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217話:人付き合いが上手になる10のこと

元気付けようと思ったはずなのに、逆に落ち込まされてしまった……。

サツキに元気付けてもらおう。


「サツキ、俺を慰めて」


「ヤス兄、どんまい。玉砕するってわかってても果敢に飛び込むその勇姿を私は忘れないよ」


……慰め?


「『思いつめている人を元気付ける10のこと』とか、出版してくれないかなあ。そんなんがあったら絶対買って読むのに」


例えばこんなキャッチフレーズ、『現金出して元気になる本! 人に教えちゃ厳禁だよ!』

……買う人いるかな?


「駄目だよ、そういう本って大抵参考にならないこと多いもん。前に『人付き合いがうまくなる10のこと』みたいな本を買って読んでたけど、何も参考にならないって怒ってなかった?」


「ああ、そうそう。10項目あって全部試してみたんだけど、何もうまくいかなかった」


まったく、『これを読んだらあなたも人付き合いの達人!』 とか偉そうなこと書くなやって思うわ。引っかかる俺も俺だけど。


「どんなのがあったの?」


「1つ目、『どんなときでも、ムカついてるときでも笑顔でいよう』。頑張って笑ってみた。保育園児が突然泣き出して逃げていった」


俺の笑い顔、そんなに怖かったんだろうか……俺には絶対に愛想笑いは無理だ。笑うなら心の底から笑いたい。


「2つ目、『相手に感謝するときは、言葉だけでなく、体で伝えましょう』って書いてあったから、体で表現してみた。逃げられた」


「何したの?」


「『ありがとう!』を尻文字で表現してみた」


「……馬鹿?」


……ひでえ。いや、俺も途中で何かおかしいなあとは思ったけど。


「3つ目は……『あいづちをうつと話は盛り上がる』ってあった。とりあえずなんも考えず『そやねー』ってあいづちをうってみた。泣かれた」


「何で?」


「『自分って生きてちゃ駄目な人なんだ……』って愚痴られてた時に『そやねー』って返事してしまった」


「それはヤス兄が悪い」


本当にごめんなさい。偶然商店街で買い物してたらすれ違って、泣かれてしまったあのときからずっと会っていないけど、今どうしているんだろう。元気でいてくれたらいいなあ。


「えっと……4項目では『人は気をつかわれていると思うと、恐縮してしまう。思ったことはどんどん言って、素のままの自分を出したほうが、人間関係はうまくいく』って書いてあった。しばらく口を聞いてもらえなくなった」


「なんて言ったの?」


「『手伝ってくれてありがとう。まさかお前が手伝ってくれるなんて思っても見なかった』」


「ヤス兄、ものすごいけなしてるね」


うん、だって今までお願いしても何もしてくれなかった人がいきなり何かしたら、そう思っちゃうって。

……思ったことをすべて言ったら、人間関係は崩壊すると思った……建前って大事だよな。


「5つ目は『血液型でも何でも、どんなことでもいいから共通点を見つけると、仲良くなれるよ』って書いてあった。中2のクラス替えで初めて話す人と、いろいろ共通点を探してみた。次の日から話をしないまま卒業した」


「なんで?」


「たまたま誕生日が一緒だったんだけど、『So what?』で会話が終了した」


『誕生日が一緒なんだよ』『おお、すごい偶然じゃん!』……『だからなんなんだろう?』とつい言ってしまった。きっとそう思ってしまう俺の心がよくないのだろう。


「6つ目は……確か『人の目を見て話をしよう』と言うのだった。目を見ながら話をしていたら、『何ガンつけてんだよ』とからまれそうになった。逃げた」


「ヤス兄、『見る』と『にらむ』は全く別のものだよ?」


別だと言われても、どう違うのか俺にはわからないんすよ。


「7項目、『人の話の腰は折るな、最後まで聞こう』って書いてあった。頑張って聞いていたら1時間にも及ぶ壮大な話を聞かされた。オチがなかった。『オチなしかよ!』って突っ込んでしまったら、それ以来何も話をしてくれなくなった」


「ヤス兄、さっきから本のせいじゃなくて、ヤス兄が悪い気がしてしょうがないよ?」


……そっか? 俺は本のとおりに実践してみただけなんだが。


「8個目は『一緒に喜ぼう』とあった。クラスメイトが歓声を上げてたから、混じって一緒に歓声を上げてみた。『何こいつ』みたいな白い目で見られた。9つめ、『定番の会話と言うものがあるので覚えておくと会話が続きます』って書いてあった。『天気』『休日の過ごし方』『芸能人』などなど」


「天気の話題ってさっきアオちゃん先輩にふって一瞬で会話が終了してなかった?」


「そうなんだよ。天気の話題なんて『今日はいい天気ですね』『そうですね』で会話終わるやんね」


その後どうやって続けていけばいいのかがわからない。それを教えてほしいのに、そこまでは書いてなかったので、この本使えねえなあと思ってしまった。


「ラストは『人はもともと教えたがり。知らないふりをしておくと、話が弾む』って書いてあった。だから『ごめん、知らないやあ。教えてくれない?』って答えたら『ググレカス』って言われた。会話が終了した」


ググレカス……ググレカス……誰だよググレカスなんて言い始めたやつは。


「……ヤス兄、ご愁傷様。それにしても不器用だね」


やっぱり俺、不器用なのかなあ……。


「ものすごく悔しかったので、家に帰った後、その本は物置の奥深くに沈めた。二度と太陽を見ることはないだろう」


大体本を読んだだけで全ての人が人付き合いが上手になるんだったら、世界中で誰も人付き合いが下手で悩む人なんて生まれねえよ。


「うん、それがいいよ。人付き合いの方法なんて1人1人違うもんだよね。ヤス兄のそのぶきっちょな人付き合いの仕方、私好きだよ」


「ありがと、サツキ」


サツキにそう言ってもらえるだけで、悩みなんて吹っ飛びます。


「面白いもん」


……喜ばせといて、へこます。なんだか目から雨が降ってきた……。


こんばんは、ルーバランです。


本の言葉なんてあてにならねえよと思いつつ、「○○が驚くほどできるようになる本」みたいな本をつい買ってしまいます。


そして買った後後悔します……。

それでは。

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カカの天下
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