233話:ヤスの挑戦
今日は10月21日、昨日の台風が嘘みたいな晴天。
駅伝まであと2週間弱。
今日からなにが出来るか分からんけど……ポンポコさんのためにも何かしら結果を残したいな。
「と言う訳でウララ先生、どうしましょうか」
「……ええと、何の話?」
「夏合宿のとき、俺に『長距離の生徒達をどうにかしたい』って言ってたじゃないですか。今から相談しましょうよ」
「2ヶ月も前の話を今さら持ち出されても困るわよ。完全に忘れてたわ」
……まあ、俺もそんなの考えたくなくて逃げてたから人のこと言えんよな。
今さらなんで長距離メンバーを説得しようかと言うと、全てはポンポコさんのため、ひいては自己満足のためなんだけどな。
やっぱり駅伝はチーム競技。俺1人が頑張った所で、結果なんてたかが知れてる。全員がやる気になって挑戦しないと、結果が残せない。
それじゃポンポコさんを喜ばせられないだろ。
あのやる気の無い長距離メンバーを説得すんのは大変だけど、頑張ろー。
「まあいいけど、それでなにをしようと思ってるの?」
「部内レースをもう1回やればいいと思うんですよ。今なら自分、負けない自信がありますよ。半年前は最下位だった自分に負けたら、長距離メンバーも『俺ら、今までなにやってたんだろうなあ』と言う気分になったら、きっと心を入れ替えて練習を励むと思うんです」
「短距離の生徒達は、新人戦で今まで頑張ってきた人たちとどこか手を抜いた人で、明暗くっきり分かれたから『このままじゃまずいんだな』って感じてくれたみたいで頑張るようになったけど……長距離の生徒達って新人戦が終わってからも特になにも変わってないよ? 今までと同様、ざわざわ雑談しながらだらだら走って、早々と帰って。部内レースをした所でほんとに変わる?」
「……さあ?」
「そんなこと考える前に、長距離の生徒達とヤスが話し合って、『もっと頑張ろう!』って言葉を投げかける努力をしないと」
話し合いかあ……俺、話し合いって嫌いなんだよな。口喧嘩に勝てたことが無いし。
いつの間にか言いくるめられることしか無いし。みんな細かい所揚げ足ばっかりとって、自分の言いたいことと全然違うことに文句言うし。
「それが長距離の生徒をやる気にさせる一番の近道だよ? やってみなよ」
「ええ、俺1人でですかあ? ……ウララ先生も手伝ってくださいよ」
「んー……いいよ。やってみましょうか」
おし、ウララ先生を仲間に巻き込んだ。
今日の放課後が勝負だ。
放課後、長距離の先輩、マルちゃん、ノンキ、計6人を前にして語り始める。
ウララ先生はまだ来てない。職員会議で遅れるらしい。が、俺1人でも説得してみせる!
「……と言う訳で、後2週間しか無いけど頑張りましょう!」
「……はあ?」
「2週間後、駅伝があるじゃないですか。そこで順位が悪くとも頑張って、何かしら成果を残しましょう!」
「はあ……」
うわ、すげえ反応が悪い。
「今さらなにを言ってんだ? 後2週間でどうこうなる訳ないだろ?」
……正論だ。だが、俺は子供だ。正論にはへ理屈で返す!
「えっとですね、2週間ではどうこうならないかもしれませんが、今から頑張れば1年と2週間後にはどうこうなりますよ! 来年の駅伝のためにも、その通過点である2週間後の駅伝を気持ちよく走りましょう!」
「気持ちよく走るだけだったらのんびり練習しときゃいいだろ? 俺たちゃ楽しくやりたいんだよ」
……くそ、言うことを聞いてくれない。
「その通りです。楽しくやるのは俺も大賛成です。 でも、楽しくの意味、はき違えてませんか? みんなでただにゃははと笑ってるのもそれはそれで楽しいのかもしれないけど、最下位で駅伝走って、そんなんで楽しいでしょうか?」
ユッチの言葉を借りた。俺の中でかなりきつい一言だった、きっと先輩方にも届くはず。
「楽しい」
……あれ?
「いいか、俺たちは楽しくやりたいの。みんなでわいわいがやがややりながら楽しみたいの」
ユッチの言葉、何でこんなに伝わらないの? 俺の言い方がそんなにまずかったのか?
「で、でもですね。スポーツやるからには一所懸命頑張ってこそじゃないですか?」
「ホノルルマラソン、東京マラソン、シドニーマラソンなどなど、毎年たくさんの競技があるが、記録をめざす競技者だけじゃなくて、ただ完走をめざすだけの競技者、出場そのものが記念であり目的の競技者も多数いるだろ? 俺たちはそれくらいでいいの」
「し、しかしですね。今までの自分より、ちょっとだけ強くなれたって思った時の快感って味わってみたくないですか?」
「よく考えてみ? 確かにそれは快感かもしれない。だがそこにたどり着くまでに一体俺らはどれだけの苦労をしなければならないのだろう……楽して勝てるならそれでもいいが、苦労してまで、つらい思いをしてまで勝ちたくない」
「『若い時の苦労は買ってでもしろ』ですよ」
「若者に仕事させたい大人が言う戯れ言だぞ」
……な、なぜそんなにひねくれているんだろう?
「ですけど、騙されたと思っていっぺん頑張ってみませんか?」
「騙されるくらいなら手を引く。そんなに頑張りたいんだったら1人で頑張れ。楽しくやってるメンバーを巻き込むな」
そう言い捨てて、先輩たちは去っていった。
……くう……やっぱり今まで一緒に練習をやってこなかった俺なんかの言葉、響く訳がないんだよ。
おはようございます、ルーバランです。
ごめんなさい。
3月31日、中途半端にしか書かれていないのに、酔っぱらった勢いで投稿しました。
4月一日に修正し、大きく追加されてます。
本当に申し訳ないです。
そんな自分ですが今後ともよろしくお願いします。