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23話:マルちゃんの憂鬱

その後、ヤマピョンとは分かれ、午後の授業を受けて、

そのまま放課後になった。


「じゃあケン、陸上部に行くか?」


「あれ?剣道部にいかなくていいのか?」


「……ああ、昼休みの時に、そうなってしまった……」


俺は遠い目をしながらケンにつぶやく。


「よし!そうなったら、さっさと練習に行こう!ウララセンセが俺を待っている!」


多分待ってないと思うよ……ケン。

俺はケンとともに教室を出ようとしたが、ケンが立ち止まって、窓側を見た。


「どうしたよ?さっさと行こう」


「……いや、なんかマルちゃんの様子が変だなあって」


そうだったか?授業はまともに受けていたような気がするぞ。


「休み時間とかほんとに時々だけどボーッとしてるんだよ、で、気付かれないようにため息をつく。恋の病かな」


「あー、俺、そう言う話はパス。」


「相変わらず枯れてるなー、……いや、サツキちゃんに欲情してるから、他の人に目がいかないのかな?」


「妹に欲情する訳ないだろ!?妹に対してそんなヨコシマな思いを抱いた事はもうずっと前の事だ!」


「過去にあったんかい!!?……そう言えばヤスって、『俺はサツキと結婚するんだーっ』て女の子の告白を振った事が無かったか?」


「それは小学校5年の時!実の妹と結婚なんて出来ません!」


「小学校5年で妹と結婚するんだって叫ぶ男は普通いません、ってか実は実の妹じゃないとか無いの?」


「……残念ながら、中学生の時に調べた。ちゃんとした実の妹だ」


「お前って、このクラスで一番の変態だ」


「……今は俺の事はもういい。で?ケンはマルちゃんになんか言うの?」


「いや、俺はマルちゃんとはほとんど話した事がないからな。ここはヤス!君に決めた!」


「俺はケンのモンスターじゃない!」


「いや、そう言うツッコミはいいから、さっさと話してこいって」


「俺もほとんど話した事ないよ!」


「大丈夫だ、お前ならできる」


「その根拠は?」


「俺の勘だ」


「薄すぎだろ!むしろ根拠ゼロじゃんか!」


「時には直感で動く事も大事だぞ、ヤス、早くしないと練習に遅れる」


「…………わかったよ」


そう言い捨てて、俺はマルちゃんの席に向かう。


「……どうした?何かあったようだけど……」


俺は全然分からんが。


「あれ、珍しいねヤス。僕に君の方から話しかけるなんて……でも、よく分かったね。」


俺は気付かなかったけどな。


「んじゃ、ヤス君に聞いてもらおうかな」


めんどい、聞かせなくてよろしいです。


「僕さ、好きな子がいるんだ」


恋の話だよ!俺はそう言うの勘弁だって言ってるじゃん!ケンが話をしろよ!


「……はいよ、それで?」


「小学校のときからの同級生で、この学校には来てないんだけど……」


俺はケンに向かってSOSを送り続けるが、ケンのやつはさっきからずっと受信拒否だ。勘弁してくれ。


「今まで、すごく仲が良かったんだ。2人で遊園地とか映画とかにも行ったし、デートもどきみたいな事ならほんと何回も……」


ノロケか?これは俺はノロケをきかされてるのか?教室にもう誰もいないからって、誰が聞き耳たててるか分からないんだから。


「今ももちろん、仲いいし、お互い家が隣同士だし、毎朝あって話してるよ」


「あっ、そうですか……」


ケンさん、もう帰らせて下さい……お願いします、こいつの彼女の話なんて聞きたくないっすよ。


「で、中学2年の秋から意識し始めてて……気恥ずかしくなったけど、それからもお互いの家に遊びに行ってたりもしたんだよ」


ノロケというのは、基本的に独り身の人が聞くと、腹が立つだけだという事をこいつは身を持って知るべきだ。

殴っていいか、おい。


「ずっと告白できなかったんだけど、高校が別になるからって、卒業式の日に思い切って告白したんだ」


「……ふーん……」


王道だな。そこで結ばれてハッピーエンドってか?

幼馴染とのハッピーエンドなんてよかったじゃないか。

そういや、隣に住んでるんだから、別に中学卒業後もいつでも告白できたと思うんだが……いや、そう言うツッコミを言うのはよそう。野暮だった。


「そしたら、返事が『おいら、やせててすらっとした人が好みだ、これからもいい友でいようぜ!』だったんだ……」


あれ?今変な単語が入ったよ?今時おいら?しかも「いようぜ」ってなかなか言わないよ。


「お前、それっておと……」


「失礼な!あんな可愛い女の子はどこにもいないぞ!口調は男っぽいかもしれないけど、照れたときの仕草なんてそれだけでご飯が13杯はいけるよ!」


中途半端な数字だな。13っておい。


「撃沈した……卒業と同時にやけ食いしちゃったよ。おかげでまた太っちゃった」


…………。


「で、高校に入って思ったんだ。やせて、すらっとして告白したら、OKがもらえるに違いないって」


…………。


「だから、運動部に入ろうと思ったんだけど……ヤスに言われた通り、初心者が多そうなハンドボール部に行ったんだけど、めちゃくちゃきつい上、上下関係が結構厳しくてさ。1日目で行くの止めちゃった」


…………。


「2日目、3日目も別の所いったんだけど、……どれも合わなくて……なんか、僕疲れちゃったよ……」


…………。


「もうやめよっかな、なんて思っちゃって……今のままでも十分仲いいし、それでいいかもってさ……」


…………。


「……えと、ヤス?どうしたの?途中からなんでずっと黙ってるの?」


「…………けるな!」


「え?え?ヤス?どうしたの?」


「ふざけるなって言ってんだ!!」


「え?えと?な、何が?」


「俺なんか小学校5年の時まで、『俺はサツキと結婚するんだ!』って言ってた、本当に結婚するつもりだった、もう妹大好きだったんだ!そしたらある時、同級生の女の子から、『妹とは結婚できないよ』って言われて……そんな訳無いと思って必死で調べたんだ!でも……法律上は妹と結婚できないって分かった……その後も、色々調べたんだ!もしかして養子だったりして血のつながりが無いんじゃないかって!だから市役所に言って戸籍を見てきた!やっぱり実の妹だった!海外で結婚できる所は無いかと探しまわったけど、見つからない……。2人だけで暮らして行ける場所なんて世界に無いし。こうなったらもう結婚はできない……せめて同棲でも出来ないかと思って……事実婚と言うやつを考えたんだ。でも!調べてみたら兄妹同士で産んだ子供は、障害が起きる可能性が高いんだ……妹のサツキは子供大好きなのに、子供ができても障害児の可能性が高いなんて……せっかくの子供にそんな目にあわせられないだろ?

最後は実は病院の手違いで本当は両親の子供じゃないんじゃないかって考えも持ったさ。ひどい、俺は馬鹿だって事くらい分かってるさ。でも、それぐらい必死だったんだ!そして、こつこつとお年玉をためて、小遣いもやりくりして、3年かけてお金を貯めて病院に兄弟DNA鑑定をしてもらった。3週間後、結果が帰ってきた……結果は当然ながら兄妹だ!こんなに色々調べたのに、3年も我慢したのに!結局残ったのはどうしようも出来ないという事実だけだ……」


「……ヤ、ヤス……」


「……いいんだ、俺はもう吹っ切ったから。でもな、お前なんてやせればいいんだろ!?簡単じゃないか!頑張れよ!頑張れば報われるんだぞ!世の中にはどんなに頑張ってもどうしようもない事がいっぱいあるんだぞ!報われない人がこんなに大勢いるってのに、お前は何甘ったれた事言ってんだ!!」


「……え、えと、ごめん……」


「ごめんですむか!絶対やせろよ!有言実行しろ!」


「……は、はい……」


「声がちいせえよ!やる気あんのか!?」


「はい!」


「よし!んじゃ部活行くぞ!!」


「はい!!って?え?」


「行くんだよ!部活に!さっさと来い!」


「いや、僕は……」


「ちゃんとやせる努力するか、俺が見張ってやる!ついてこい!俺の言う事が聞けんのか!」


「は、はい!!」


「よし、マルちゃん、陸上部に行くぞ!」
























「俺は何を口走ってんだ……」


キレる中学生じゃあるまいし……あの後、ケンからもうものすごい哀れみを持った目で見られた。

いつもならいじる所だったのだろうが、さすがに内容が内容だっただけに……何も言えなかったのだろう。


結局、今日の長距離には、無理矢理つれてこられたマルちゃんと、俺になついているヤマピョン、そして意気消沈している俺の3人が1年生だった。練習は前回と一緒。……長距離はこんな物なのかな?


こんにちは、ルーバランです。


オリンピックも終わりましたね……。

男子4×100メートルリレーは日本3位!

良かったです。


主人公ヤスは変人です。

いつの間にかこんな人になってました。


今後ともよろしくお願いします。

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カカの天下
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