけ分かりやすい俺が受かるって言うのも、企業のニーズとあっていたのだ!」


「でも、面接はなめてますよね。なんで映画検定ですか」


「うっさい、俺より最近の人のほうが就職なめてる。履歴書に印鑑押すとこあるやん。シャチハタ押してくる馬鹿がいたり」


「ほんとですか?」


「ほんとほんと。ほかにも履歴書に顔写真はってきてねって書いたら、証明写真じゃなくてスナップ写真を貼ってきたり。証明写真でもスーツじゃなくて私服のを貼ってきたり」


「そんな馬鹿いるんですか?」


「いるいる。誤字があっても、書き直ししなかったり。鉛筆で書いてきたやつもいた。最悪なのはミノ虫を書いてきたやつ」


「すごいですね」


「面接のときに、私服で着たり」


「さすがにこの匿名希望さんもそのあたりはちゃんとしてるんじゃないですか?」


「後さ、面接のときにいきなり『面接の練習できました』って言ったり」


「落ちますね」


「ハローワークにもホームページにもちゃんと書いてあるのに『初任給いくらですか?』って聞いてきたり」


「それも落ちますね、最低限の調べはしとかないと。ですよね」


「『必ず受かる合格マニュアル』って本の文例を復唱されたり」


「面接官、そんなのまで目を通してるんでしょうか」


「さあ? 俺は偶然読んでたから、その瞬間に落とすことにしたけど」


「……なかなか厳しいですね」


「やる気のないやつは捨て置くさ。ほかには……『1分程度で自己PRをしてください』って聞いたら『私、負けず嫌いです』の一言で終わったり」


「もうちょっとがんばってほしいですね」

「そだな。あとは口べたでいいから本当にあった具体例をちょっとくらい言ってほしいなあ。『負けず嫌いなんです。バスケットで負けてたとき、ついムキになっちゃって、ルーズボールの取り合いで相手をふっ飛ばしちゃいました。でもそれぐらい勝ちたいって気持ちは人には負けません』とか。上手なウソつかれると、判断のしようがなくなって困るけど」


「ただ『負けず嫌い』って言うだけじゃなくって、何か例を入れるんですね」


「そうそう、その人その後、『残業多いけど大丈夫?』って聞いたら『残業はしたくありません』って答えた」


「いままでのやり取りでどれだけ好印象でも残業に耐えられなくてやめるかもって思います」


「『最後になりますが、質問はありますか?』って聞いたら『特にありません』って答えた」


「やる気ないんでしょうか?」


「『最後になりますが、質問はありますか?』って聞いたら『受かりますか?』って聞かれた」


「すごいこと聞く人いますね。なんて答えたんですか?」


「『今、落ちました』って言おうと思ったけど、『回答をお待ちください』って答えた」


「トクさん、意外と無難な答えをしますね」


「面接のときは面接受ける側もなんだかんだ言って普通はまじめ。なので、何百人と受けてこようとできる限りこちらも誠意を持って対応するのが俺のポリシー」


「トクさん、変なこだわりが多いですよね。だから女性にもてないんですよ」


「うるさい。俺のことはどうでもいいだろう、今は匿名希望さんの質問に答えましょう。ぶっつけ本番だと、素人が見てもまずいんじゃん? と思うミスがあったりするので、面接の練習はやった方がいいよな。それと1人で面接の練習やってると、自分じゃわからないミスがあったりするから、まじめないい先輩や、社会人に面接の練習をしてもらうといいと思うよ」


「突然トクさんがまともなことを言い始めました。びっくりです」


「メイさん、後で覚えておけよ……長くなりましたが、そろそろまとめますか。匿名希望さんの質問に答えると『場所を選ぶな、職種を選ぶな、面接の練習は誰かに見てもらいながらしろ、条件は選べ、でも聞くな、そうすればいつか受かる』くらいでいいかな?」


「いいと思います」


「長くなったあ……メイさんや、今回は質問1個で終わりですな」

「そうですね、トクさんの無駄話がなかったらもう1つ2つ質問に答えられたと思いますが」


「メイさん、後で反省会だからな」


「……トクさん、こわいです」


「それではまた今度!」










変なコンビだったなあ……また今度も聞いてみよ。

おはようございます、ルーバランです。


トクさんの話は8割は実話です。創作も混じってますから、全部を信じないでくださいね。


それでは今後ともよろしくです

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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