196話:ヤス、試合前日、1000m
ポンポコさんに教えてもらったメニューをこなすために陸上競技場の隣にあるスポーツ広場へ。
そこでまずはジョグ&ストレッチ、そしてゆっくり30分ジョグ。
ふう……まずは30分ジョグ終わりっと。
スポーツ広場では俺の他にも競技者が試合前のアップや、練習をおこなっている。こいつらの中にもしかしたら明日俺と5000mで勝負する奴がいるんかもな。……負けたくねえな。
おし、それでは1000m走始めるか。
……位置について……ポチッとな。
タッタッとリズム良く走る。腕は力みすぎないように、体は傾かないように。
400mごとのラップタイムは88から90だよな……確か初めてペース走をしたときのタイムは96だったから、あれより6秒あげればいいって事か。
まあ1キロしか走らないし、何とかなるだろ。
200m通過……タイムはと……46秒か。ちょっと遅いな。もうちょいあげるか。
少し腕を強く振ってリズムをあげる……こんなもんか? やっぱり1人で走ってると全然ペースが分かんねえな。
……400m通過、92秒……駄目じゃん! ペース変わってないじゃん!
やっぱ絶対にあげるんだって気持ちで体を動かさないとペースって中々あがんないもんだなあ……。
こなくそっ! こうなりゃちょっと思いっきり走ってやる。
足を前に出してストライドを広く取って、大股にして走る。
ペースをあげたから、向かってくる風の勢いが一気に強くなった。
これぐらいあげりゃタイムが伸びてくるだろ。
はっ、はっ、はっ、はっ……少しペースをあげたからちょっと息が切れた。まだまだいけるけどな。
……800m通過、600mは見忘れた。で、タイムはと言うと、82秒……あげすぎだろ俺。
この1000m走は明日ある5000mの練習のつもりで走ってるんだから、最後にラストスパートかけても意味ないだろ。
このまま残り4000m残ってるつもりでゴールしないとな。
落ち着け、俺。
タッタッタッタッ……。
「ゴール! さあ、現在のヤスの1000mのタイムは……3分41秒!」
ラストの200mは47秒! ……ペースバラバラやん!
俺、前日にこんなペースで走ってて大丈夫か?
……なんかもうちょい上手なペースで走って明日にのぞみたかったな。
「ま、ウララ先生が言ってたよな、『なるようにしかならない』だ」
初試合、明日は頑張るさ!
その後ダウンを行って今日の練習は終わり。
そろそろキビ先輩の決勝が始まるよな……キビ先輩が入賞できますように。
陸上競技場に戻ってきて、大山高校陸上部員が座っている応援席へ。……お、ちょうどポンポコさんの席の隣が開いてるな。
「お待たせっ、ポンポコさ……あれ?」
電光掲示板に男子400m決勝とでかでかとかかれている。確か男子400m決勝ってキビ先輩の100mH、ボーちゃん先輩の110mH、ゴーヤ先輩の400mの後じゃなかったっけ?
……俺の記憶違いか?
「すまんヤス、時間が1時間あると思っていたのだが、40分しかなかった。もう既にキビ先輩もボーちゃん先輩も、つい1分前にゴーヤ先輩も走ってしまった」
「……はえ?」
ええと……3人分全員見損ねた?
「ええと……まじっすか?」
「まじだ……すまん」
いや、ポンポコさんが謝る事じゃないんだけどね。俺がちゃんと調べなかったってだけなんだし。
しかし……見たかった。
「んじゃさ、キビ先輩、ゴーヤ先輩、ボーちゃん先輩の結果ってどうだったの?」
「まず、キビ先輩が4位入賞だ。ボーちゃん先輩も6位入賞を果たしている」
「おお、キビ先輩もボーちゃん先輩もすげえ! 特にキビ先輩、見たかった。だってさ、キビ先輩の走りってめっちゃ綺麗だもんなあ」
「えー、そんな褒められたら照れるよ」
……キビ先輩、既にそこにいたんですか。ちょっと……いえ、かなり恥ずかしいです。
「ゴーヤ先輩は60秒14と、自己ベストを1秒以上も縮めての3位入賞だ」
「うわ、ゴーヤ先輩すごいな! すごいって褒め言葉しか思い浮かばんやん」
3位入賞ってメチャクチャすごい!
「インターハイ地区予選、怪我をして途中で断念した時の悔しさがバネになったのだろうな」
「怪我しても負けても泥水すすってでも這い上がって花開く……こう言うのをなんて言うんだっけ? 臥薪嘗胆?」
「ガシンショウタンは復讐のために頑張るセリフだからな……今回は粉骨砕身ではないか?」
「そうそう、フンコツサイシン。いやあ、ゴーヤ先輩って男らしいねえ。惚れるわあ」
「キビ、女なのに男に男らしくて惚れるって言われるのってどう思う?」
……なんでゴーヤ先輩、既にここにいるんですか? つい1分前に走ったって聞いたのに。
「いいじゃん、愛の告白だよ」
そんな風に受け取らないで!?
「そうか。それなら返事をしないとな。ヤス、ごめんなさい」
「ヤス、振られたよ」
…………泣いてもいいですか?
おはようございます、ルーバランです。
最近自分の両親くらいの方々とよく話をする機会があるのですが……その中で今までに4〜5人の方が
「俺の娘紹介してやろうか?」
とノリノリで話してくれました。
おお、本当ですか!? と言う嬉しい気分。
「でも俺は娘はお前みたいなタイプとは合わないだと思うけどなー、アハハー」
……4〜5人いてみんなこんな感じでした。この人たち、娘紹介するつもり絶対ありません……こんちくしょう。
それでは。