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242話:数字ゲーム

今日は10月24日金曜日、駅伝まで後1週間くらい。

先輩たちを説得しようとして失敗して、それから何もしないまま残り時間だけが少なくなってしまっている。

いまだに走順すら決まっていないのはいいんだろうか。


そんなことをつらつらと考えてたら、5時間目の授業、現代社会の始まり。今まで勉強してきて思ったんだけど……現代社会の勉強って一体何をやればいいんだろう。


「さてさて、今日は今週あったテストを返すぞ」


……ぶーぶー。終わってしまったもんは見たくもないわい。

ってか何が悲しくてテストばっかりせなならんのじゃい。


「文句言うな! 俺たちだってテスト作り、テストの採点と頑張らないかんのだから」


……ぶーぶー。

テストなんてなければいいのに。




……62点か。まあまあだな。


「このクラスはまあいいほうだったぞ、平均点は61点だったからなあ」


……セーフ。ぎりぎり半分以上だ!


「アオちゃん、何点だった?」


今回のテスト結構難しかったし、アオちゃんも一緒くらいだろ、きっと。


「えっと……100点です」


「……はあ?」


耳がおかしくなった。きっと耳垢がたまりすぎているに違いない。今日の夜サツキに耳掻きしてもらおう。


「もう1回言って?」


「えっと……………………100点です」


「……まじ?」


信じられなくて、隠そうとしてるアオちゃんの答案用紙を後ろからこそっと覗き込んで点数を見る。そこには「100」という数字がでかでかと書かれていた。


「うわ、まじだ! ありえん!」


……授業中なのについ叫んでしまった。でも100点だぞ100点。空白もケアレスミスも1個もないんだぞ。わかんないところが一個もなかったってことだぞ。


「ありえんってなんですか。勉強した結果ですよ」


「勉強していようがなんだろうが、100点なんて人間のとる数字じゃない!」


人間ミスがあるものなんだぞ。俺なんて専門職の『専』っていう字の右上に『専`』ってわざわざつけて思いっきり×をもらったって言うのに。そんなんまでなかったのか。


「……私ロボットですか?」


そこまでは言ってないっす。


「テストでいい点をとってそんなに楽しいか? 点数で争うなんてめんどくさいじゃないか」


「楽しいですよ。争わないと面白くないです」


……なんてやつだ。


「いいやん、点数が悪くたって。所詮テストなんて数字ゲームだ」


「数字ゲームで競わないと、目標が見えなくてやる気が出ないです」


「競う必要なんてどこにあるのさ? ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワンなんだから」


「頑張らない人がその歌を曲解するんです」


ああいえばこういう人だな、アオちゃんは。


「100点満点じゃ次のテストであがりようがないんだぞ。最高点までのぼりきったらおちるしかないじゃないか。それじゃ面白くないだろ?」


「それはそうですけど、100点取るのは気持ちいいですよ。毎回100点をとり続ければいいですし」


「なんていやなやつなんだ! 毎回100点をとるなんて!? こちとら平均点いくかいかないかでひいひい言っているのに!」


「ご愁傷様です」


うわ、ものすごい突き放された。グサッとくるなあ。


「くう、馬鹿にしやがってえ……そんなに勉強が好きなら教科書にでもなるがいいさ」


「私は生き物ですらないですか……」


そうだそうだ、アオちゃんなんて無機物で十分だ。


「もっと人間味のある答えを書かないと駄目だろ。俺なんて『白血病などの血液疾患の治療として造血幹細胞移植が必要な患者のために、血縁関係のない健康な人から提供される「骨髄液」を患者に斡旋する仕組みのことを何バンクと言うか』って問題があったじゃん」


「骨髄バンクですね」


「あんまりにもわかんなくて、空白にせず何か書けばもしかして当たるかなあと思って『愛人バンク』って書いたら減点5点食らったぞ」


誰だ、無理矢理でもなんでもとりあえず空白にせず埋めてみろなんてアドバイスした人。とっちめてやる。


「ヤス君、頭おかしいです」


……ごめんなさい。でも最初に浮かんだ言葉がそれだったんだよ。直感を信じたら自爆したんだよ。


「ほかにもわかんなかったところは全部いろいろ埋めてみた。『親などによって保護された状態から逃れることを求め、情緒的な不安定さを抱きながらも家族から独立しようとすることをなんと言うか』」


「『心理的離乳』ですね」


「『馬鹿じゃないの?』って書いたら3点減点された」


「ヤス君のほうが馬鹿です」


「『身近にいる人ともコミュニケーションがとれず、周りの人から自分が認められてないんじゃないかと思うことをなんと言うか』」


「『孤独感』ですね」


「『俺のこと』ってかいたら1点くれた」


「先生に同情されたんですよ」


「『必ずしも客観的な根拠がないにもかかわらず、能力や容姿などについてほかの人と比べ悩みがちになることをなんと言うか』」


「『コンプレックス』ですね」


「『先生のこと』って書いたら『ほっとけ!』ってコメントの後、10点減点された」


「ヤス君、本気でテストを受けてますか?」


何を言う、俺はいつも本気だぞ。テストではいつもこんな感じだ。ええと……でも、適当に書いたところ空白にしとけばプラス17点かあ……79点。結構上位になりそうだ。


「ヤス君はこのラストの問題はどう書いたんですか?」


「ん? 『現在の日本の借金はどうやって返済しますか? あなたの意見を述べてください』って問題?」


「そうですそうです」


「んーと……『韓国と中国に国債を買ってもらって、大量にお金を発行して国債を返せば借金かたづくんじゃない?』って書いて0点だったけど?」


「……ヤス君ってめちゃくちゃ書きますね」


自由記述は点の取れる書き方をするより、自分の考えを適当に書いた方が面白いやん。


「そこでおしゃべりしてる2人、授業中だぞ。特にヤス、今度同じような内容書いたらテストそのものを0点にするからな」


……先生、ごめんなさい。それだけはご勘弁を。


こんばんは、ルーバランです。


私が高校生の頃、

『〜〜の事を○○バンクと言う。○○を埋めよ』

のような問題が出て、本当に

『愛人バンク』

と書いて減点食らったことあります。呼び出しくらいました。


それでは今後ともよろしくです。

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カカの天下
オーダーメイド
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