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213話:新人戦県大会

10月4日土曜日。

今日と明日が新人戦県大会だ。

今日はユッチ、アオちゃん、ゴーヤ先輩、キビ先輩の4継から、ゴーヤ先輩の400m、キビ先輩の100mハードルと続き、ラストはボーちゃん先輩の110mハードルがある。大山高校が出場するのはこれら計4種目だ。

地区予選の結果から見て、今日の種目で東海大会にいけそうなのはゴーヤ先輩の400m。ゴーヤ先輩がぎりぎり出場できるかできないかってラインだ。

4継はぎりぎり県大会に出れたってタイムだから、正直東海大会出場は厳しいんじゃないかなと思ってるけど、やってみなきゃわからないって言うのがリレーだよな。有力チームだったチームがバトンミスして涙をのむとか、オリンピックや世界陸上でも時々見かけるんだし。頑張っていい成績を残してほしい。

タイム的には厳しいけど、ハードルは他の種目よりハプニングが起きやすいので、キビ先輩にもボーちゃん先輩にも東海大会出場の可能性はある。


今、時刻は9時20分。そろそろユッチ、アオちゃん、ゴーヤ先輩、キビ先輩が出場する4継が始まる時間だ。

ユッチたちは1組7レーン。4継は5組3着+1、3着以内には入れれば準決勝進出。







……ってかどうでもいいけどねむい。……ふわあ……応援席に座りながら今にもまぶたが閉じそうな状態で、どうにか寝ないようにするために必死にいろいろ考えをめぐらせてみた……しかし、全然効果がない。ふわぁ……。


「ヤス兄もケンちゃんも応援する態度じゃないよ? もっとしゃきっとしてよ」


「そう言われても、眠いもんは眠い……ふわあ」


……今なら満員電車で立ちながらでも寝れそう。ケンなんかすでにふねをこぎはじめてる。


「馬鹿だね。今日試合だってのに、なんで昨日夜更かしなんかするの?」


「なんか自分が出場しないと思ったらつい……」


昨日、サツキが寝てからケンと2人で囲碁をはじめたら、ついつい熱中してしまって気づいたら朝の6時になってしまってた。結局一睡もせずサツキを起こして、県大会を開催する、ここ草薙総合運動場陸上競技場まで電車に揺られながらやってきた。

……俺もケンも何やってんだかなあ。


「ヤス兄もケンちゃんも、新人戦が終わってから気が抜けすぎだよ。練習が作業になってない?」


「そんなこと言われても……目標みたいなものがないし」


「ヤス兄、目標とは与えられるものじゃないんだよ。自分で見つけるものなんだよ」


「妹よ。自分で目標が見つけられる人間はほんの一握りだ。その他多くの一般人は、今生きているだけで、目標を見つけられないまま日々をすごしているのだ。自分の現状を知らない人のなんと多いことか。人間なんてそんなもんだ」


「……なんでそんな達観してるの?」


眠いから。眠いと自分でもよくわからないことを考え始める。


「新人戦終わったとき、ヤス兄言ってたじゃん。『駅伝に向けて、17分切りに向けて頑張る!』って。そのときの気持ちはどこ行ったの?」


「人の思いはどんどん変わってしまうものなんだ。サツキ、女心と秋の空が移ろいやすいように、男心も移ろいやすいものなんだ……」


「気持ち悪い」


……妹よ、一刀両断ですな。そんなバッサリ言わないでくれ。


「どんな小さな目標でもいいから目標を見つけようよ、ヤス兄」


「んじゃ、1日1日を頑張って生きることを目標にする」


おお、適当に言ったつもりなのになんかいい目標に聞こえる。


「ヤス兄、頑張るっていうのは目標じゃないよ。なにか具体的なことを言わないと。そんな逃げ口上を言うのは政治家だけで十分だよ」


今日のサツキ、なんか厳しい、平静にしゃべってるけど、明らかに俺とケンに対して怒ってるよな。でも眠いんだ。ふわあ……。


「ユッチ先輩、また夏休みのときみたいにそのうち口きいてくれなくなるよ。私も口きいてあげないから」


「それはやだ、口はきいてほしい、でも眠い」


「……」


「サツキ?」


「……」


「えーと、サツキ?」


「……」


「冗談やめてこっち向いて」


「……」


「サツキ!」


「……」


「ごめんなさい! 今日からちゃんとするから! 口きいてください!」


「うん、約束だよ。ヤス兄……はい」


「ん? なに?」


サツキが小指を差し出す。強引に俺の右手を取って、小指と小指をからめた。


「指きりげんまん、ウソついたらハリセンボンのーます、指切った! ヤス兄、またボケッとしたら承知しないからね!」


確かにサツキの言うとおり、最近練習をただ淡々とこなすだけの日になってたよな。

11月には駅伝もあるんだから、そこでしっかり走るためにもちょっと気を引き締めなおすか……。


「お、キビ先輩が出てきた」


時刻は9時半になった。今日最初の種目、女子4×100mリレー予選がいよいよ始まる。

キビ先輩に続いて、アオちゃんもゴーヤ先輩もユッチも出てきた。4人で円陣を組んで、何かを声を掛け合ってる、他の学校の人たちも、何か声を掛け合って、自分達のポジションに散っていく。……はあ、仲間がいていいなあ。

俺も一人じゃなしに誰かと走りたい……。


いかんいかん、俺のことを考えるのはあとあと。今はリレーメンバーの応援だ。

頑張れ、みんな。

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