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250話:部内レース、2回目

いきなり決まってしまった部内レース、1人1人のタイムを測ってもらう為、ポンポコさんが来てくれた。


「……ス」


距離は外周5周。メートルにして4100mってとこ。長い時には20キロ走ってる自分にとっては短くてしょうがない。


「……ヤス」


向こうの方で、何で5周も長い距離でタイムアタックやるんだよー。とぼやいている先輩をみると、どう転んでも負ける気がしない。ってか今までのんびりと練習してきた先輩やノンキ、マルちゃんなんかに誰が負けるかっての。


「…………ヤス」


ポンポコさんに鍛えられた自分を見せてやる、圧倒的な差を見せて勝ってやるんだから。


「ヤス!」


「あ、なに? 色々考えててボケっとしてた」


「今ヤスが考えてた事をあててやろう。『あんなヤツラには絶対負けねえ』」


……なんで分かるんだろう?


「ヤスの顔がまさにそう言っていた。ヤスが思った通り、確かに負ける事は無いと思うが……慢心はダメだからな」


「……ありがと、ポンポコさん」


あぶねえあぶねえ、ポンポコさんの言う通りだ。こんななめきった気持ちで出場なんかしたら、きっとどこかでポカをする。


「本当は駅伝2日前にこんな事をしたくはないんだが……これをやらないとヤスが出場できないと言うなら仕方ないな」


「……ごめん」


「ヤスが謝る事ではない。とりあえず今は全力を尽くす事だ」


ありがと、ポンポコさん。




準備運動もアップも終わった。それぞれにアップしていた、長距離部員全員がスタートラインに集まる。駅伝出場にエントリーされているのは全部で9名。内8名が中長距離の部員。1人は短距離の人。去年3キロ走ってもらった人だ。


道幅が狭いから、先輩たちが前列、1年生が後列の2列に並ぶ。


「ヤマピョン、絶対勝って出場するぞ!」


「……う、……………う、ん……!」


おし、ヤマピョンもやる気だ。

絶対に負けねえからな。


「では、合図は私がする。位置について……ドン!」


ポンポコさんの合図とともに一斉にスタート。同時に自分の時計もストップウォッチをスタートさせる。

まずは前列がばらけるまでは前に出れないから、後ろにて様子を見る。






タッタッタッタッ……。


400m通過……それにしてもゆっくりなペースだな。いつもアップの時にやってるジョグと同じか、それより遅いくらいだ……。

これじゃストレスがたまっちまう。レースなんだぞレース。やる気ねえのかよ。

抜け出そうかとも思ってるんだけど……ただ、前方に先輩が4人、両隣にノンキともう1人先輩。後方にマルちゃんと完全に囲まれてしまっている。これじゃ身動きが取れない。


「……」


ヤマピョンも全く動けない……これだけぐるりと囲まれてしまったら、周りに合わせる事しかできん……ちくしょ。








タッタッ……タッタッ……。


相変わらずのんびりとしたペース。もうすぐ1周になると言うのに、誰1人として息をきらす様子も無いし、むしろ談笑しながらでも走れそうだ。

これじゃ練習にならん……しかし、この囲い、どうやって抜け出せばいいんだよ?


1周通過。いつもの何倍もの時間がかかった気がしたが……タイムは一体どれくらいなんだろう?


「……4分」


……はあ? 4分? ポンポコさんの言い間違いでもなく、俺の聞き間違いじゃないよな?


「ヤス、本当に4分だ! 間違いない!」


……えっと4分って事は……1周あたり820mなんだから……1キロあたり4分54秒ってとこか。

遅すぎだろ!? 競歩でももっと速いタイムで歩くんだぞ。走っててこのペースってなんだよ!

……いやいや、ありえない。こんなペースで後4周も走るってのか? やってらんないだろ。


……これ、もしかして先輩の作戦か? このままずっと囲ったまま身動きとれないで、ずっと過ぎていくって……くそう、このコースがトラックだったら大外回りしてでも先輩たちを追い越してやるのに。この外周はずっと歩道。細い道のまま820m。

このままじゃ先輩たちを抜く事ができない。











タッ……タッ……タッ……タッ……。

3周、このペースのまま走り続けた……もう限界だ。


「ヤマピョン、強行突破するぞ」


「……う…………うん!」


ぼそぼそとヤマピョンと内緒話をする。先輩たちに聞こえていようが構わない。一気に突き抜けてやる。

壁を作っている先輩たちの人1人通れないような隙間に無理矢理割り込む。体をぶつけてでも構わない。


「……ってえな!」


……うっさい。先輩たちがまたコースを塞ごうと体をぶつけてくるが、肘で応戦する。

ガツガツと肘をぶつけ合いながらコースを奪い合う。


「……っひっこんでろ!」


腕を大きく振りかぶって先輩が肘打ちを食らわせてくる。


「邪魔だ! どけえ!!」


先輩だというのも構わずに大声で叫んで、逆に肘打ちを食らわせる。

思いっきり先輩のみぞおちに入ったらしく、グエッと言う変なうめき声が聞こえたけど気にしない。


俺が隙間を広げ、先輩達の壁を突破したと同時に、後ろから俺に引っ付いてヤマピョンも壁を突破する。こっから先は思いっきり走れる。


「ヤマピョン……こっからが勝負だからな!」


「う…………う、ん!」


しゃ、いくべ!












……はっはっはっはっ………。


「ヤス、スピード練習を全くしていないのに、それだけスピードを急激に上げたら、きついに決まっている」


……はあっ……はあっ……い、息が……話しかけないで……。


「いいか、いくら理不尽な目にあってもカッカしてはいけない、それこそ相手の思うつぼだ」


…………はふぅ。


「ヤス、ヤス、聞いているのか?」


よ、ようやく落ち着いてきた。


「ポンポコさん、あれだろ? 『よく覚えとけ、魔法使いってのはつねにパーティーで一番クールでなけりゃならねえんだ。全員がカッカしてる時でもただ一人氷のように冷静に戦況を見てなきゃいけねえ……少なくともオレはアバンと組んでた時にゃそうしてたぜ』だろ?」


「……何を言っているのだ?」


ありゃ、ポンポコさんは『ダイの大冒険』を知らないか。


とりあえず、ものすごく苦しかったけれど、何とか1番になれた。ラスト400でヤマピョンが仕掛けてきたけど、先輩に食らわせたように肘打ちを仕掛けて、ヤマピョンが一歩引いた所でそのまま全力疾走。


ギリギリの勝負だった……。


「ヤス、試合で肘打ちは人を選べよ。報復にあってしんどい思いをする」


……気をつけよ。








その後、結果を重視するようにとのウララ先生の鶴の一声があり、ヤマピョンが3区、俺が4区の元の鞘に納まった。

おし……明後日は頑張るぞ。

こんばんは、ルーバランです。


私、最近やさぐれてます。私がやさぐれるとヤスもやさぐれるようです。


それでは今後ともよろしくです。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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