表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/442

253話:ただいまアップ中

「ヤス兄! 今2区のノンキ先輩に渡ったよ!」


……ふう、タスキがつながったか。正直キャプテンの実力、まったく知らないもんだからつながらないかもとひやひやしてた。本当によかった。

今はアップのジョギングが終わって、サツキの隣でストレッチしてる。1区が今走り終わったって事は、2区が大体10分程度、3区が27分程度として……俺のスタートまで40分ってとこか。


「キャプテンのタイムってどのくらい?」


「んー、正確な時間はわかんないけど、 38分くらいって聞いたよ、区間順位は……45位だって。下から6番目だね」


「つながってくれればいいよ」


一番悔しいのは途中棄権になってタスキがつながらないこと。

もちろん、その選手の体が第一優先だから、走れないと思ったら走らせちゃ駄目なんだろうけど。


「ヤス兄、ノンキ先輩って速いの?」


「んーと……一緒に練習してないから全然知らないけど、確かそんなに速くなかった気がする」


むしろ遅かった気がする。新人戦で800mに出場して予選落ちしてた記憶がかすかにある。


「ヤス兄がタスキもらうの、下から数えての順位になりそうだね」


「しょうがない、それだけの練習しかしてこなかったんだし……まあ、上位で来られたら来られたですごいプレッシャーになるから、下位でいいよ。その方が気楽に走れるし」


ちょっと後ろ向きな返答。でもそれが事実。


「……ヤス兄さ。今年はもうどうしようもないけど、来年、どうするの?」


「……来年?」


来年のことなんて考えたこともない。来年なんかあったっけ?


「んーとね、来年だけじゃなくってね。毎年12月頃には御殿場市で駅伝大会やってたりするでしょ?」


「ん、そういやそだな」


毎年御殿場市で駅伝が開かれてる。区間は6区間、総距離30キロだとか。小学生から40歳以上の大人まで参加してる地元に根付いた大会。確か今年で第16回大会になるはず……。


「ポンポコ先輩に教えてもらったんだけど、伊東市でも駅伝があったり、浜名湖一週駅伝とかもあるらしいよ」


へえ、冬ってそんなに駅伝があるんか。


「大山高校も、そういった駅伝大会に出場してるんだ。でも、今のままじゃやっぱり最下位争いしかできないと思うんだ。ヤマピョン先輩と一緒に練習するようになって、ヤス兄はそれで満足してるかもしれないけど……駅伝って1人や2人じゃ絶対勝てないよ」


「ま、そだな」


「でしょ? だったら、キャプテンもノンキ先輩も巻き込んでさ。もっと頑張ってみてよ」


……うーん……めんどい。


「ポンポコ先輩、前に言ってたんだよね。『マラソンや普通のトラック競技は、1人1人でやる競技なのだ。凡人がどんなに頑張っても絶対的な才能を持った化け物が勝ってしまう。でも、リレーや駅伝なら、勝てるチャンスが残るのだ。一人一人が少しずつタイムを縮めるだけで、チームとしてものすごくタイムが伸びる。それこそが駅伝やリレーの面白さだと私は思う。凡人が天才に勝てる瞬間、私は見てみたいのだ』って」


へえ……。


「ヤス兄、去年の静岡高校駅伝の優勝タイム、知ってる?」


「や、まったく知らん」


「2時間13分32秒! さあヤス兄、大体1キロ当たり何分だと思う?」


えっとえっと……。


「3分10秒くらいかな」


「そうそう! って事はね。単純計算すると、1人1人が5000mで15分50秒で走れれば、静岡県高校駅伝では優勝できるんだよ!」


や、そんな夢みたいな計算法があってたまるかい。

15分50秒を出すこと自体がめっちゃ大変な上に、その実力を持った人間を7人そろえないと静岡では優勝できないんだろ。

そういうのをとらぬ狸の皮算用って言うんだぞ。


「ポンポコ先輩言ってたよ。15分50秒は簡単じゃないかもしれないけど、練習しだいで誰もが狙えるタイムだって」


「誰もがって……才能ある人なら誰もがとかじゃないの?」


「そんなことないよ、小学校のとき、徒競走がクラスで下から数えて何番目みたいな人でも出せるタイムなのだぞって言ってたもん」


……なんだその具体例は。


「ポンポコ先輩にいいかっこしたいんでしょ? ポンポコ先輩だって最下位争いのチームを指導してるより、上位を狙うチームと頑張ってくほうが絶対に面白いと思うんだ。ヤス兄だってそう思うでしょ、私もヤス兄がチームを引っ張ってってほしいなあ……あ、ケンちゃんから電話きたから出るね」


……はあ……最初は自分ひとりが頑張ってれば、サツキもポンポコさんも満足してたのに、いつの間にかみんなにも頑張ってもらえるよう頑張れって……要求あがってんなあ。

サツキの期待には絶対答えてやりたいけど……大変だなあ。


ストレッチを終え、もう一度軽くジョグをした後、流しに入る……うん、体は重くない。調子も悪くない。

やってやる……やってやるぞ。


「ヤス兄、ついさっきノンキ先輩がヤマピョン先輩にタスキをつないだって! 今順位は46位! ノンキ先輩、1人抜かれちゃったみたいだね」


そか、ノンキ、お疲れ。そしてヤマピョン、頑張れ。

いよいよ俺の番が近づいてきた……。


おはようございます、ルーバランです。


どうでもいいこと。きしもっちゃん、ワンニャンコ、ツボ、ヨッシーは大学時代の自分や友達のあだ名です。


それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ