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251話:高校駅伝、当日

2008年11月2日。

とうとうこの日が来てしまった。駅伝当日だ……。

準備は昨日の夜のうちにした、ゼッケンつけた。靴持った。タオル持った。

忘れ物はない……ないとわかっているのにさっきから荷物チェックをしに何度もリュックを開け閉めしてる。


できるだけのことやった……かもしれない。

やるだけやったと言い切れない自分が悲しい。振り返ればあれもできたんじゃないかとかこれもできたんじゃないかとか、そんな考えばかりが浮かんでしまう。やり残したことなんて何もないよなんて言葉、いっぺんでいいから言ってみたいすよ。

あああ、もうめっちゃネガティブになってしまってる。大体こういう考えしてる時ってのは負ける時なんだよな。テストでも『あれをもう少し見てたらその先に答えが載っていたはずなのに!』とか思うことがしばしばあるもん。そういう時は大抵テストの点も悪いんだよ。

まあ、自信満々のときも大抵油断して負けるんだけど……負けることばっかりが頭に浮かんできちまうなあ……くそお。


「ヤス兄、緊張しすぎだよ。今からそんなに緊張しててどうするの?」


「サツキ、そんなこと言ってもだな、緊張してしまうものは緊張してしまうんだぞ。サツキもテニス、東海大会出場してたときは緊張してただろ?」


「緊張してたけど、ヤス兄ほどじゃなかった気がするー」


ウソ付け、東海大会では緊張して実力発揮できない飯終わっちゃったくせに。

……人間ってのどもと過ぎれば熱さを忘れるもんだ。

誰かが言っていた。『緊張を楽しめ!』前にも思ったことかもしれない。でも思うだけで、いつも楽しめないまま時間だけが過ぎていく。

ああもう! さっきからばてて倒れて道端にうずくまって棄権してる自分の姿ばっかり想像しちまう! うがあ!


「あー、あー、マイクテスト、マイクテスト。サツキ少佐、ただいまの時刻を報告する。ただいま日本時間にして6時44分26秒である。さて、ヤス2等兵のミッションスタートの時刻はいったい何時であるか? どうぞー」


こらケン、誰が2等兵だ。誰が。それにトランシーバー持ってるわけでもないのに目の前で会話してるんだから『どうぞー』とか言うなよ。


「11時45分00秒であります! ケンちゃん大佐! どうぞー」


そうだな、男子駅伝のスタート時間が確か11時45分だった。ちなみに俺は4区だからその1時間ちょっと後にスタートだな。


「すなわち、後5時間もあるということだ」


5時間前から緊張してんなよー。って和ませてくれるんだろうが、それぐらいで緊張が解けたら誰も緊張しないって。


「これから5時間もの間、サツキ少佐と俺はこのヤス2等兵の放つ重苦しい空気に耐えねばならぬのだろうか? どう思う? サツキ少佐」


「そのとおりであります! 拷問なのであります!」


「……お前ら! ちょっとは俺のこと励ましてくれるとかないの!?」


くそお、信じてたのに。もっと重苦しい空気を吐き出してやる。


「多数決なんだからこれ以上暗くならないようにしろよ。むしろ明るくなれって」


「いやじゃ。多数決なんてくそくらえじゃ」


「民主主義は多数決なんだぞ。すべての物事は多数決にて決定されていく。少数意見のものは殺されるんだぞ」


……いや、それはありえないから。ってかそれってまんま『キノの旅』のパクリだろ。

昨日夜遅くまで居間でサツキと2人でずっとごそごそしてると思ったら、ずっと『キノの旅』を見てたのか……ここは『多数決の国』じゃないんだから。勘弁してくれよ。


「とまあ、冗談はこれくらいにしといてさ。そろそろ家でねえ? 集合時間に間に合わなくなるだろ?」


……あんまり冗談に聞こえなかったのは俺だけだろうか?









向かう先は小笠山総合運動公園。電車に揺られながらあたりを見渡す。

自分と同じようにジャージ姿の人もちらほら見られる。きっとあいつらも駅伝出場するんだろうなあ。何でみんな早そうに見えるんだろう? ヨワヨワしたランナーってどっかにいないかなあ?


「ヤス兄、走順ってもう決まってるの?」


「そりゃ決まってる。このプリントに載ってるけど……見るか?」


サツキにプリントを渡す。サツキはまだ長距離部員、誰も知らんだろうから興味ない気がしてたんだけど、そんなに見たかったんか?


-----


1区

走者:キャプテン(2年)

距離:10キロ

区間:小笠山総合運動公園静岡スタジアム 〜 小笠山総合運動公園内


2区

走者:ノンキ(1年)

距離:3キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園内


3区

走者:ヤマピョン(1年)

距離:8.0975キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園内


4区

走者:ヤス(1年)

距離:8.0975キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園内


5区

走者:ワンニャンコ(2年)

距離:3キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園内


6区

走者:キシモっちゃん(2年)

距離:5キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園内


7区:ヨッシー(2年)

距離:5キロ

区間:小笠山総合運動公園内 〜 小笠山総合運動公園静岡スタジアム


合計 42.195キロ


補欠:マルちゃん(1年) ツボ(2年)


-----


「ヤス兄、今回の駅伝って小笠山総合運動公園内をぐるぐる回るだけなんだねー」


「ほやね、去年は浜岡総合グランドからはじまって菊川市、御前崎市といろんなところ走り回ったけど、今年は何でだろな」


公道を走ることこそ駅伝の醍醐味な気もしなくはないが。


「応援する側からすると、いろんな人が走れるの見れて面白いって思うけどな」


まあ……いろんなところ走ると、応援している人の前、ランナーは一瞬で通り過ぎちゃうからなあ。何度も往復してくれる方が見てるほうもいいのかもな。どっちがいいかわからん。


「ま、気楽にいけよ。実力的に、負けて当然な試合だ。どんな無茶したって、誰も文句いわねえって」


「励ましてるのか、けなしてるのかよくわからんセリフだったけどサンキュ」


……ま、ケンの言うとおり、できる限り気楽にいこう。

こんばんは、ルーバランです。


どこかでも書いてますが、この小説の舞台は静岡です。

大会などの場所や記録は、『静岡陸上競技協会』のホームページを参考に書いてます。

http://www2.wbs.ne.jp/~nagata/t&f/


静岡はきちんと記録が載っていていいですね。愛知、岐阜、三重、静岡で見たとき、愛知、岐阜はまったくデータがなく、三重と静岡は記録が豊富に載ってます。


『多数決の国』はキノの旅1巻第2話です。

キノの旅は不思議な話が多いですね。


それでは。

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カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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