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252話:駅伝、開始

それぞれの区間に散る前に、いったん長距離部員全員が小笠原総合運動公園、入り口前に集合する。2年の先輩達、ノンキ、マルちゃん、ヤマピョンは俺が来たときにはすでに全員そろってた。

短距離部員は今日は任意参加。と言ってもユッチ、アオちゃんをはじめほとんどの部員が応援に駆けつけてきてくれてる、ありがとうございます。


「みんな、おはよ!」


『おはようございます!』


ウララ先生のはきはきした挨拶。それに対して自分らも元気な声で返事する。


「いい天気になってよかったねー。今日は気温20度越えるんだって。絶好の大会日和! 今日は長距離のみんなが主役なんだから、思いっきり走って思いっきり玉砕してきてね!」


玉砕って……当たって砕けちゃ駄目だろ!


「私自身長距離種目は完全な素人で、どんな練習をすればいいかわかってない現状がずっと続いてます。練習も短距離中心に指導する毎日が続いてて、長距離の練習を見ることができず、とても申し訳なく思ってます」


ウララ先生、そんな自分を卑下しちゃ駄目だろ。


「そんな中、自分たちで自分なりに練習を考えて、今日までやってきてくれてありがとう」


や、ども、そんなに褒められると照れます……って俺自身は自分でなんも考えてないけど。ポンポコさんに全部考えてもらってるだけだし。


「今、長距離内、ちょっとゴタゴタしてるけど……人それぞれ、思いようはさまざまだもんね。ゴタゴタしてるのはしょうがないです。走るのが好きだから走ると言う人、自分の限界に挑戦するのが好きだと言う人、勝つのが好きだと言う人、声援を浴びたくて走る人、応援がうれしくて走る人、Mだから走る人、そこに道があるから走る人、特に目的もなく、友達が陸上部にいたから陸上部を選んだ人、親にスポーツを勧められてなんとなく陸上に入った人、健康のために陸上を始めた人、美容のために走る人、やせるために走る人……みんな何で陸上を始めたか、なんでここにいるのか、理由はそれぞれ違うけど、駅伝のいいところって、そんな人たちがひとつの目標に向かって頑張れるところ。だと思うのね」


……なるほどなあ……ばらばらなメンバーがタスキを通じてひとつになれる……ちょっといい話な気がする。

『Mだから走る』とか言わなきゃなあ……もっといい話になった気がするんだけど。


「今日は長距離のみんな、理由はばらばらでもひとつの目標に向かって頑張ってください!」


『はい!』


「いい返事ね、陸上部員一同、精一杯応援します!」


『はい!』


さ、頑張るべ。







時刻は11時30分。

そろそろ1区のスタートの時間が近づいてきた。

今はもう俺は自分の区間のスタート地点近くに来て待機してる。他のメンバーも全員移動した。

キャプテン、10キロ走れるのかな? ……キャプテンが10キロ走ってる姿見たことないんだけど。練習中に区間距離以上の距離を走ってないと、その距離は走れないってポンポコさんからよく聞くんだけど……それが事実だと自分までタスキがつながらないなんてことないよな。


「ヤス兄、緊張してる?」


いろいろなことを堂々巡りに考えていたら、サツキに声をかけられた。

走る人にはそれぞれ付き添いがついてる。キャプテンのところにはゴーヤ先輩。ノンキのところにはマルちゃん。ヤマピョンのところにはケン。俺の付き添いにはサツキが来てくれた。

俺が走りきった4区と5区の中継点ではワンニャンコ先輩と、ポンポコさんが待っている。

付き添いになっている人以外は、走るコースのいろんなところに散って、それぞれの携帯で、現在何キロ地点通過、現在何位。と言うことを伝えてくれる。


「緊張してるって言うか……心配してる。俺のとこまでタスキがつながるかなあって。その後に自分がタスキつなげられっかなあって」


「大丈夫だよ。いつもどおりのことをすれば、いつもどおりの結果がかえってくるんだよ。ヤス兄は今まで毎日10キロ、12キロ、15キロ、20キロって距離を走ってきてるんだから、それに比べれば8キロなんて短すぎだよ」


ん、まあそりゃそっか。


「大会で実力以上の結果が出せるって言うのは、本当にごく一部の人間だよって私思うんだ。どんなスポーツでも、練習でやってきた結果がすべてだよ」


ん、まあそりゃそうだ。


「ヤス兄は頑張ってきた。だから大丈夫!」


サツキに太鼓判を押してもらえると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議。


「サツキ、今何時?」


「今11時43分、あと2分でスタートだね」


後2分かあ……今回の参加校は46チームにオープン参加が4チーム。スタート位置は陸上競技場内からスタート、最初にトラックを一周してから、公園内のロードコースになる。去年、うちのチームは下から数えての順位だったから、今年のスタート位置は2列目だ。

ううん……頑張って真ん中ぐらいの順位に入りたいなあ……。


「11時45分、先輩がスタートした時間から俺もアップ開始するから」


「りょーかい」


後1分……俺にとって初めての駅伝が始まる。なんでも初めてってのはどきどきする。


…………30秒前……20秒前……10秒前……いま、一斉にスタートした。

頑張れ、先輩。

おはようございます、ルーバランです。


『Mだから走る』……10000mの試合開始前に審判に言われた言葉です。


「長距離選手はみんなMだよなー。この炎天下の中、10000mも延々と走るなんて正気の沙汰じゃねえよ。Mじゃなきゃできねえよ。ほんとお前らMだよなー。頑張れよー」


と言われた記憶があります。激励のつもりだったんだろうなあ……。


それでは。

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